【連載】

古田雄介の主観的ショールーム見学

5 子供の頃感じたワクワクが、東芝科学館にはある(後編)

    古田雄介  [2008/10/28]

    2回編成にする予定だったのに、あまりの展示物の多さに3回編成にしてしまった東芝科学館レポート。それくらい奥深かったのだから仕方ないのだ。というわけで、今回は最上階の3階をレポートしたい。フロアテーマは「半導体・医療・歴史」だ。どうぞ、最後までお付き合いください。

    半導体も5万Wランプも、先祖は白熱電球だっ!

    2階の「ユビキタスワールド」でSSDラブに目覚めたまま、3階の半導体コーナーに足を踏み入れる。そこには、歴史から現在のバリエーション、仕組みに至るまで、半導体のすべてが集約されていた。「よく分かる! 半導体」という本を丸々展開したような部屋だ!

    半導体の歴史は真空管、ひいては白熱電球の技術にまでさかのぼる。エジソンが白熱ランプを発明したのが1879年。それから約130年の年月は、情報処理に活用できる真空管を生み、さらなる技術革新で半導体を生んだわけだ。この部屋に数分いただけで、僕の中のエジソンの株が2倍くらい跳ね上がった。

    半導体コーナー。奥の棚にズラリと並ぶ「真空管と半導体の歴史」は圧巻だ

    国内初の真空管を製造した東芝は、現在も半導体の国内トップメーカーであり続けている。その作品群をこれでもかと見せつけてくる。ほ、欲しい!

    さて、当然ながら白熱電球は半導体だけに進化したわけではない。現在も普通に照明として使われているのだ。直系ともいえる現在の照明ランプのハイエンドはどんな姿をしているのだろう。

    その答えが、「あかりの部屋」コーナーにある「マンモスランプと粟粒ランプ」だ。これは5万Wのマンモスランプと、0.11Wの粟粒ランプの明かりを見比べるというコーナーで、3階きっての人気スポットとなっている。

    マンモスランプと粟粒ランプが点灯しているところ。マンモスランプは、映画の太陽として使われた実績もあるそうだ

    アテンダントさんがスイッチを入れると、ジーという音とともに2つのランプが点灯を始め、すぐに明るすぎて正視できないほどの光量となった。光が"うるさい"と感じるのは、なかなかない体験だ。

    それでも、マンモスランプの光量はフルパワーの6分の1程度に抑えているという。なんか、マンガのラスボス的な余裕っぷりである。一方の粟粒ランプは完全に存在感がなくなっているが、彼は彼で、胃カメラの照明に使われるなど、極小の世界で大活躍しているという。

    必見すぎる「東芝一号機ものがたり」

    半導体の歴史の重みを十分に堪能したが、その隣には、秘かに一番楽しみにしていた「東芝一号機ものがたり」という部屋がある。名前のとおり、各ジャンルの東芝初モデルを展示するコーナーだが、創業130余年を数える企業だけあって、家電製品の初号機は19世紀のものもあり、時間密度が非常に濃い。わずか数十歩の長さの部屋に、文明開化後から戦前戦後、現在までの生活史そのものが置かれているのだ。

    しかも、なかには現在も稼働する製品まである。1928年(昭和3年)に作られた扇風機は、スイッチを入れてから徐々に回転速度を上げ、首を振りながら十分な風を送ってくれた。

    3階の一番奥にある部屋が「東芝一号機ものがたり」だ

    日本初の扇風機(1894年)。頭に白熱電球が付いており、送風と同時に照明としても機能するという、当時としては画期的な工夫がなされていた

    1930年には、国内初の電気洗濯機「ソーラーA型」を発売した。上に付いたローラーも自動で回る仕組みで、脱水も楽に行える

    1979年に発売した世界初の日本語ワープロ「TOSWORD JW-10」。当時のサイズは机そのものだった。なお、引き出し部分にあるのは、8インチFDD

    製品ごとに時代背景を想像していると、この部屋だけで軽く2時間は遊べてしまう。急ぎ足で回った取材時でも30分かかり、泣く泣く後にしたほどだ。

    創業者の部屋。ちなみに、東芝の新入社員は、皆研修で東芝科学館を訪れるそうだ

    隣には「創業者の部屋」がある。東芝創業者は、からくり細工で有名な田中久重と、電気の天才と呼ばれた藤岡市助の両名。それぞれの作品が並ぶ興味深いコーナーだったが、一番の見所は、やはり田中久重作の万年時計(レプリカ)だろう。江戸時代に作られた最高傑作の時計といわれ、現在も正確に時を刻んでいるそうだ。

    途中で疲れたら、豚生姜焼ランチで空腹を満たせ!!

    東芝科学館に来る人の滞在時間について、館長附の荘司氏は「多くの方は1時間から1時間半です」と語った。……が、それはちょっともったいなさ過ぎではないだろうか。これだけ密度が濃い展示機や体験コーナーがあったら、全部網羅するには、脳を5GHzくらいにオーバークロックしても2~3時間はかかるはずだ。いままで紹介してきたもの以外に多数の展示品があるほか、定期的に科学の実験ショーなども開催しているのだから。

    正直、ゆっくり&じっくり楽しむなら、丸1日滞在するのが妥当と思えるくらいだ。ただし、そうなると、食事の問題が出てくる。東芝科学館は駅から離れているので、周囲に飲食店を見つけるのは難しい。

    コーヒーショップの人気メニュー「豚生姜焼ランチ」。600円で、食後のコーヒーも付いてくる。厚い豚肉が2枚並び、ボリュームは十分にあった

    しかし、ご安心あれ。1階には20席のスペースを持つコーヒーショップが用意されているのだ。昭和の香りがする古き良きレイアウトに加え、料理の味とコストパフォーマンスは上々だ。食後のコーヒーをすすりながら、エジソンや戦後の日本の生活などに思いを馳せるのも趣き深い。

    科学好きなら、川崎駅周辺に来たとき、一度は立ち寄ってみよう。絶対にその価値はある!

    ショールーム情報
    ■名称:東芝科学館
    ■受付時間:9:00~16:45
    ■休館日:日曜日、祝日
    ■入館料:無料
    ■住所:神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地(東芝研究開発センター内)
    ■URL:http://kagakukan.toshiba.co.jp/

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