2回目となる今回紹介するのは、"ネットワーキング"を売り物にしているシリコンバレーのベンチャーで、顧客が希望するどんなモノでもインターネットにつなげることを売りにIoT時代に急成長を遂げる「Ayla Networks」を紹介したい。

IoT時代を先取りした新サービス

PCをインターネットにつなげることを生業としているPCメーカーはいまや世界中で数社にしぼられてきており、スマートフォン(スマホ)も似たような状況になりつつある。しかし、IoT時代を向かえて、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、掃除機、給湯機、ヒ―タ―、火災報知機、照明器具などのモノをインターネットにつなげたいと思っている企業は世界に1万社以上もある(図1)。

しかし、白物家電メーカーやオフィス機器メーカーには、PCやスマホメーカーとは異なり、ネットワーク接続技術に長けた技術力が備わっていない場合が多い。こうした多数の企業へネットワーク接続技術を提供し、接続した機器からデータを収集し、データ解析結果を顧客企業に提供する新サービスがシリコンバレーで注目されている。住宅やオフィスのさまざまな機器をネットワークに接続するプラットフォーム事業を手掛ける、Sunnyvaleに本拠を構える設立5年目の新興ベンチャー「Ayla Networks」だ。

地元の複数のベンチャーキャピタルやCisco Systemsから総額2000万ドルの資金を得て、世界規模でのビジネス展開を始めている。

図1 PCやスマホをインターネットに繋げるメーカーに比べて、モノをインターネットにつなげたいと思っているメーカーは桁違いに多く、ここにビジネスチャンスがある (出所:Ayla Networks)

Aylaは、図2に示すようなクラウドベースの独自のプラットフォーム「Ayla PaaS」を中心にエコシステムを形成している。これを武器に、顧客から依頼されたどんなモノでもインターネットにつないで、膨大なデータを収集し、そのデータを解析し、見やすい形で顧客にフィードバックし、消費者の行動を瞬時に見える化することで、さらなるサービス向上や新製品開発を支援する(図3)。インターネットにつなげるために必要な半導体・電子部品は、BroadcomやQualcomm、NXP Semiconductor、STMicroelectronics、村田製作所、Marvell Technology、MediaTekなどから調達している。

図2 Aylaのプラットフォームとエコシステム

図3 Aylaのデータ収集・解析・可視化・フィードバックサービスの流れ。接続した機器から集まるデータを収集し、データ解析し、顧客に役立つ情報を提供するサービスとなっている

図4 AylaのChief Executive OfficerであるDavid Friedman氏

AylaのChief Executive OfficerであるDavid Friedman氏(図4)は、「IoTでは、モノをネットにつないだり、データを集めるだけでは意味がない。ビッグデータを解析し、結果を見やすい形に可視化することで付加価値が生まれる。Aylaのサービスを利用すれば、顧客はデータ収集・解析チームを雇う必要がなく、市場へアクセスする時間(Time to market)を節約できる」とデータ解析の重要性を強調する。

同社は、この1年で20数名だった社員を100名以上に増やし、シリコンバレーの本社のほかに欧州と中国にオフィスを開設するほどに急成長している。顧客も50社を超え100社に迫る勢いだという。「中国には、多様な機器メーカーがあり、ネットワーク接続に意欲的なので、今後は中国向けビジネスを重点的に展開していく」とFriedman氏は、中国重視の姿勢を強調しており、今後はアジアを重点的に攻めていくとしている。