点滅回路の電源をオシロスコープ「TBS1022」でチェック

今回は点滅回路の電源回路をオシロスコープ「TBS1022」でチェックしてみよう。これは、クリスマスイルミネーションのLEDストリングを点滅させるための回路である(図1)。LED部分は、オン・オフさせるストリング(LEDを50個直列接続したもの(連載第2回目を参照)と、逆にオフ・オンさせるストリングから構成されている。たとえば、赤のLEDストリングがオンしている時は緑のLEDストリングがオフ、赤がオフの時は緑がオン、というような構成にしている。

オン・オフする点滅回路は基本的にNE555タイマーICからなる。これはICに抵抗とコンデンサを外付けして、その値を変えることでNE555の出力から適当なパルス幅のパルスを発生するものだ。タイマー回路では、コンデンサCを充電する時にはRA+RBが充電され、放電する場合にはRBだけを経由する。この特性を利用して、オンの時定数は(RA+RB)×Cとなり、オフの時定数はRB×Cとなる。Cを220μFと設定するとRAとRBを数kΩの範囲で数秒と決めることができる。私は約4秒程度の周期を選んだ。

図1 NE555でオン・オフさせるパルス発生器(出典:Texas Instruments)

また、オン・オフとオフ・オンは、最終段の出力トランジスタを反転させることで、得られるようにした。オープンコレクタをLEDストリングに接続させる構成にしている。NE555からの出力は基本的にはパルス列を出力するだけなので、LEDストリングをドライブするnpnトランジスタを2段使って、反転パルスを作り出している。npnトランジスタがHとLレベルを出力するときに、もう1段のトランジスタを導入することでHとLを反転させた。これによって、あるLEDがオンしている時に別のLEDはオフ、という逆のパルスを作り出した。

さて、回路に供給する直流電源を作る訳だが、ここでは「1D4B41」という製品名のダイオードブリッジを使った。これも連載2回目で紹介した全波整流を出力するダイオードブリッジである。ただし、耐圧が違う。というのは、NE555は5~15V程度が動作電圧だからである。商用電源を直接整流した、LEDストリングの電源用では安全を見込んで、600V耐圧のブリッジを用いた(連載第2回参照)。今回の1D4B41の耐圧は、200Vだったがこれでもオーバースペックだが、秋葉原で入手できたものがこれしかなかったので仕方がない。

この点滅回路では、ダイオードブリッジから平滑コンデンサだけではなく、「TA7812S」という3端子レギュレータを通して平滑コンデンサを置いた。定電圧にするためだ。本当に定電圧になっているかどうか、オシロでチェックする。図2では、17.3Vと16.4Vを繰り返している。これは、LEDストリングの負荷をつないでいる状態であり、オフの時に17.2Vとやや高く、オンの時に16.4Vと少し下がる。しかし、リップルはほとんど見られず、ほぼ直線状を描き、直流を維持している。

図2 電源電圧は負荷がオンすると下がり(右)、オフすると上がる(左)

やはり、市販の3端子レギュレータTA7812Sを利用したことと、平滑コンデンサとして25V、2200μFと容量の大きなコンデンサを使ったためである。3端子レギュレータの動作原理は次のようになっている。基準となる電圧レベルより大きなあるいは小さな電圧を検出するとフィードバックをかけて下げる、あるいは上げるという調整を行う。平滑用の大容量電解コンデンサは、コンデンサから負荷に供給される電流にも十分余裕のある電荷量を、全波整流のサイン波特性の谷間を埋めるという役割を果たす。ただし、一般にコンデンサは耐圧を高くとれば静電容量は下がり、耐圧が低ければ容量を確保できるという特性を持つ。両方を満たすコンデンサは高価になるため手が出ない。

電源出力のスケールを伸ばして、1秒/スケールで表すと図3のようになる。約4秒周期で電源電圧が17.3Vと16.4Vを繰り返していることがわかる。負荷がつながっていると(LEDはオン状態)、NE555に供給する電源電圧が少し低下し、LEDがオフ状態になると負荷電流が流れないため、電圧は高くなる。

図3 点滅回路用の電源電圧の変動

次はNE555の出力を見てみよう。このタイマーは図1のようにマルチバイブレータ構成をしており、自己発振させている。この出力をオシロでチェックすると図4に示すように、11Vのパルスを周期約4秒で出力している。実はこのオシロ波形を見たのは、17年前に回路を作った後で、これが初めてである。これまではオン時間が少し長いかな、体感的には思っていたが、オシロを入手できたおかげで、実際にオン時間の長いことを確認できた。

図4 11Vのパルスを約4秒周期で出力する

実際の回路では、図1のRAにトリマー抵抗を加え、このパルスのデューティ比(周波数に対するオン時間の比率)を変えられるようにしている。ただし、この構成ではパルスの周波数まで変わってしまう。実際にトリマー抵抗を回してみると、図4の出力が、図5の3つの写真のように変わることが確認できる。

図5 トリマー抵抗を回すと周期とパルス幅が同時に変わる

次回は、整流回路のダイオードを全面的にLEDにしてみようと思っている。

(次回に続く)