テストには、「どこまでやれば全部テストしたことになるのかわからない」とか「納品間近になってもバグが出続けるけど、テストを終わりにしていいのか」という問題が付きまといます。これらを乗り越えて製品をリリースするために、誰しもが何らかのテスト戦略を立てていますが、テストだけの個別戦略になってしまっているケースも往々にして見受けられます。さらに一歩進んでテストから開発全体を最適化させるためには、戦略立案のパラダイムシフトが必要となります。今回は、テスト戦略の基本的な考え方について説明します。

「戦略」とは、strategyの日本語訳であり、漢字からもわかる通り、元々軍事用語です。戦いの局面では、兵力的に圧倒的に劣る場合でも、戦略次第で勝負に勝てる場合が出てきます。

例えば、以下のようなアプローチで戦いに挑むと良いと言われています(※)。

・接近戦を選択する
・一騎打ちの場面を作る
・兵力を集約して一点集中攻撃に持ち込む

一方、兵力的に圧倒的に勝る場合でも、戦略が貧弱だと負けてしまう場合があります。負けないためには以下のようなアプローチが必要になってきます。

・広域戦を選択する
・爆撃のような確率戦を展開する
・間接的・遠隔的戦闘場面を作る

実際には1つのアプローチで戦うのではなく、各戦局において、条件・環境・適用範囲などから状況を判断し、適したアプローチを取捨選択することで全体の戦略を構成させます。戦略が的確だと「勝つ」という目的を達成する確率が高くなります。戦略とは「勝ち方のノウハウ」だと言えるでしょう。

その戦略をテストに当てはめたものが「テスト戦略」です。戦争では勝つことが目的ですが、テストでは、「重大な欠陥をより早く、より低コストで発見する」ことが目的になります。この目的をより確実に達成するためのノウハウがテスト戦略なのです。

※「ランチェスター戦略経営入門」(ランチェスターシステムズ、サンマーク文庫、1999年)を参考にしています。

執筆者プロフィール

湯本剛 (Tsuyoshi Yumoto)
株式会社豆蔵 シニアコンサルタント。1991年に製造メーカーに就職し、原価管理、製品管理システム構築プロジェクトに参画。その後、ソフトハウスにてパッケージソフト、プリンタドライバ、C/Sシステム、Webシステムなどソフトウェアテスト業務に携わる。現在は豆蔵にてソフトウェアテストのコンサルタントとして活動中。日本科学技術連盟SQiPステアリング委員、JSTQB技術委員、s-open幹事、NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会理事。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.2(2008年1月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。