【連載】

若き起業家たちの夢とその戦略

1 なぜ僕たちはゼロからB⇒Dashを生み出せたのか

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本連載では近年、今までに無いサービスや市場に切り込み、著しい成長を遂げるスタートアップ企業の創業者を取材。会社設立までの道のりやこれまでの軌跡と戦略、そしてこの先に見据える未来を明らかにしていく。

プライベートマーケティングプラットフォーム「B⇒Dash」の開発・提供を行うフロムスクラッチ。2015年6月には、さらなる事業拡大を視野に入れ、C Channelの代表取締役社長 森川亮氏らを新経営陣として招いたほか、弊誌以外のメディアからも多数取材を受ける、まさに業界内外から注目を集める存在だ。 

同社の提供する「B⇒Dash」は、集客から販売促進、顧客管理まで企業のマーケティングプロセスにおける多様なデータを統合し、分析や管理、施策実現までを一気通貫で実現するSaaS型ツール。CMSやDMP、BIなどさまざまなツールを個々に保有するのではなく、包括した1つのソリューションとすることで、最終的なLTVの向上を可能とする。

同サービスにて一躍注目を集めた同社だが、同社のCEOで創業者でもある安部泰洋氏によると、2010年の創業から数年は別の事業を行っていたという。

ミッションから作れば組織は強くなる

――― B⇒Dashがリリースされるまでは、まったく別の事業をされていましたよね。

実は、何を事業にするか決めずに起業しました。B⇒Dash以前はデジタルマーケティングや広告、コンサルティングをやっていましたが、それらをすべて捨て去るという大きな決断をし、今に至ります。その当時、既存事業からの売上がゼロになろうと、B⇒Dashに注力する必要があると考えました。

――― 開発のきっかけとなった問題意識は、何だったのでしょうか。

前職(リンクアンドモチベーション)時代にコンシューマー・インサイトを見ていると、顧客を集める "前後" のところでクライアントが悩みを抱えていることが見えてきました。

ですが、とにかく集客にフォーカスすることで、成り立っているのが昨今の広告ビジネス。たとえば近年、脱毛エステの広告をさまざまところで目にしますよね。「脱毛一回につき数百円」などのように激安メニューをアピールする会社も多い。しかし、初回来店してもらった後、コースを契約して通ってもらわないと、投じた広告予算を回収できない。1万人が初回だけ来店してもペイしないわけです。

しかし、広告代理店がタッチしているのは、集客まで。そのあとは、自社でなんとかしなければならない。クライアントの話を聞いてみると、この状況に当然満足していなかったわけです。一方、クライアント自身も、獲得単価が最も安い施策はどれかという質問には答えられますが、売上が最も多い施策はどれかと聞いても、誰も答えられませんという現状があった。

これらを受けて、マーケティングプロセスにおけるデータを統合し、すべてを可視化できたら――という思いで開発したのがB⇒Dashです。

フロムスクラッチ「B⇒Dash」公式Webサイト イメージ

――― そして、ほかのすべての事業を辞め、ワンプロダクトにコミットしたと。そのほかに、成功要因は何にあったのでしょうか。

組織の強さです。この組織でなければ、B⇒Dashは誕生していなかったかもしれません。

弊社は創業当初から、ミッションドリブンで会社を拡大してきました。一般的に、「(1)事業 (2)組織 (3)ミッション」の順に作り上げていく企業が多いです。これでは、もともと事業にミッションが無いため、拡大できない会社は少なくありません。一方僕たちは、「(1)ミッション (2)組織 (3)事業」の順に作ってきました。

というもの、「どのような問題・課題を解決したくて、会社を作るのか」を真っ先に考えたためです。どうすればオンリーワンで価値の高い会社になれるのか、と。そのためにはミッションに共感してもらう必要がありますよね。ミッションに共感する人間が集まると、力を持った組織が作られ、事業は自然発生的にできていくものだと思っています。

"運動神経の良い組織" が生き延びる

――― 力のある組織/成長する組織の共通項は何だとお考えですか。

生き残る組織とは何なのか、まさに歴史が証明しています。すなわち「変化に対応できるか」ということです。

僕たちは、たとえ過去に売上を作っていた事業をすべて捨ててでも、必要なことをやっていく組織文化を作ってきました。そもそもB⇒Dashは一年前には形もありませんでしたし。

同時に、一年後にプロダクトが変わっていることも、あり得ない話ではない。結論として、「市場のニーズを的確につかみ、変化にすばやく対応できる、運動神経の良い組織であり続けること」が大事だと考えています。

――― では、組織編成はどうなっているのでしょうか。

Aユニット (アカウンティングエグゼクティブ / 営業) と Cユニット (コンサルティング)、Eユニット (エンジニアリング / 開発) の3部門で成り立っています。Aユニットは、僕と経営戦略マネージャーの三浦でマネジメントしているチームです。5人中ほとんどが新卒で、平均年齢は24歳と若いものの、営業力の強さには自信があります。

B⇒Dashは「オールインワン」と「一気通貫」をコンセプトに掲げているので、クライアント企業の全部門を巻き込むプロジェクトになるといっても過言ではありません。それこそ現場社員の方から役員クラスの方まで多くの方と直接お会いして、話を上層部まで進めていく必要があります。

つまり、B⇒Dashは簡単には売れないプロダクトということです。一製品としてできることはたくさんありますが、「これ一つ導入するだけでこんなにお金がかかるの?」と相対的に高価だと見られてしまうこともある。だからこそ、戦略的な営業が欠かせず、人材力が求められるわけです。

そのために、僕自身の営業経験を科学的な視点で分析し、こまかなテクニックやスキームの構築手法、法則などを体系化し、現場に徹底的に落とし込んでいます。経験のわりには相当強い組織だと思います。

大物招聘で組織の成長スピードを上げていく

――― 安部社長も多くの営業経験を積んでこられたようですね。

営業の仕事は大学時代からやっていました。当時から起業しようと決めていて、その下準備として経験を重ねるため15社ほど回りました。

就職活動では14社中13社から内定をもらい、一番小規模ながらも社長が若くて、伸び盛りだった人材ベンチャー企業に新卒入社しました。面接では「毎月、会社の営業記録を更新するので半年後、新規事業をやらせてほしい」という希望を了承してもらい、新規事業や組織づくりも経験したあと、リンクアンドモチベーションに転職しました。

同社は就活時に内定をもらえなかった唯一の企業でした。名だたる会社の内定を辞退するような、優秀な人材が多い企業だったので、ここで勝負してみかった。リンクには2年在籍し、目指していたトップを取った後、会社を起こしたという流れですね。

――― 最後に。森川亮氏のほか、名だたる面々を社外取締役や監査役として招聘されましたが、その目的と今後の展開を教えて下さい。

森川氏に関して申し上げると、経営者仲間から2015年2月頃に紹介され、戦略顧問に就任していただくことになりました。LINEにてビッグデータを取り扱っていた経験をお持ちですし、海外事例にも通じていて、マーケティングのプロフェッショナルでもいらっしゃいます。弊社が今後、セカンドプロダクトやサードプロダクトを生み出していくなかで、森川氏の知見をたくさん頂戴することになるでしょう。

また、成長の時間軸を縮める目的もありました。僕たちは自らの組織づくりの哲学に自信とこだわりを持っていて、現場から叩き上げてきた社員を経営層や幹部層に加えてきました。入社したての中途社員をそのレイヤーに招き入れたことはありません。このやり方を今後も変えるつもりはありません。

とはいえ、森川氏をはじめとする方々と比べると、社員たちは圧倒的に経験値が少ないです。だからこそ、ナレッジや知見のある人々にプロジェクト型として加わってもらい、今後、僕たちに力を貸してほしいと思ったわけです。

この決断が更なる起爆剤となるよう、これからもミッションドリブンで変化に対応できる組織であり続けます。

―――ありがとうございました。

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連載目次
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第13回 学生時代の悔しい想いを原動力に、アオイゼミで学習機会の変革を目指す
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