2人の子どもを育てながら仕事を続けているということで、女子大生向けに「両立」についてお話する機会がたくさんあります。都内の女子大は5カ所くらい訪れたでしょうか。

最近、大学は「キャリア教育」に熱心で、20歳前後の女性たちに「ずっと働き続けなさい」ということを熱心に伝えています。私が大学生だった20年前にはそういう機会は少なかったので、ずいぶん面倒見がよくなったなあ……と思います。

実は私自身は「どっちでもいい」と考えています。生涯、エネルギーを仕事に集中し、自分がやりたいことに邁進するか、途中で結婚や出産をして仕事と育児を両立するか、はたまた家庭に入るか。色んな選択肢がある中で、何を選んでも特有の喜びや悩みがあります。それを分かった上で本人がいちばんいい、と思う道を選べばいいのです。

問題は、選びたい道を選べないこと

問題は、女性が何を選ぶかではなく、選びたい道を選べないこと……ではないかと思います。例えば、いったん家庭に入って主婦をした後、再就職したいという希望は、20代女性にはすごく多いです。

40代50代以上のキャリア女性たちは「いったん辞めて主婦になりたい」という20代女性に「そんなことをしたら、生涯賃金、ン千万円を棒に振るわよ」とか「もし離婚したらどうするの」と言うことがよくありますが、これは、あんまり効果がないと思っています。

「そっちのほうが楽しそう」と感じている人を、脅しやネガティブな情報で逆方向に引っ張っても、腹に落ちていないものは浸透しません。本音の方向に引き戻されるに決まっているからです。

そのことに気づいてから「働きなさい!」と言うのはやめました。代わりに「どうして、家庭に入りたいか」尋ねるようにしたのです。

すると皆、面白いことに自分が育った家庭の話を始めるのです。主婦になりたい女子学生の多くはお母さんも主婦です。「学校から帰った時、お母さんがいてくれるのが嬉しかった。だから自分も同じようにしたい」という人がとても多いです。また、共働き家庭で育った人が「暗くなるまでひとりで留守番するのがさみしかったから、自分は子どもに同じ思いをさせたくない」と言うこともあります。

あなたの親は「お手本」?「反面教師」?

どちらも、もっともだなあと思います。ちなみに私も主婦家庭に育ちましたが、母が社交的だったので、毎日「お帰りなさい」と出迎えてくれるわけではなく「おやつは冷蔵庫に入ってます」という置手紙があったことも多くて「主婦=毎日家にいる」というイメージがありませんでした。

女子大生の意見は多様です。ある人は「お母さんは主婦だったけれど、私が大きくなったら働きに出てすごく楽しそう。だから自分も働き続けたい」と言います。また別の人は「共働き家庭だったけれど、兄弟やおじいちゃん・おばあちゃんが同居してたから、全然さみしくなかった。自分も働きたい」と言います。

25歳のあなたは、働き始めて3年~5年目くらいでしょうか。人によっては10年近く働いているかもしれません。これからどうするのか考える時、ご自身の親が「お手本」になっているのか「反面教師」になっているのか、これを手がかりにすると、自分の人生がすっきり見えてくるかもしれません。

最後に。母親の立場で言いますと「子どもが幸せになってくれるならどっちでもいい」と多くの人が思っているはずですよ。

著者プロフィール

●治部れんげ
豊島逸夫事務所副代表。 1974年生まれ。1997年、一橋大学法学部卒業。同年日経BP社入社。記者として、「日経ビジネス」「日経マネー」などの経済誌の企画、取材、執筆、編集に携わる。 2006年~2007年、フルブライト・ジャーナリスト・プログラムでアメリカ留学。ミシガン大学Center for the Education of Woman客員研究員として、アメリカ男性の家事育児分担と、それが妻のキャリアに与える影響について研究を行う。またツイッターでも情報発信している。

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25歳。仕事や私生活それぞれに悩み不安を抱える年齢ではないだろうか。そんな25歳のあなたへ、日本を代表するアナリスト・豊島逸夫ウーマノミクスの旗手・治部れんげがタッグを組んだ。経済と金融の最新動向をはじめ、キャリア・育児といった幅広い情報をお届けする特別連載。こちらから。