日本人の若者は貧困化しています。前回の記事では円安がキーワードだと伝えました。円安は海外に旅行すると実感できますが、日本での生活にも大きな影響を与えています。どんな影響があり、どう生活を守ればよいのでしょうか?

円安貧乏から生活防衛する術

前回、20代の日本人平均月収は22万円。アジアでシンガポール・韓国に次いで三位という調査結果について書きましたが、今回はその「傾向と対策」について考えてみましょう。 まず、調査中の平均月収は円換算になっていることに注目。そこで、円安が大きく影響していると考えられます。 円相場は76円まで円高になったあと、いまや120円前後まで円安になっています。

アジア各国の通貨に対しても円は非常に安くなっています。 その結果、アジアを中心に外国人観光客がどっと日本に押し寄せていますね。春節を過ぎた今でも、お花見に来た中国人たちの「爆買い」第二波が続いています。 円安で、日本はアジア人から見ると「安い国」になりました。アジア人が日本に来て一万円札で買えるモノは確実に増えています。 逆に、日本人がアジア旅行して、一万円札で買えるモノはかなり減ってしまいました。 この事実は、なにも、旅行に限ったことではありません。

円安ではどう考え・行動するべき?

日本は油や穀物など「資源」を輸入に依存する国です。そのため、円安の結果、輸入品の物価が上がっています。4月になり、急に値上げが増えていますよね。一時安値競争に走っていた牛丼チェーン店も今や値上げに転じています。 では、円安で日本人が相対的に貧乏になってゆく現実に対して、個人として、なにか生活を防衛する術(すべ)はないのでしょうか。それは、ずばり、円以外の資産を持つこと。 これだけ、日本人の生活が衣食住ともに輸入品に依存する時代に、お財布の中味が全部「円」では、貧乏になるばかりです。

円安の時代に資産を全部「円」で持つことのリスクも考えるべきでしょう。 「円」以外の資産といえば、具体的には、まずドルなどの外貨預金ですね。 そして「輸入品の資産」という発想にたてば「金」という選択肢もあります。 輸入される日用品の値上りは困りますが、輸入資産の値上りは歓迎ですよね。

とはいえ、読者の皆さんの多くは「ドル」とか「金」とかいわれても、抵抗感があると思います。 そこで、まず、ドルでも金でも、居酒屋・女子会一回分くらいから積み立ててみることから始めるのが無理がない方法でしょう。 FXや先物で「儲ける」のではなく、円安から自己防衛するために「コツコツ貯める」という発想が大事です。

日本円以外の資産を作る意味は?

なお、ドルも金も、そして円も短期的には値が上がったり下がったりするリスクがあります。円だけ持っていては世界の中で貧乏になるだけ、という発想で、すこしずつ円を減らし、ドルや金をちょっぴり増やしてみることで、まずは"円以外の資産"を持つことを体感してみましょう。 蓄えを円だけで持つことは、ルーレットで、円だけにチップの全てを置くようなもの。 これから国際化の時代を生きなければならない20代の若者は、「円を持っていれば安心」という錯覚を、まずは自覚することが大切だと思います。

著者プロフィール

●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。