神田駅周辺は、東西南北どちらを向いても飲食店だらけだ。仕事の関係で、しばしば神田に立ち寄ることがあるのだが、駅を降りるたびに羨ましく思う。サラリーマンがひとりでふらっと入れるような、それでいてしっかりとお腹にたまる、そんなお店が特に多い印象がある。実にうらやましい。今回のそばは、JR「神田」駅南口を出て、中央通りの交差点手前、「天亀そば」(東京都千代田区)である。

春菊の香り漂う「春菊天そば」(380円)はシンプルながら食べ応えのある一杯

黒くコクのあるつゆにからむ中太そば

間口は狭い。外にはメニューがズラリ、製麺所からのケースが積まれている。取り立てて目立つわけでもなく、明るくもなく。無骨で、まさに男の食堂といった佇まいだ。

のれんをくぐると、すぐ左手に冷水機。左右に立ち食い用のカウンター、4~5人程のスペースだろうか。正面にはカウンター。何種類もの天ぷらが、バットに入れられて並んでいる。平日の14時頃、いわゆる「昼休み」を外すと店内は空いており、相客はひとりのみだった。水をくんで、カウンターで口頭注文。「春菊天そば」(380円)を頼む。

1分ほどで着丼。丼の1/2サイズの春菊天と刻みネギがのっている。揚げ置きなのでアツアツサクサク、とはいかないが、ほおばると春菊独特のいい香りが鼻に抜けていく。つゆは黒い。かつおダシの風味が特に強く感じられ、コクのある味わいになっている。麺は中太で、しっかりとした食べ応えがあり、気づけば夢中になってすすってしまう。

24時間営業の「天亀そば」は

食べ終わる頃にはタクシーの運転手さんが来店。24時間営業の当店は、深夜働く人にとって強い味方なのだろう。

※記事中の情報は2016年4月取材時のもの

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。