企業がサーバ利用目的を決めた場合、まず最初に考える点は、サーバマシンの購入費用とメンテナンスについてではないだろうか。
「NEC得選街」では企業、SOHO向けのサーバ/PCを購入できる |
サーバを使えば顧客管理や業務に活用できることはわかっていても、購入費用や維持費用を予想以上に必要とするのでは、「効率の良さを求めたサーバ導入」「業務を円滑にするためのサーバ活用」にはならなくなる。
社内にコンピュータに詳しい人間がいるのなら助言や参考意見を求めることもできるが、そうでない場合はその点をじっくり考えてサーバマシンを選択したい。第2回となる今回は、サーバ購入にあたって「サーバマシンの選択」のポイントを考えてみよう。また、実際にNECが運営するSOHO・企業向けショッピングサイト『NEC得選街』を例に、サーバ構成を選択してみたい。
サーバを購入する前に考えること
まずは、どのようなタイプのサーバを購入するのか考えてみよう。
サーバ本体の価格はパフォーマンスや仕様等から大きく変わる。高価なサーバを買えば機能も豊富で性能も高い。これはカタログのスペックを読んでみればわかるだろう。しかし、サーバを購入する際は、サーバの機能だけでなく業務の発展も考慮した選択が必要になる。
近い将来に業務の規模が大幅に拡大し、サーバへの負荷が大きくなる可能性が高い場合、あらかじめそれに見合ったパフォーマンスを持つマシンを購入しておく。
サーバ導入が初めて(実際に運用してみないと効果が判断できない)なので、最初からサーバを「フルに活用する」のではなく「IT環境を導入してみる」ということを意識して使ってみる。運用してみて不足している機能は、その都度増設していく。
以上のような二つの考え方がある。
どちらも間違いではないが、予算内で収まるのであれば、想定している機能(性能)よりもランクが上の製品を購入しておくほうが、後々の増設・拡張の手間が省かれてよいのではないだろうか。
サーバ本体を購入する際のポイント
サーバ本体の価格は、CPUの種類とCPU増設数を中心に決定される。この部分は、サーバ仕様で変更できない部分であり、システムの能力や価格に大きな影響を与える。二次的に検討されることの多いものは、「冗長機能の有無」「最大メモリ容量」「管理機能の有無」等である。これらも本体価格に影響を与える。
予算にこだわらないのであれば多くの機能を備えたものを購入すればよいが、一般の会社ではそういうわけにもいかない。業務に必要となる機能の優先順位を決め、最適な選択を行なうことが必要である。
サーバマシンのメーカーは? タイプは?
小規模企業の場合はメーカー直販サイト(法人向けサイト)で購入することが一般的。サポートも安心でき、見積書や請求書、納品書の発行が簡単に行えるのもよい。本連載で利用予定のNEC製サーバも『NEC得選街』に掲載されている(購入したマシンのスペックは記事の最後に記載)。初めてのサーバ導入であればサポートがしっかりしたショップから購入したい。
メーカー選択
価格が同程度であれば、各メーカーのサーバに大きな性能差はないといわれている(製品の傾向・特色はある)。メーカー製サーバと周辺機器の相性問題でのトラブルは少ない傾向にあり、多くの企業がメーカー製のサーバを導入している。運用するにあたり、トラブルが少ないことが導入する大きな条件になっているからだろう。2種類のサーバタイプ
棚(ラック)に平積みにする「ラックマウント型」とデスクトップ型パソコンをひと回り大きくした「タワー型」が代表的なサーバタイプ。
中小規模の企業の場合は、設置スペースの少ないタワー型がよいかもしれない。この連載では「タワー型」で話を進めていく。
ラックマウント型
「JIS」や「EIA」によって規格化された幅19インチの棚に収まるように設計されたコンピュータを、必要な台数棚(ラック)に積み重ねて利用する形態。規模の大きめのシステムの一部として利用する。温度管理されたサーバルームで稼動することを前提としている。音・熱・電磁波が発生するため対策が必要。タワー型
デスクトップパソコンに似た縦長の筐体を持つ据え置き型コンピュータ(筐体はかなりの重量がある)。「ラックマウント型」に比べて設置スペースが少なくて済む。人間の近くで使われることを想定しているため、音・熱・電磁波対策がなされている。タワー型はネットワークサーバに多く利用されている。
サーバタイプ | 特徴 | 用途 | 利点 | 欠点 |
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ラックマウント型 | 「JIS」や「EIA」によって規格化された幅19インチの棚に収まるように設計されたコンピュータを、必要な台数棚(ラック)に積み重ねて利用する形態 | 規模の大きめのシステムの一部として利用する | 規格が統一されている。システム拡張が容易 | 騒音・熱が発生するため、温度管理されたサーバルームでの稼動を前提としている |
タワー型 | デスクトップパソコンに似た縦長の筐体を持つ据え置き型コンピュータ(筐体はかなりの重量がある) | ネットワークサーバに多く利用されている | 設置スペースが少なくて済む。人間の近くで使われることを想定しているため、音・熱・電磁波対策がなされている | 業務拡張(増加)によってサーバの数が増えると設置面積も増加する |
サーバ構成で押さえておきたい基礎項目
以下、サーバ購入時に確認しておきたい(知っておくべき)基礎的項目を挙げる。サーバシステムの基本で、導入後に変更できいない部分もある。必要な機能を考慮して購入したい。
サーバOS
「Linux」「Free BSD」等のサーバ用OSがあるが、現在のサーバOSのデファクトは「Windows Server」である。ユーザーインタフェースが「Windows XP」と似ているので違和感なく使えるのも支持される大きな理由だろう。100人以下の中小企業で最も使われているのは「Windows 2000 Server」、続いて「Windows Server 2003」「Windows NT Server」という調査結果が出ている(インターネットコム・JR東海エクスプレスリサーチ調査:2007年3月)。2008年2月現在では、「Windows Server 2003」が主な選択肢となるだろう。CPU
サーバ向けCPUとしてIntel製「Xeon(ジーオン)」「Xeon MP」ブランドがある(「Pentium」(ペンティアム) や「Celeron」(セレロン)ブランドはパソコン向け)。パソコン向けCPUとの最大の違いは「マルチプロセッサシステム」への対応である。1台のコンピュータにCPUが2個搭載されているものを「デュアルプロセッサ」、3個以上搭載されている場合は「マルチプロセッサ(※)」という。
※マルチプロセッサとは、複数のCPUに処理を分散させて総体としての処理の高速化を図るもの。
メモリ
最低でも1GB以上を搭載することが望ましい。それ以上のメモリを搭載できるサーバもあるが、処理性能向上の必要性を感じたら増やすという考え方でもよいだろう。ハードディスク
必要なファイルを格納する記憶装置(※)。使用するほどにデータは増加していく。将来予想される容量を準備しておく必要がある(冗長化機能は実質使える容量が減るので注意)。また、コンピュータの構成部品の中でもディスクは壊れやすい部分なので、障害時にサーバを停止せずにディスク交換可能なホットプラグ(ホットスワップ)対応のものにするとよい。
※サーバに搭載されているハードディスクは(インタフェースの違いにより)「SATA(SerialATA)」タイプと「SAS(Serial Attached SCSI)」タイプ(「SCSI」の後継)にわかれる。スペック/信頼性/価格に違いがあるので、サーバを選択する際には利用目的・用途に応じた選択が必要となる。
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サポート
特に初めてサーバを導入する場合や操作・設定に不安がある場合にサポートの有無は重要になる。一般にサーバ購入時にはサポートサービスの利用有無を選択するが、必ず利用するようにしたい。
※サーバの場合は出張修理が基本となる。
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バックアップ装置
これも必ず必要なものなので、サーバ購入時に揃えておくとよい(オプションで購入することも可能)。バックアップ媒体に関しては「DAT」「DDS」「LTO」「DLT」などがある。
※バックアップについては今後の連載で詳しく説明する。
個別に書けばまだ深い内容になるが、基本となるサーバマシンに必要なスペックについて、最低限の知識を紹介した。現在は「オールインサーバー」と呼ばれる「WWWサーバー」「メールサーバ」等のインターネット接続に必要な各種ソフトを集めてパッケージ化されて販売されているものもある。
初めてのサーバ導入の際は(活用度が明瞭でない場合には出費を抑えることになる)オールインサーバを導入するとよいかもしれない。
オススメの自社サーバは?
以上を踏まえ、実際に『NEC得選街』でタワー型サーバを購入した。選択した機種は、低価格帯のサーバとして人気を博している『Express5800/110Gd』。本連載が対象とする小規模事業者のオフィスや業務規模であれば、十分に利用できるだろう。
Express5800/110Gdの価格は14,700円(2月7日現在のキャンペーン価格、税込み)からで、CPU/HDD/OSの有無など必要に応じてカスタマイズできるのが魅力だ。サーバを導入する際は、このカスタマイズの自由さも大きな機種選択条件のひとつとなる。メンテナンス(保守サービス)は、対応スピードや内容に応じて各種パックが用意されているが、今回は標準保証を選択。標準とはいえ、3年保証付きで翌営業日対応なので、とりあえず初心者には安心できるコースだろう(途中で別の保守パックに乗り換える場合、保証期間は標準保証の開始日から起算)。
本連載では今後、表2に示すように、OSにWindows Server 2003 R2 Standard Editionを導入したサーバを前提に各種セッティングについて紹介していくことにする。
表2 「NEC得選街」で購入した「Express5800/110Gd」の構成セレクション | 構成例 |
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CPU | Celeron D(2.93GHz) |
メモリ | 1GB |
HDD | 80GB |
OS | Windows Server 2003 R2 Standard Edition |
バックアップ | 内蔵DVD-ROM(標準実装) |
バックアップソフト | Backup Exec 11d for Windows Servers |
PCIスロット | なし |
UPS | なし |
ディスプレイ | なし(必要に応じて) |
外部デバイス | なし |
ハードウェアオンサイト保守サービスパック | 標準保証のみ |
保証 | 3年間標準保証 |
上記の構成で合計金額は税込みで249,480円(2月7日現在)。バックアップソフトをオプションで購入したが、OS標準のものを使うのであれば不要だ。その場合、10万円以下の構成になる。本連載は上記のような構成で始め、必要に応じてバックアップ装置や無停電電源装置を追加していく予定だ。
次回は、サーバの設置方法について考えてみたい。
文|デジカル/松井秀喜