2020年に万国博覧会開催が決まっているドバイ。アラビア半島ペルシャ湾沿いに位置するUAE(アラブ首長国連邦)の首長国のひとつ。世界一高い巨大ビル「ブルジュ・ハリファ」(2位はスカイツリー)をはじめ、世界最大のショッピングモール「ドバイモール」、7つ星と称される超豪華5つ星デラックスホテルなど、観光地としても人気の世界的近代都市だ。

コスモポリタンシティのイメージが強いドバイだが、1966年に石油が発掘されて以来、産油国として発展した都市であり、れっきとしたイスラム教国でもある。

「ダイエットプログラムキャンペーン」、1キロ減量につき純金1グラムを贈呈!

そんなドバイで、2013年以来ラマダン(断食月)に合わせて実施されているのが、「ダイエットプログラムキャンペーン」。なんと、このキャンパーン、1キロ減量につき純金1グラムが贈呈されるのだ。このキャンペーンは「Your Weight in Gold」。2014年に実施されたのは、7月15日から24日までにオンラインで参加登録をした人が、ドバイ内に公園で体重測定。ダイエット後の9月10~15日の間に政府から指定された場所で再度体重を測り、減量1キロごとに純金1gが提供されるというもの。

純金をもらうには、3キロ以上の減量に成功しなければならない。また、2014年のプログラムは子どもの減量に主眼が置かれており、14歳以下の子どもは2人まで家族として参加でき、家族として減量に成功すれば、1キロに対して金2gのボーナスプレゼントが用意されていた。

なお、2013年の実績では、9600人が参加し、約280万ディルハム(約9240万円、1AED=33円)相当の純金が提供されたという(今年の募集は未発表)。

「金の都市」と呼ばれてきたドバイ

そもそも政府がこのような政策に予算を投じるのは、ドバイをはじめ湾岸諸国には肥満や生活習慣病がまん延しているという現実がある。高カロリー食が急速に普及したにもかかわらず、暑いこともあり、国民は全般的に運動不足。結果、20%近い国民が糖尿病という世界有数の糖尿病大国になってしまったという背景があるのだ。

そこでなぜ純金のプレゼントが? という点もお国柄がうかがえる。ドバイは元々、地元の人々に「金の都市」と呼ばれてきた。

アラビア語のネックレス! (写真提供 : ドバイ政府観光・商務局)

ベドウィンがアラビア砂漠で遊牧していた時代にさかのぼって、ドバイは金の取引拠点として発展してきた歴史がある。ペルシャ湾の輸出航路に近いアラビア半島に位置するため、世界有数の金山であるアフリカと世界で最も多く金を購入するインド市場との懸け橋の役割を担ってきた。実際、ドバイ市街には、300軒以上のスークと呼ばれる店舗が所狭しと軒を並べ、金地金や遊牧民ベドウィンの宝飾品などを販売している。

過去数十年、原油収入で潤い、貴金属が免税販売される金市場「ドバイ・ゴールド・スーク」は世界有数の金市場となっている。金は量り売りされており、価格の掲示はないので、値切り交渉を根気よくする必要がある。ゴールドスークの目玉は金の相場が世界一安いこと。観光客は金の延べ棒を投資用に買ったり、地元の人は手持ちの金を売って別の金を買ったりといったことも日常茶飯事に行われている。いずれにしても、各ウィンドウにズラリと金が並ぶ姿は一見の価値がある風景ともいえるだろう。

ゴールドスーク(写真提供 : ドバイ政府観光・商務局)

ただ、原油価格の下落で中東全域の経済が低迷。中東の金需要は鈍化傾向にある。今では、金を買い求める地元民の姿はすっかり影をひそめたという。さらに金購入のお得意様であるサウジアラビアとロシアへの売り上げも落ち込んでいるため、いっときの金市場の勢いはなくなっているようだ。

そうしたなかでの減量キャンペーンによる純金のプレゼントは、健康増進と純金プレゼントの経済効果のダブルメリットを狙った政府の景気回復策なのかもしれない。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。