本連載では、開発プロセスの中でも重要な位置を占めるテストプロセスに着目し、全体最適を実現させるために、どのように現実のテストプロセスに取り組んでいくべきかを考察しています。今回も前回に引き続きソフトウェアテストのトレンドにフォーカスを当て、テスト技法として「マインドマップ」の適用について解説します。

テスト技法には様々なものがありますが、ISTQBでは「仕様ベース」「構造ベース」「経験ベース」の3つに大別されています(図1)。

図1 ISTQBのテスト設計技法の一例

ここで紹介する技法は、実はISTQB Foundation Levelのシラバス(要旨)には掲載されていません。とはいえ、テストの世界では注目を集めている技法です。

特に、日本の技術者が情報発信している「マインドマップの適用」と「HAYST法」はぜひ注目すべき技法だと思います。また、テストケースを自動生成する技法として世界的に研究や取り組みが行われている「MBT」も今後が期待できます。今回はマインドマップを紹介します。

マインドマップは、Tony Buzan氏が提唱しているアイデアやイメージを表現する図法の1つです。

筆者(大西)はマインドマップの利点を、まだ頭の中で階層構造化できていない「もやもや」した物事を、実際に手を使って書き出していくことで可視化し、階層構造まで整理できることだととらえています。

参考文献『マインドマップから始めるソフトウェアテスト』(池田暁/鈴木三紀夫著、技術評論社刊)では、このマインドマップをテストプロセスの全体で活用する方法を、仮想事例を使って紹介しています。

テスト計画や分析、設計、実装といったテストプロセスでテストウェアを導くノウハウというのは、なかなか可視化しづらいため、暗黙知となっていることが多いのが実情です。マインドマップで表現することによって、これを形式知化することができるようになります。

つまり、個人のテストプロセスでの作業だけではなく、テストチームのメンバー間でノウハウを共有するためにも使える便利な道具であると言えるでしょう。

実際のマインドマップの書き方は、参考文献や様々な書籍で紹介されていますので、ここでは先述したISTQBによるテスト技法の分け方をマインドマップで書いた例をお見せしましょう(図1)。

この絵は筆者がチェンジビジョン社のJUDEというモデリングツールで書いた例です。

図1のようにマインドマップはツールを使って描くことができますし、ノートや画用紙に手で書くこともできます。今回筆者は有償ツールを使って描きましたが、フリーウェアもありますからツールを使うことも手軽に始められます。

とはいえ、「マインドマップから始めるソフトウェアテスト」の<あとがき>で著者の鈴木氏はこう述べています。

世の中マインドマップと相性の悪い人というのはいます。マインドマップは、全員に受け入れられるテクニックではありません。ですから、「マインドマップが描けない」と悩む必要はありません。あくまでも私たちの目的は、よいソフトウェアテストを考えることなのです。

筆者としては、まず一度手で描いてみてから「合う」「合わない」を判断すればいいと思います。具体的に、これをどのようにテストプロセスに適用すればいいのかを知りたい方は、参考文献をご一読ください。

執筆者プロフィール

大西建児 (Kenji Onishi)
株式会社豆蔵 シニアコンサルタント。国内電機メーカー、外資系通信機器ベンダーで培ったテストや品質保証などの経験を生かし、テスト手法や技術の普及、発展に取り組む。NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)副理事長。JaSST’08東京 共同実行委員長。著書に「ステップアップのためのソフトウェアテスト実践ガイド」(日経BP社)などがある。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。