プログラミング不要のデータ連携ソフトウェア「DataSpider Servista」で知られるアプレッソが、新製品「Thunderbus」をリリースした 。「Thunderbus」は、オンプレミスのデータを、クラウドから手軽に使うことができる製品。同社にとって4番目となる製品だが、これまでの製品とは違い、正式リリースまでには様々な新しい取り組みがあった。今回はその開発経緯や特徴を、製品開発に携わった人たちに伺った。

社員の発案により、新規事業創出プロジェクトを経て誕生

株式会社アプレッソ 開発本部 開発部 第2チーム リーダー 土岐拓未氏

Thunderbusを発案し、製品化までの開発を担当したのは、開発本部 開発部 第2チーム リーダーの土岐拓未氏だ。これまでのアプレッソ製品は、技術者でもある小野和俊社長が発案、開発を主導してきたが、今回初めて社員からの発案で製品が誕生したことになる。

その発端は、3年ほど前から取り組んでいる社内の新規事業創出プロジェクトにあった。新規ビジネスの案を出し合う「SNP」(Something New Party)を月例で開催し、そのアイデアの中で自社製品やサービスとして可能性のありそうなものはビジネスプランを策定する。そして年に1、2回開催される同社内の「ビジネスプランコンテスト」で発表し、ここで認められれば正式に製品化を目指す、という流れになっている。

この一連の流れをとりまとめているのが、事業推進本部 海外・新規事業担当部長の亀井美佳氏だ。

株式会社アプレッソ 事業推進本部 海外・新規事業担当 部長 亀井美佳氏

「SNPは、すぐに製品化するようなものに限らずアイデアを出し合い、ブレインストーミングしていく会合です。ウェアラブル端末やIoT(Internet of Things)などに関するものも含め、たくさんのアイデアが出てきています。今回SNP、コンテストを経て世に出た最初の製品が、このThunderbusです」(亀井氏)

土岐氏によると、Thunderbusにつながるアイデアは2012年頃に思い付いたものだという。

「当時SNPでは、斬新なアイデアを出す人もいて、そういった人たちに刺激されつつ、対抗心を持ちながら、いろいろと試行錯誤していました。また社内では、ちょうど”クラウド”というキーワードが出てきていた頃で、既存製品のクラウド対応を進めていることもあり、クラウドの利用を容易にする仕組みとして発想したものです」(土岐氏)

オンプレミスのデータを、クラウドから手軽に使えるようにするThunderbus

クラウドを使いやすくする仕組みとして土岐氏が着目したのは、”多くの企業はクラウドだけを使うのでなく、オンプレミスも同時に使っている”という点だ。

「データを処理する場所と置く場所、それぞれにクラウドとオンプレミスのどちらかが考えられます。それらの組み合わせで考えれば、当社の主力製品であるDataSpider Servistaのクラウド連携機能の多くは『処理はオンプレミスで行い、データをクラウドに置く』というパターンでの利用が想定されているのですが、Thunderbusでは『処理はクラウドで行い、データをオンプレミスに置く』といった形を想定し、その手法を模索したのがはじまりです」(土岐氏)

処理とデータの場所それぞれの組み合わせ。「4」の使い方に適したツールや手法があまりないことに土岐氏は着目した

クラウドに限らず外部からオンプレミス環境のデータを利用する場合、一般的な手法として考えられるのはVPN接続だ。VPNの構築や管理はそれなりの知識を持った人でないと難しく、相応のコストと時間が必要となるため、多くのVPN接続を用いるとなればIT部門にとっては大きな負担となる。そのため容易に利用できる手段とは言いがたく、利用するとしても一部のサーバだけに限って構築するのが実情だろう。ましてや、多くのクライアントに散在するデータを外部から利用するとなると、VPN接続は現実的ではない。

これに対しThunderbusは、HTTPS接続を利用し、より手軽に利用できるようにした。クラウド側(データを参照する側)に「Thunderbus Server」、オンプレミス側(データを参照される側)に「Thunderbus Agent」をそれぞれ導入して接続する。Thunderbus ServerはWebDAVサーバとして他システムからのファイル操作リクエストを受けつけるようになっており、Thunderbus Agentへリクエストを中継する仕組みだ。

Thunderbus Agentはインストールや設定も簡単。URLやIDなど必要な情報が揃っていれば誰でもでき、所要時間も3分ほどで済むという

使い方はいたって簡単だ。Thunderbus ServerにはWebベースの管理画面があり、あらかじめここでユーザーIDなどを登録しておく。Thunderbus AgentはPCのタスクバーに常駐する形となっているので、それを開いて接続先Thunderbus Serverのアドレス(URL)やユーザーIDなどを入力し、共有するローカル側のパスを指定して接続する。また、DataSpider Servistaと「Thunderbusコネクタ」を組み合わせて利用することでDataSpider Servistaの高い接続性を活かした様々なシステムとオンプレミスのデータのシームレスな連携が可能になる

ThunderbusAgentの管理画面

ThunderbusServerの管理画面

なお、各エンドユーザーがPCで作成したローカルに置いているファイルを、クラウドや外部システムで利用しようとする場合、オンラインストレージやファイルサーバなどを介して共有するといった手法も考えられる。しかし共有するためには、ファイルを都度サーバにアップするか内容を手動で転記する、あるいは常にサーバ上のファイルで作業するようにする、といった習慣を改める必要がある。また、毎回アップするには手間が増える上に、アップし忘れてしまったファイルは古いままになってしまうというリスクもある。

「多くのユーザーは社内にもクラウド上にもデータを置いているのが実態です。両方を行き来しながら、それぞれのデータを使って仕事をしているものと思います。ただ、ローカルで持っているデータというのはローカルなりの意味があるはずです。例えば、自分の担当業務で日々発生するデータなどを、ローカルに置いたExcelワークシートに入力する、といった作業はきっとなくならないでしょう。Thunderbusは、そういったファイルの利用スタイルをそのままに、外部からも利用できるようにし、データの置き場所を気にせずに使えるようにするのです」(亀井氏)

ここまで、Thunderbusの開発経緯や特徴などを紹介してきたが、次回は「どのような課題を抱えた企業に対しThunderbusは適しているのか」という点に着目し、活用シーンや同製品のロードマップを交えながら紹介していく予定だ。