前回、アプローチをまとめる「テストのコーディネート」について説明しました。今回は、コーディネートした結果をどのように扱うかについて考えてみたいと思います。

テストに対する理念や分析結果をもとにテスト全体の構造を定義しますが、定義は可能であれば複数用意しておき、状況に応じてプロジェクトで実施可能な組み合わせを取捨選択するとよいでしょう。なぜなら、最も重要なのは「全体最適」のためにコーディネートした結果をメンバー全員で合意することだからです。

全体最適のためには、「合意」が一番難しいステップでしょう。しかし、「どうしてこのアプローチを採っているのか」「採用したアプローチはどのような効果があるのか」ということをメンバーが理解していなければ、結局各自が個別に最適な方法を考えて実行してしまうので効果が出ません。ですから、コーディネートした結果をメンバーにわかりやすく伝えることが大事になります。

その方法としては、テスト計画書にテスト戦略を記述するなど、以下の図のようにドキュメントとして整理することが挙げられます。コーディネートした内容(戦略概要)やその背景(選択した理由)を要約したものを付記したり、プロジェクトやプロダクトの分析結果を記述したりして、選択した戦略の意図が伝わりやすくなるようにします。

また、これらの戦略は、後に各テストレベルで技法や手法を使ってテスト分析・設計・実行といった具体的な活動に移されるので、実現可能性がわかる情報(人員やテスト環境が確保できるか、テストツールはどのようにして調達するのか)が大事になります。あまりに実現可能性が低い戦略には、メンバーは合意できません。

図 戦略を合意するためのステップを踏むこと

複数回にわたって、新しいテストのアプローチについて解説してきました。新しいアプローチは、テストを効率的・効果的に行うために既存の枠組みを取り払って考えるところに特徴があり、それらはコーディネートすることで戦略となり得ます。また、新しいアプローチは、既存の枠組みから考えると効果があるかどうかがわからないことも多いため、なおのことメンバーの理解を得て合意するステップが重要なポイントだと言えるでしょう。

次回以降はテスト戦略とは別の視点になりますが、最近のテストのトレンドを紹介したいと思います。

執筆者プロフィール

湯本剛 (Tsuyoshi Yumoto)
株式会社豆蔵 シニアコンサルタント。1991年に製造メーカーに就職し、原価管理、製品管理システム構築プロジェクトに参画。その後ソフトハウスにてパッケージソフト、プリンタドライバ、C/Sシステム、Webシステムなどソフトウェアテスト業務に携わる。現在は豆蔵にてソフトウェアテストのコンサルタントとして活動中。日本科学技術連盟SQiPステアリング委員、JSTQB技術委員、s-open幹事、NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会理事。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。