【連載】

急成長するシリコンバレーの注目ベンチャー

3 微細化に向かう車載半導体に注力 - SoCの配線IPコアを提供するArteris

 
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シリコンバレーで巡り合った急成長する注目企業紹介シリーズの最終回は、Campbellに本拠を構えるLSI内部を相互配線で繋げる「Arteris」を紹介したい。同社は、システムLSI(SoC)内部の回路ブロック間を接続する配線ネットワーク(NoC:Network on Chip)のIPコアを開発し、世界中の著名な半導体企業の設計部門へ提供している企業である。

フランスからシリコンバレーへ

図1 Arterisのマーケティング担当副社長であるKurt Shuler氏

Arterisは2003年にフランスで創業した。事業の立ち上げにてこずり時間を要したが、2006年に初めて製品を出荷し、2007年には、同社のNoCが集積されたICのファースト・シリコンができあがった。事業化のめどが立ったので、同年、本社をフランスから米国のシリコンバレーに移し、半導体の本場で勝負に出た。2009年に第2世代品を発表してから顧客数が着実に増加し始めたという。

独自IPコアで配線問題を解決

Arterisのマーケッティング担当副社長であるKurt Shuler氏は「半導体デバイスのプロセス微細化に伴い、配線はますます厄介な問題となっている。配線が細くなると抵抗が増し、配線同士が接近すると互いに干渉する。チップ上に搭載するトランジスタが増えれば配線が増える。これらの問題を解決してくれるのがトポロジーだ。創業者たちは、ネットワーキングの概念をチップ設計にも応用しようとした。トポロジーの鳥瞰図を可視化することで、ArterisのIP『FlexNoC』が最適化された配置配線を自動的に示してくれる」(図2)と述べ、さらにFlexNoCを使うメリットについて「これを使用すれば、これまでのマルチコアSoCデザインで必要とされてきた内部接続ワイヤ数と論理ゲート数を削減できる。これによって、設計フロー後段の配置配線の工程で発生する配線密集を最小化し、配線混雑度が低減しタイミング収束を早期に達成できる。このため、開発期間を短縮でき、より高性能、省面積、低消費電力のSoC開発を実現できるようになる」(同氏)と付け加えた。

なお、タイミング収束(Timing Closure)とは、タイミング制約を満たすための論理合成、配置配線などを行うことを指す。タイミングが収束しない場合、論理合成と配置配線の繰り返し作業が大幅に増え、設計期間が延びてしまう。

図2 ArterisのNoC(Network on Chip)IPコア「FlexNoC」。NoCアーキテクチャーでは、SoCフロアプラン(左)をFlexNoCの最新版「FlexNoC Physical」にインプットすると、自動的に最適な配置配線がアウトプットされ、タイミング収束に要するコストと時間を節約できる (出所:Arteris)

東芝もルネサスもメガチップスもユーザー

現在、同社が公表を許可した顧客名簿には、Samsung Electronics、Texas Instruments(TI)、Qualcomm、LG Electronics、Altera、Freescale Semiconductor(2015年にNXPと合併し、NXPが存続企業となっている)、Rambus、Marvell Technology、Huaweiなど世界の著名企業の名が並ぶほか、日本メーカーでは東芝、ルネサス エレクトロニクス、メガチップスなどが顧客として名を連ねている。

東芝は2011年よりSoC設計にFlexNoCを採用しており、最近も、4Kテレビ用SoC内の接続にFlexNoCを使用したことを公表している。これにより同社はSoC開発プロジェクトの開始からテープアウトまでの期間を記録的な速さで短縮できたという。東芝のライフスタイルソリューション開発センター LSIシステム技術開発部の牧康典部長はArterisの資料にて「ArterisのFlexNoCに内蔵されているFlexExplorerシミュレーション機能を使用することで、非常に短期間で数多くのアーキテクチャとコンフィギュレーションを試すことができた。これで、スピーディにSoCを最適化することができた。バックエンドレイアウトやタイミングの問題で妥協することなく、機能、性能、チップ面積、周波数などすべての要件を満たせた」と述べている。

また、メガチップスも画像処理SoCの設計にFlexNoCを使っている。SoCの動作速度を最速化したにもかかわらず、ゲート規模や消費電力が以前よりもずっと小さくなったという。

これからは車載SoC設計への需要を期待

Shuler氏は、これからは自動車向けSoCがFlexNoCを活用するようになるとみて、車載分野に期待をかけている。「車載SoCで使われる製造プロセスは現段階では、微細化が進んだものでも40nm程度でしかない。今後、車載SoCを高速化・多機能化するために28nmあるいはそれよりも微細化した製造プロセスを使う方向にある。微細化でSoCの回路ブロックが複雑になればなるほどFlexNoCの利点がはっきりする。製造プロセスが28nmよりも微細化した製造プロセスを使うようなSoCでは、FlexNoCの利用は欠かせない」という。現在、Arterisは、車載SoC設計分野で、同社の顧客企業としてルネサス、Freescale(NXP)、TI、そして高度運転支援システム(ADAS)に向けた視覚システムの開発を手掛けている蘭Mobileyeの4社の名前を公表しているが、他社への売り込みにも継続して力を入れているという。

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インデックス

連載目次
第3回 微細化に向かう車載半導体に注力 - SoCの配線IPコアを提供するArteris
第2回 どんなモノでもネットに接続-IoT時代の新ビジネスを提供するAyla Networks
第1回 USB Type-Cへの接続を1チップ化 - スマホとテレビをつなぐAnalogix
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