今回は、某ソフトウェア会社でSEとして働くA子さん(27歳)を例に、産休や育児休暇にまつわる問題について考えてみます。

彼女は新卒ではなく中途入社組ですが、会社からコミュニケーション能力やプログラミングのスキルを買われ、5名の開発チームのリーダー的役割を果たすようになっています。そんな会社ですから、仕事面で特別に男女差を意識することはありません。

プライベート面では、職場で知り合った男性と2年前に結婚し、結婚後もそれまで通り懸命に仕事に打ち込んできました。最近、待望の第1子を授かったことがわかり、誕生に向けて産休、育休を取得する手はずを整えています。

A子さんは周囲の協力もあって順調に産休・育休を取得できてひと安心といった状況……のはずですが、そんな彼女のホンネは次のうちのどれだと思いますか?

出産・育児は、既婚、未婚にかかわらず、女性にとっては大きな関心事の1つです。また、女性だけではなく男性にとっても決して無関係な出来事ではないはずですよね。自身が当事者ではなくても、家族や上司、部下に子供ができた時は、イヤでも出産という大きなイベントに巻き込まれることになるのですから。

筆者も、特に20代半ばから周囲の意見や出来事に関心を抱くようになりました。そんな中でよく耳にするのは「IT業界は男社会だ」という言葉です。つまり、IT系の企業の多くは男性が多く、女性がいるということが想定されていないルールが多いというわけです。

「過去に産休を取得した先輩たちは皆そのまま退職してしまったので、職場復帰するのは難しい」と考えている女性が多いという話もよく聞きます。そのような状況で職場復帰を目指す女性は、出産だけではなく、「自身が前例となる=失敗できない」プレッシャーを抱えて産休や育休に臨んでいることが多いのです。

次回は、男性の育児休暇についてと筆者が運営しているコミュニティ「eパウダ~」に所属している女性エンジニアたちの産休・育休に関する生の声をお届けします。

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)株式会社タンジェリン代表取締役。
コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方について日々模索中。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.4(2008年5月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。