ここ数年、コンプライアンスへの対応や内部統制の整備は企業にとって火急の課題となっていますが、ITに関連する調達においても、特定の人間が恣意的に行うのではなく、いつでも第三者に説明できるよう客観性・公平性を維持しながら行うことが求められています。その際に有効とされるのが、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)による調達です。本連載では、発注者・受注者双方にとって有用なRFPによるIT調達/提案のポイントを解説します。

調達とは、簡単に言ってしまえば、企業に必要なサービスや物品を有償で入手することです。IT部門が調達する物品/サービスは、大きく4つに分類できます(表1)。実際の調達においては、これらを組み合わせた形になる場合が多いです。

調達の方法は、調達する対象の性質、規模、難易度に応じて最適な方法を選択することになります。以下、主要なIT調達で用いられる方法を紹介しますが、いずれの方法も契約理由に関する説明責任を果たせることが前提です。

表1 IT部門が調達する物品/サービスの例

調達する物品/サービス 概要
アプリケーション構築 ユーザーが直接利用する情報システムの構築を指す。企画・設計・開発と構築工程の段階別に契約することがある
インフラ構築 長期的で大規模なインフラ基盤の構築を指す
運用 各製品・サービス購入後の保守やトラブル対応、また円滑な運営などを提供するサービスを指す
物品機器 PCやプリンタなど、基本的に既製品のまま利用可能なものを指す。付属ソフトおよび現地調整・保守を含む
特定ソリューション >特定分野、領域の専門知識や解決策を提供するサービスを指す

1.随意契約による調達

入札方式をとらずに特定の取引先と契約交渉して物品/サービスを調達する方法。一般に、継続的な調達が前提です。提供可能な取引先が限定されていたり、新規取引先との契約にあまりメリットがなかったりする場合に実施するケースが多い。

2.見積り合わせによる調達

特定の取引先を複数社指名して提案/見積りを募り、その中から選出した1社と契約交渉して物品/サービスを調達する方法。調達の内容が比較的明確であり、取引先によって実現方法や仕様、金額にさほど大差がない場合に実施するケースが多い。

3.RFPによる調達

特定の取引先を複数社指名するか、まったく指名せずに調達内容を公開して取引を希望する企業に提案を募り、提案内容を比較して物品/サービスを調達する方法。比較的規模、金額の大きい調達に実施するケースが多い。また、取引先によって提供される物品/サービスの内容に幅が出ると予測される場合に実施します。

4.特殊な調達

政府調達やグリーン調達といった、政府または法律によって優先的な調達条件を定めた調達方法。

政府調達とは、政府機関(地方政府を含む)の購入や借入によって行われる物品・サービスの調達を指します。総務省行政管理局が管掌する「情報システムに係る政府調達事例データベース」によれば、政府調達案件の掲載条件は、国の行政機関が1,600万円以上の調達額の情報システムに係る案件に対して実施する調達となっています。安全保障や企業機密情報保護の観点など公表することが適当でない場合、システム開発を伴わないPCやサーバなどの賃貸借契約など機器調達のみの場合を除きます。

グリーン調達とは、元来は官公庁が環境に与える影響が少ない製品を優先的に購入することを指します。ただし、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(通称:グリーン購入法)の施行によって、民間企業も積極的に取り組むようになりました。

執筆者プロフィール

石森敦子(Atsuko Ishimori)
株式会社プライド システム・コンサルタント

『出典:システム開発ジャーナル Vol.1(2007年11月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。