鉄道旅行の人気が高まっているそうだ。昨今の鉄道ブームで注目を浴び、少し前まで続いていた燃料費高騰も鉄道志向を高め、近頃は高騰していた原油価格が値を下げ、燃料価格も落ち着きを見せつつあるが、鉄道旅行の人気は定着してもらいたいといち鉄道ファンとしては思うわけだ。そこでこの連載では、おトクなきっぷ情報を中心に、車内の快適な過ごし方や乗り継ぎテクニックなど、鉄道旅行に関するおトクで楽しい情報をお届けしていきたい。

格安鉄道旅行の代表格としておなじみのきっぷといえば「青春18きっぷ」である。全国のJR線普通列車に乗り放題。1日間有効で5枚組。そんな青春18きっぷの夏の有効期間は9月10日まで。次の青春18きっぷは12月に発売される。ということは、今はおトクな鉄道旅行シーズンもひと休み中ということか。

いえいえ、とんでもない! おトクな乗車券は青春18きっぷだけではないのだ。新幹線や在来線特急には回数券が設定されているし、金券ショップできっぷを買えば「みどりの窓口」より少しだけおトクだ。一定範囲内を期間限定で乗り放題、という企画乗車券もたくさんある。このほかに、往復割引や乗り継ぎ割引などの運賃特例もある。JRの運賃制度や旅客営業規則は複雑だが、知識を身につければおトクな乗り方やプランづくりも自由自在だ。

おトクなきっぷで出かけよう

この連載のご案内役は私、杉山淳一である。東急池上線の吊り掛けモーター音を子守歌として育ち、小学生時代から全国の鉄道路線完全乗車への旅を始めた。途中、何度かのブランクはあったものの、現在はJR線の78%、私鉄の72%を踏破している。そんな私の実体験を紹介しつつ、おもしろくてためになる鉄道旅行術をお届けしたい。

何十年も普通乗車券を定価で買ったことはない

さて、今回のテーマは「定価での普通乗車券購入は最後の手段!!」だ。鉄道の旅に出かけるとき、私はまず往復割引きっぷなどの割引制度が適用するかを確認する。次にフリーきっぷなどのおトクな企画乗車券を探す。日常の移動はともかくとして、遠くへ出かける場合は必ずといっていいほど割引きっぷや企画乗車券があるのでそれらを利用する。探したにもかかわらず見つからなかったときに、最後の手段として定価できっぷを買うことにしている。もっとも、もう何十年も旅のきっぷを普通乗車券の定価で買ったことはない。

割引切符で新幹線に乗ろう

たとえば、東京から広島へ観光に出かけるとする。割引制度や企画乗車券を知らないと、東京で行きのきっぷ、広島でかえりのきっぷ、それぞれ正規のきっぷを買うことになる。東京から広島まで、普通乗車券は1万1,340円、のぞみ号の指定席特急料金は7,210円。合計すると片道1万8,550円だ。往復だと倍になるので、3万7,100円である。

東京 - 広島間の運賃と料金を比較

しかし、もし旅行の期間が12日間以内なら往復割引制度が使える。東京で往復きっぷを同時に買おうと。JRの往復割引制度は片道601km以上、往復とも同一経路が対象となる。この割引制度が適用されると、帰りとも乗車券が1割引になり、乗車券は往復2万400円。これにのぞみ号特急券の往復分の1万4,420円を加えて、総額は3万4,820円。なんと、2,280円も安くなるのだ。

もうひとつ検討すべききっぷは「周遊きっぷ」。乗り降り自由のゾーン券と、その入り口までの「ゆき券」と「かえり券」がセットになっている。そのゆき券、かえり券ともJRの乗車券で片道201km以上にするなどの条件がある。「周遊きっぷ」の魅力は、ゆき券、かえり券ともに2割引になること。ゾーン券は全国に34カ所が設定されており、広島駅は「広島・宮島ゾーン」に含まれている。往復の乗車券は1万8,140円、のぞみの特急券往復分の1万4,420円を加えると3万2,560円とさらに安くなるが、4,600円のゾーン券も必要なので、合計3万7,060円となる。

周遊きっぷは片道きっぷ2枚より40円しか安くならない。往復割引より高くなってしまう。しかし、周遊きっぷのゾーン券は広島市内のJR線を網羅しているほか、宮島行きのJR航路も含まれている。ゾーン券の範囲は乗り放題なので、広島でJRの移動が多いプランを考えていた場合は、総額で周遊きっぷのほうがおトクになると思われる。また、周遊きっぷの場合は有効期間が長くなることも魅力だ。このケースでは、往復分の有効期間とゾーン券の有効期間をあわせて最大15日間有効。現地に2週間も滞在できるので、お盆や年末年始の帰省にもぴったりだ。

周遊きっぷなら宮島も範囲内

念のため、航空運賃も調べよう。私の場合、現地の鉄道に乗りたいという気持ちが強いので、アプローチは格安航空券でもOKなのだ。東京 - 広島間は28日前の予約で片道1万2,000円~1万5,000円ほどとかなり安い。しかし、広島空港から広島駅までのバスが1,300円。さらに、都内から羽田空港へのモノレールや京急の利用額を考えていくと、JR利用との差が縮まっていく。

このような例は各地にある。私の場合は鉄道乗り潰しが目的だから、周遊きっぷを使う機会が多い。他には「北陸フリーきっぷ」「ぐるり北海道フリーきっぷ」「ぷらっとこだまエコノミープラン」もよく使う。また、JR四国には誕生月に1万円で3日間、グリーン車に乗り放題という「バースデイきっぷ」がある。

どこへ行く場合にも、必ずといっていいほど安いきっぷが見つかる。まずは、出かける前にチェックして、おトクに旅を楽しんでもらいたい。