東芝ソリューションでは社内SNSが活用されている。どんな効果があり、どんな使い方がされているのか。同社 半導体・液晶エンジニアリング事業部 半導体・液晶エンジニアリング部 参事 星野康久氏に話を聞いた。

会社と距離を超えたプラットフォーム

東芝ソリューション 半導体・液晶エンジニアリング事業部 半導体・液晶エンジニアリング部 参事 星野康久氏

同社事業部の構成員は全体で約300人で、同社社員と協力会社社員は1対1。イントラネットはあるものの、それでは同社社員のみしか情報共有ができない。「双方が使える同じプラットフォームがほしいというニーズがあった」と星野氏は語る。さらに、川崎、大船、横浜、大分、姫路など、構成員の拠点が全国に散らばっているという点もコミュニケーションを難しくしていた。

それらの声を受けて、技術情報の共有とコミュニケーション促進のため、トップダウンで社内SNSの導入が決定した。検討が開始されたのは2008年4月で、オープンしたのは8月だ。5名の運営チームが結成され、星野氏はプロジェクトメンバーリーダーに任命された。

事業部300名の年齢構成比は、30代が中心だ。男女比は9対1で、技術部門の人たちが9割を超える。50代の人たちは、社内SNSを見てはいるがあまり書き込みはしていないという。ヒアリングの機会を設けてみると、「上司の立場として書くのは書きづらい」という人が多かった。星野氏が「上司としてではなく、いち社員の感覚で書いてほしい」とお願いしたところ、事業部長が出張で起きたことなどを書き始めた。星野氏によればトップの書く記事にはコメントが多くつく傾向があるという。「一般の社員はトップとはほとんど接点がないが、社内SNSを利用することでトップにとってもいい情報が入るし、一般社員にも上層部の一面が見えてくるという利点がある」(星野氏)

使いやすく機能面で優れたツール

まず、始めるにあたって星野氏らはツールの選定を行った。一般的に使われているあらゆるSNSツールを調べて、「機能の豊富さ」「コストパフォーマンス」「シェアの高さ」の3つのポイントに絞ってグラフ化し、検討を行った。その結果、ビートコミュニケーションのビートオフィスを選択した。

社内の情報を載せるため、セキュリティ面を強く意識した。サーバは自社に置き、ネットワークは東芝社内LANを利用することにした。社外からのアクセスはできないため、自宅PCや携帯電話からは利用できない。

「このツールは使いやすい。サーバの管理もしやすいしバックアップも簡単」と星野氏は評価する。東芝社内LANを利用できるところであれば、どこからでもアクセスできて利用できる。「必要なことを入れておけば、別の事業所でも自分のページを開いて仕事ができ、オンラインストレージ的な使い方もできる」(星野氏)

この社内SNSのほかに、もともと使われていたグループウェアがあり、スケジュール管理や連絡事項などで今も使われている。ただし、ユーザーの利便性を考えると二度手間となりかねないため、「今後はなるべく社内SNS一本でいきたい」と星野氏は考えている。試みとして、社内連絡用に社内SNS内の「みんなの掲示板」に社内提出日程を載せたりしている。ただし、「業績など社外秘のことは社内イントラネットにしか書けないため、登録者個人が注意して書く必要がある」という。

星野氏のトップページ。mixiなどSNSを利用している人にはなじみのあるインタフェースだが、慣れていない社員にその良さを伝えるには少々時間が要ったという

各地で説明会開催

責任を持った投稿をしてほしいと考えて、社内SNSは全員登録制かつ実名制にした。また、利用規約、運用ルール、プライバシーポリシーを明記した。「自社の従業員だけではないのでセキュリティやコンプライアンスを事前に整える必要性を感じ、運営チームで話し合って決めた」という。社内のセキュリティ制約もあるため、担当者にも入ってもらい、その上で、事業部長に承認をもらって進めていった。

また、導入に当たり、各地で説明会を開いた。「セキュリティは大丈夫か」「業務中に使ってもいいのか」などの質問が出たという。星野氏らは、「SNSを活性化するためには業務中にやらなくていつやるのか。仕事のことも仕事外のことも書いてかまわない、それが後々仕事につながっていくのだから。止める人がいたら私が話し合います」と答えた。

全国での説明会で一番強調したことは、社内SNSをやる意味だ。意味を押さえていなければ浸透もしようがないため、説明には力を入れた。SNS自体を知らない人が思った以上におり、mixiなどのSNSを使っている人は15%しかいなかった。「どういうものかわからない」という声には、「業務の一環なのでログインしてほしい」と訴えた。

最初はみんなが様子見で書き込みが少なかったため、運営チームメンバーが積極的に書いていった。やがて、社外の人たちが日記を書いたりコミュニティを作ったりし始めた。最初に盛り上がったのは日記だ。楽しそうなコメントが徐々に見受けられるようになったのだ。運営チームメンバーらは、日記がアップされたら積極的にコメントをつけるようにした。「一度書き始めると続くものなので、いかに最初に書かせるかが大事」(星野氏)なのである。

「各地にいるメンバーは、一緒に仕事をしていないので、帰属意識や仲間意識が薄めだった。しかし社内SNSなら、同じ趣味ということで意気投合したりすることが多いので、コミュニケーションがとりやすい」(星野氏)

後編では、社内SNSによるコミュニケーション促進の成果や、今後の活用方法への模索についてお届けする。

基本データ

  • 特徴 SNS内検討会で成功
  • 使用製品 ビートオフィス
  • 使用時期 2008年8月
  • 利用者 登録ユーザ数約300名(東芝ソリューション社員と協力会社社員)
  • ファシリテーター あり(5名)
  • 参加方法 全員登録制
  • アクティブ率 全体の約95%がログインしている。そのうち約70%は半月に1回度以上ログインしているアクティブユーザー。日記の投稿率は全体の30%程度