くしゃみが止まらず、鼻もズルズル……クリエイティブに必要な集中力がそがれ、生活の質も大きく下がってしまう「花粉症」に悩まされている人も多いかもしれません。抗アレルギー剤を使いたくない、あるいは薬だけでは症状を抑えられないという時、ほかにできることは何があるのでしょうか?

この連載では、忙殺され身体を酷使しがちなクリエイターが「健康的に創り"続ける"」ための知識を公開。敷居が高いイメージになってしまった「健康」を広く手の届くものにすべく活動されている鍼灸師・若林理砂さんが、忙しいクリエイターにもできる「健康への第一歩」につながるエピソードを語ります。第18回は、いまや国民病ともいえる花粉症について、東洋医学的な観点からの対処について語っていただきます。


若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。著書に「養生サバイバル」「安心のペットボトル温灸」など。好きな漫画/アニメは「進撃の巨人」「FSS」「おそ松さん」。一昔前は腐っていました。「どの宮崎アニメにも必ず出演している」顔立ちといわれています。夫はクーロンズ・ゲートの人。TwitterID:@asilliza

わたしの患者さんの中には、ひどい花粉症の方が数名いらっしゃいます。彼らが「もう飛んでるよ」と言い始めるのは、春になるずっと前の1月後半。私はひそかに、炭鉱で有毒ガスを検知するために使われていた小鳥になぞらえて、「花粉のカナリア」と呼んでおります。

彼らほどではないにせよ、遅れること数か月、暖かくなるころには鼻水をズルズルさせながら治療室へ来院される患者さんも増えてきます。

今はもうスギ花粉は終わりましたが、現在ヒノキ花粉症の最盛期です。スギにもヒノキにも反応する患者さんが言うには、「スギとヒノキじゃ症状が若干違う。だから、スギの終わりとヒノキの始まりは確実にわかる。」とのことです。違いの分かるソムリエみたいですが、正直なところ、あまりわかりたくないものですね……。

東洋医学的観点からの「花粉症」

さて、花粉症を東洋医学で何とかすることは可能なのか。答えは『YES』です。完全に治すことは不可能ですが、養生で軽快させることは可能なのです。

東洋医学では、鼻水が滝のように流れる状態は、体内に水が必要以上にあふれていて、外に出そうとしているのだと考えます。こうした状態を痰飲・水滞と呼んだりします。ですので、体の中に水を溜めこむような行為はNG。とはいえ、水が余っているからといって、水を我慢して飲まないようにするのは解決にならないのでご注意を。冷蔵庫で冷たく冷やした飲み物をがぶ飲みすることは控えるようにし、常温や温かい飲み物で水分補給をすることで痰飲・水滞の状態に陥らないようにすることができます。

アルコールを飲む方は、体内に熱を作り出すため、アレルギーによる粘膜の炎症を助長するなどの悪影響もありますので、流行時期に入る頃に禁酒をすることが症状の軽減につながります。

ほかにも、甘いものやしょっぱいもの、その他の味の濃いものは避けるようにします。粘膜を充血させやすいため、香辛料も控え目にすると症状が軽減しやすくなります。

アレルギー「だけ」でなく、生活を見直す

アレルギーは免疫の暴走ですので、免疫系が正しく機能するように睡眠をしっかりとることも大切な養生です。夜更かしや徹夜は花粉症を激しくする原因となります。

また、腸内環境も免疫機能にかかわるので、おなかの調子を整えておくことも大切。バランスの良い食生活を心掛けるとともに、簡単な方法としておすすめしているのが整腸作用のある乳酸菌の錠剤です。代表的なブランドではビオフェルミン製薬の『新ビオフェルミンS』がありますが、これ以外のものでも十分効果があります。花粉症の季節に入ったら、毎日食後にパッケージに指示されている用法・用量にしたがって服用します。たったこれだけでも、かなりの方が症状を軽減させることができます。

ちまたでよく言われていることでもありますが、現時点で花粉症を発症していない方でも、将来的に発症しないという確約はありません。できるだけ発症のもとになる花粉を吸い込まないよう、外出時にマスクを着用することも大切です。しかし、それ以上に、養生の三本柱である「運動・栄養・睡眠」の三つを守りつつ、規則正しい生活を送ることで免疫機能を暴走させないことが大切です。

私自身、小学校5年生の頃にスギ花粉に対する抗体は多少あるとの診断を受けていて、不養生だったころは様々なかゆみなど出ていましたが、養生を徹底するようになって以降、症状が軽減していき、その後も発症には至っていません。チガヤ・カモガヤ等に関してのアレルギーも、酒量が多かった時期は花粉に反応してかゆみが出ていましたが、同様に養生をしっかりするようになって以降は反応しにくくなっています。

また、養生しつつ、漢方や鍼灸の施術を受けることによって、かなり症状を軽減させることが可能です。一度お近くの漢方外来や、漢方薬局、鍼灸師に相談なさってみてはいかがでしょうか。