本連載では、日頃現場で遭遇する様々な人間関係にまつわる悩みを解決するためのヒントを提供します。今さら電子メール(メール)について語るのはどうかと思いますが、当たり前のように使われていながら、「ダメ」なメールがあまりにも現場で放置されたままになっていませんか? 今回も前回に続きメールをテーマとし、リーダーの立場にある人が部下に対してメールに関する指導を行う際に、判断基準とすべき項目を具体的に紹介します。

重要度が明確になっているか

「そのメールがどれだけ重要なものなのか」「他の業務と比べて優先度はどうなのか」といったことを相手に即座に理解してもらわなければなりません。この条件を満たしているかどうかを判断します。

文章はシンプルか

文章が簡潔で、一文が短いということです。文法が正しくても、「。」までが長く、いくつもの要素が含まれた文章はビジネスには不向きです。表現を柔らかくするため、丁寧にするためにクッション言葉を多用する人もいますが、肝心の意思伝達部分は、あえてシンプルにすることを心掛けるべきです。

レイアウトは適切か

レイアウトが適切であるということは、「読みやすさ」につながります。文章の右端を適宜改行し、段落間に空白行を入れるなど、「配慮されている」ことが伝わる文面にすべきです。

件名が必要十分か

「先般の件につきまして」「お世話になっております」といった件名はスパムメール扱いされてしまいかねません。送信者、受信者の双方にとって、仕事の履歴を確認するなど、後でメールを参照する際の効率などを踏まえると、件名はプロジェクトやタスク、製品名を入れるなど、業務に関する具体的な内容が伝わるようにしておくべきです。

期日とToDoが示されているか

「○○の件どうなっていますか?」といった、送りっ放しのメールをよく目にします。相手とのやりとりが発生する仕事には必ず期日が存在するはずです。相手が「いつまでに?」と再確認しなければならないのは、時間と手間の無駄です。また、必要とされるアクションが何かを具体的に伝えることも大事で、このことをリーダーが重要視していると、チーム内でのやりとりにリズムが生まれます。

複数案件を詰め込んでいないか

1つのメールに複数の用件を詰め込む人がいますが、これはミスや伝達漏れの原因になります。業務の内容などに応じてメールを「仕分け」している人が多いはずですから、送り手が案件ごとにメールを分けるのはマナーでもあります。

実は最近、開発現場のみならず、営業マンなどのビジネスパーソンを対象としたメールの研修が盛況となっています。"道具"は機能してこそ価値が認められるべきものであり、使いこなせなければ単なるゴミでしかありません。メールも同じです。社員がメールを使いこなすことができず、それによって生じている業務上のロスを、企業や組織も見逃せなくなってきたというわけです。

今回はメールについて指導するための判断基準例を紹介しましたが、決して「当たり前のこと」だと流さないでください。その"「当たり前」のことができない人"を指導するのはあなた自身ですし、ご紹介した他にも職場やレベルに応じて指導基準は数多くあるはず。それを1つ1つ放置せず指導してゆくというプロセスは、結果的に自身のメールを見直すきっかけにもなることでしょう。

執筆者プロフィール

佐藤高史 (Takashi Sato)
株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人事教育・研修プログラムを数多く開発。著書「最強のプレゼンテーション完全マニュアル」(あさ出版)。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.3(2008年3月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。