【連載】

若き起業家たちの夢とその戦略

16 僕が、学生から"10代の女性向けサービス"で起業家になった理由

 

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「メイクとコスメの違いすら知らない、そんな始まりでした」と苦笑するのはもちろん男性である。「改めて考えるとメイク=お化粧をすること、コスメ=化粧品だと認識はできますが、今までは聞き流していたなぁと思います」と、MAKEY 代表取締役 中村秀樹氏は振り返る。

MAKEY 代表取締役 中村秀樹氏

中村氏は、10代の女性をターゲットにしたメイクプロセスとコスメ共有アプリ「MAKEY(メイキー)」を開発・運営するため、決まっていた内定先を辞退し学生から起業家になった。ブルーを基調としたおしゃれなこのアプリは、女性チームが手がけていそうな洗練されたデザイン。それを20代半ばの若い男性3人でつくっている。

一体なぜ、この分野のプロダクトを作ろうと決めたのか。そこにはどんな苦労や面白味があったのか。起業のきっかけから今後の展望まで、中村氏に話を聞いた。

会社買収が発表された衝撃の内定式

中村氏 : 大学2年生のころからIT企業を中心に就活を始め、3年生の前半には就職先が決まりました。卒業まで2年近く残っていたので、就活中に出会った仲間とWebサービスを作ろうと思い立ったんです。

昔からIT分野には興味があり、大学1年生のときからIT企業でインターンをしていました。そこで起業家の姿勢や考え方を間近で見ていたこともあり、自分でも何らかのサービスを作ってみたいなとはずっと思っていました。

そうして2014年1月に完成したのが、MAKEYのプロトタイプです。4年生の夏ころにはサービスへの思い入れが強くなり、就職せずに起業してサービスを開発・運営していきたいなと決心しつつありました。2014年8月に法人化し、入社予定だった会社の担当者にもその旨を伝えていましたが、それでもズルズルと内定式には参加してしまい……(汗)。

でも、そこで衝撃的なニュースを知ったんです。内定式と日を同じくして、内定先の企業が某ベンチャー数社を買収したことが発表されて……。しかも、そのうちの1つのベンチャーの社長が20代半ばと聞いて、気持ちが高まるのを感じました。そこで、失礼を承知で内定式後、改めて内定辞退したい旨を伝えました。

―― それは野心をくすぐりますね。では、まず設立当時のことを伺ってもよいですか?

はい。当初は代表2人体制でした。2014年1月時点で僕がアイデアを持っていて、のちに共同代表となるインターン先で知り合った友人と一緒に始めました。

その後、サービスを作る上で必要なエンジニア2名がジョインしてくれました。当時は会社化していなかったので肩書はありませんでしたが、8月に法人化した際に初期メンバーだった僕と友人が共同代表になりました。ただ、昨年10月末にその彼が会社を離れることになり、現在は男性3名体制です。

そのほか、外部の方にスポットで仕事をお願いしています。ミニマムな組織ですが、MAKEYのような「ユーザーに発信してもらうタイプのサービス(以下、CGM)」において、プラットフォーマーの一番の義務は「サービスを見守ること」「半分のっとられた状態にすること」だと思っていて。自社でコンテンツを制作する必要がないぶん、カスタマーサポート(CS)が大きなウエイトを占めてきます。今はエンジニアもCSを兼務してくれていますね。

女性向けコンテンツを作れないからプラットフォーマーに

―― そもそも「10代向けのメイクハウツー」に絞った理由は何なのでしょう?

そうですね。サービスの構想を練っている際に、ITならではの伝達力の強さと好相性の層は何だろう?――そう考えて浮かんだのが、影響力のある10代女性たちでした。ITに彼女たちの口コミ力が掛け合わされると、ものすごい拡散力があるのではと思ったんです。そのときから女性を対象としたサービスを作ろうと決めていました。

とはいえ、作り手の僕たちは男性で、女性が興味関心を持つ情報を熱心にインプットしてきたわけではないため、僕たちが何かを発信するタイプのサービスは難しいのではと。そうなると、やはりCGMで勝負するのが合理的なやり方なのかなと思いました。

「CGM×10代女性」の切り口で考えていると、彼女たちが気になるであろうテーマはファッション(アパレル、コーディネート)や料理、美容あたりではないかと思いました。でも、ファッションだとiQONやWEAR、料理だとクックパッドがあり、僕たちが新規参入して勝てる余地はありません。

美容だと@cosmeがありますが、ユーザーは30代女性が高いボリュームを占めています。10代女性に向けたコスメ・メイクサービスを作れば、僕たちにも可能性はあるのではと思いました。

―― 実際に需要があるかどうかは、かなりの数の女子大生にヒヤリングを行って判断したそうですね

会社設立の8月から2カ月ほどかけて、およそ100人の女子校生・女子大生にヒヤリングしました。主な目的は「10代女性はメイクへの感度が高いのか?」「10代女性は一般人のメイク情報でも興味があるのか?」「10代女性は既存のメイクサービスで満足していないのか?」の3点をリサーチすることです。

この3つの問いでイエスが少なければ、僕たちのサービスは始められません。でも、結果としてイエスが多かった。ほかにも出てきた意見としては、「多くの雑誌は、"ぱっちり二重のモデルさんありき"のメイクなので、奥二重や一重の自分には参考にならない」などがありました。

アプリで十人十色の顔立ちの女性のメイクを掲載すれば、一般人のメイクにも価値が生まれますし、メイクの領域でCGMができると確信に変わりました。その後、2015年1月にMAKEYを正式にリリースしました。

女心は難しい

―― デザインでこだわった点はどんなところでしたか?

UI/UXはヒヤリング内容を踏まえ、男性目線を活かしつつ女性向けのサービスを作っていこうという方針でした。

でも10月にリリースしたβ版では、あまり良い反響を得られず……具体的には、安易にピンクを使うのを避け、当時はクラブを想起させるようなパープルをベースカラーに採用したんです。座談会を開催してヒヤリングをしたり、周りの意見を聞いたところ、「清楚系の女の子だと使いづらい色合いかも」といった声がありました。

結果、イエローかブルー、ホワイトが次の候補として出てきて、肌の色を映えさせることを考え、最初にイエローが選択肢から消えました。ホワイトは悪くなかったものの、10代には大人っぽいかなという印象があり、現在のブルーに落ち着きました。今後、さらにより良いUI/UXを作っていくためにデザイナーさんの採用も行っていきたいと思っています。

―― 見せ方で工夫したのはどんなところですか?

MAKEYは投稿者の女性の顔がずらりと並ぶ仕様になっています。メイクのやり方を説明するために、自身の顔写真を載せるのは避けられません。

でも、顔の好みは個々のユーザーによってまったく異なります。パーツごとに見ると「参考になるかも」という画像があっても、パッと目に入った写真が気に入らないと、心理的な壁を作ってしまうこともある。そのせいで、自分に合ったコンテンツと出会えなくなるのはもったいないと思いました。

そこで、ファーストビューに顔写真だけではなく、メイクに使ったコスメも表示させることで、閲覧者に「このコスメ使ってる!」「このコスメ気になっていた!」など、プラスの気持ちが生まれるような仕組みを作りました。

基礎的なふるまいこそ雑にしてはいけない

―― 今後はどのような展開を考えているのでしょうか

2つあります。1つ目は海外展開に挑戦することです。日本の若い女性たちは、台湾やタイなど東南アジアの同世代の女性たちから憧れられる存在で、現地では日本の女性誌がたくさん売られていると聞きます。MAKEYに掲載されているコンテンツは、彼女たちに必ず響くものになると思います。

2つ目はネイルやヘアなどのコンテンツも追加配信すること。今は、美容師さんたちと水面下で動いています。それらのコンテンツを有料化するか、有料化するならどのタイミングで行うかは目下検討中ですね。

ただ、これまで「CGMだからこそ、よりユーザーファーストで」と考え取り組んできて、その延長として「サービスは無料で提供すべきだ」という思考でしたが、考えが変わりました。尊敬するクックパッド創業者の佐野陽光さんから「ユーザーがお金を払わないサービスこそ、ユーザーのためになっていない」とアドバイスを受け、ハッとしたんです。今は、ユーザーにとって良質なコンテンツを届けるために、有料化しても成り立つくらいしっかりしたサービスを作ろうと思っています。

―― 最後に、起業を目指す方にアドバイスをいただけますか?

学生上がりの起業家に多いと思うのですが、契約締結方法や報連相などは認識していても、実際にはスムーズにアクションできないことがあるのではないでしょうか。たとえば、連絡の仕方一つで契約がパーになることもあります。そこで足元をすくわれるのは、非常にもったいないことだと痛感しています。もしメンターがいるなら、そういった基礎的なことも、恥ずかしがらずに素直に教えてもらう方がよいと思います。

もう一つ。どんな仮説をもって検証してプロダクトを作ろうと、上手くいかないことの方が多いです。重要なのは、今は小さなユーザーでも、デファクト・スタンダードを獲得し続けて、マーケットが大きくなるまで生き残り続ける覚悟だと思います。必ず成功すると僕は信じています。

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インデックス

連載目次
第18回 無駄なプライドはいらない - 知識や経験はビザスクで世界と共有する時代へ
第17回 アナウンサー志望の女子大生が、IT企業のCEO兼エンジニアになるまで
第16回 僕が、学生から"10代の女性向けサービス"で起業家になった理由
第15回 リモートワークで世界の人材不足をなくす - キャスター中川代表
第14回 チャット型サービス「ペコッター」で、"検索"という行動を取りにいく
第13回 学生時代の悔しい想いを原動力に、アオイゼミで学習機会の変革を目指す
第12回 受託からプロダクト開発へ、転換期は社長の先導力が創る - つみき 鈴木代表
第11回 誰もやらない、だからビジネスチャンスになる - スタディスト鈴木代表
第10回 増資ゼロの3年間、守り続けた"モノ作りの心" - レンガ藤井代表
第9回 元コンサル ミューズコー久保代表が考える - 資金調達を成功へ導く鍵
第8回 STYLERがファッション×ITで実現する「人と商品の新たな出会い」
第7回 コミュニティマーケティングで業界に新たな価値を - 京橋ファクトリーの挑戦
第6回 「だから僕は、社員に思考プロセスを開示する」FiNC溝口氏のこだわり
第5回 "良質なコンテンツは有料"が当たり前の時代へ - Synapse田村氏
第4回 「買取のイメージを変えたい」学生起業家が語るヒカカク!誕生秘話
第3回 「とにかく資金が無かった」Voyagin再起への道
第2回 世界のCtoC市場に挑む、革命児BUYMAの正体
第1回 なぜ僕たちはゼロからB⇒Dashを生み出せたのか

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