立ち食いそば激戦区である東京・人形町。すでにこの連載でも何度か登場しているが、今回もチェックしておきたい人形町の名店を紹介したい。「きしめん 寿々木屋」。その名の通り、きしめんをウリにした都内では珍しいお店だ。看板の「きしめん」の「し」が、平べったくて細長いきしめんをイメージしていてなんだかかわいらしい。

「いか天きし」(税込490円)は透明度の高いつゆ仕様

大きないか天に歯ごたえのあるツルツル麺

東京メトロ日比谷線、都営地下鉄浅草線「人形町駅」から歩くこと1分。自動ドアから寿々木屋に入ると、右手が厨房とカウンターテーブルというレイアウトだ。左手にもカウンターテーブルがあり、こちらにはイスがいくつか設置されていた。壁には「名古屋名物 きしめんの由来」として一言書かれた色紙が貼られている。注文は厨房に口頭で、お金も直接支払う。

メニューはたぬきや月見など、オーソドックスなラインナップで数は多くない。また、きしめん以外にもそばで頼むこともできるようだ。厨房のバットに、いか天が並んでいたので、この日は「いか天きし」(税込490円)を注文。水を汲んで待つこと1分くらい。すぐに出てくるのはさすがオフィス街。

きしめんの上にいか天、それにさやえんどうが彩りを添えている。この上なく、シンプルなルックスだ。そして東京の立ち食いではほとんど見られない、この透き通ったつゆが、一段ときしめんの白さを際立たせている。麺はツルツル、モチモチとした歯ざわりで、なかなかのボリューム。つゆも見た目に反して濃い目の味で、かつおの香りも効いている。

「きしめん 寿々木屋」へは人形町駅から徒歩1分

この連載では"立ち食いそば"を紹介してきたが、たまにはきしめんというのもアリなのでは? 名古屋でおいしいきしめんと言えば、JR名古屋駅の在来線・新幹線のホームにある「住よし」を挙げる人も多いと思うが、そんなこだわりの方にもぜひ味わってほしい、東京のきしめんである。

※記事中の情報は2016年5月取材時のもの

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。