今年もいよいよ、ちょっぴり憂鬱な梅雨の季節の到来です。そうです。そんな時期こそ、観劇でストレス解消をはかりましょ。観劇というエンタテインメントは、お天気とは関係ありません!

6月は祭日もなく、雨も多く、長期休みもまーったく関係がない、なんとも気の重い月と認識されていますが、ショービジネスの世界では一年でもっとも盛り上がる時期。映画界のアカデミー賞、音楽界のグラミー賞と並ぶ、アメリカ演劇界最大の名誉な賞、「トニー賞」の受賞作品が発表されるのが、毎年6月なのです。ここで受賞した作品が日本に来日するケースも多々。今年の発表は、現地時間の6月13日です。ぜひぜひ、注目してみてくださいね。

NODA・MAP 第15回公演『ザ・キャラクター』 - 宮沢りえが1年4カ月ぶりに女優復帰

野田秀樹率いるNODA・MAPの新作は、またしても話題豊富! 前作『パイパー』の出演以来、出産後、初の女優復帰となる宮沢りえに、舞台に映画に大活躍中の個性派俳優、古田新太のほか、藤井隆、美波、池内博之、チョウソンハ、田中哲司、銀粉蝶、野田、橋爪功といった面々が顔を揃える舞台は、まるでゴージャスな「闇鍋」。振付スタッフに、ダンスカンパニー「BATIK」を主宰する気鋭の振付家・ダンサーの黒田育世も参加している。

1976年にいまや伝説となっている「夢の遊眠社」(1992年解散)結成以来、日本演劇界のトップランナーのひとりとして走り続け、昨年、東京芸術劇場の初代芸術監督に就任した野田が、贅沢な素材をどう料理するか楽しみ! とある町の小さな書道教室を舞台に、物語も、登場人物も、ギリシア神話の『変容』の要素をモチーフに意外な変貌を遂げていくというが、今回も、野田にしか創造できない摩訶不思議な世界観が期待できそうだ。

摩訶不思議な野田ワールドに浸る!

『ザ・キャラクター』
日程 2010年6月20日(日)~8月8日(日)
会場 東京芸術劇場 中ホール(東京・池袋)
作・演出 野田秀樹
振付 黒田育世
キャスト 宮沢りえ、古田新太、藤井隆、美波、池内博之、チョウソンハ、田中哲司、銀粉蝶、野田秀樹、橋爪功
料金 S席9,500円、A席7,500円、サイドシート5,500円 (25歳以下は、劇場チケットサービス窓口でのみ、サイドシート3,000円にて購入可)

『2番目、或いは3番目』 - 繊細な筆致で知られるケラリーノ・サンドロヴィッチが描く「差別とエゴ」

劇作家であり、映画監督であり、ミュージシャン! マルチな才能と絶対的なファンを持つケラリーノ・サンドロヴィッチの書き下ろし新作が『2番目、或いは3番目』。芸能界にも多くのファンを持つ、KERA主宰の「NYLON100℃」は、前身の劇団「健康」の旗揚げから数えると、今年でちょうど25年目を迎える。

この記念すべき年に上演する新作では、KERAがこれまで「面倒臭いことになるのは面倒臭いから」という理由で手をつけてこなかった「差別とエゴ」について扱うという。計算されつくした映像や音楽で緻密に構成していく演出には定評があり、上質な不協和音の楽曲に心地よく身をゆだねるような濃密な世界観がケラ作品の醍醐味だ。上演は、全国を縦断して行われるので、今までケラ・ワールド未体験の方もこの機会にぜひ! 2年ぶりの舞台出演となる小出恵介にも注目したい。

緻密な演出が作り上げる濃密な舞台を堪能して!

NYLON100℃ 35th SESSION『2番目、或いは3番目』
日程 2010年6月21日(月)~7月19日(月・祝)
会場 本多劇場(東京・下北沢) ※地方公演あり
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
キャスト 犬山イヌコ、みのすけ、三宅弘城、峯村リエ、大倉孝二、松永玲子、村岡希美、藤田秀世、長田奈麻、喜安浩平、白石遥、伊与顕二、斉木茉奈/小出恵介、谷村美月、緒川たまき、マギー
料金 6,800円

『夢の痂』 - 重厚なテーマを楽しく、厳しく描く、井上ひさしの真骨頂

4月に亡くなった井上ひさしが遺した、東京裁判三部作の最終章に当たるのが、この『夢の痂』だ。戦後の日本と日本人といった決して軽くはないテーマを、市井の人々の目線で、笑いと音楽をふんだんに盛り込みながら表現していく井上の手腕が存分に発揮された同作は、人間愛にあふれ、心が温かくなる井上らしさにあふれた作品。

新国立劇場「夢の痂」2006年公演より 撮影 谷古宇正彦

舞台は、敗戦直後の昭和22年。第二次大戦中に大本営参謀を務めていた陸軍大佐が、戦争責任をとろうと自殺をはかるも失敗。彼を中心に、東北のとある町で戦後の混乱期を生きる人々を通して、「戦争責任」について問う。

井上ひさしの人間に対する愛情に感涙必至

『夢の痂』
日程 2010年6月3日(木)~20日(日)
会場 新国立劇場 小劇場(東京・初台)
井上ひさし
演出 栗山民也
キャスト 角野卓造、小林隆、福本伸一、石田圭祐、辻萬長、三田和代、藤谷美紀、神野三鈴、熊谷真実
料金 A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk