今回は、文京区千駄木の「ふくの湯」を紹介したい。東京メトロ南北線「本駒込」駅から徒歩5~6分のところ。住所の通り、千代田線の「千駄木」駅からも徒歩圏内だ。2011年12月にリニューアルした、俗に言う「デザイナーズ銭湯」のひとつで、木で組み上げられた玄関口はその「ふくの湯」の文字がなければ銭湯とは気づかない。建築家・今井健太郎氏の設計によるものであり、同氏が手がけられた銭湯はこの連載でも既に「文化浴泉」や「万年湯」を取り上げた。

「ふくの湯」へは東京メトロ南北線「本駒込」駅から徒歩5~6分

湯気のような字にレトロなデザインのロッカー

白く短いのれんには家紋のようなものが染められている。よく観察すると、ひらがなの「ふ」が湯気のように立ち昇っているようなデザインに見える。「ふくの湯」の「ふ」だろうか、洒落ている。入り口は階段を上がった先の2階だが、自動昇降するリフト付でバリアフリー対策もバッチリ。入るとすぐ目の前がフロントで、右手下足箱の脇に券売機があるのでこちらで入浴料を支払う。

ロビーと呼べるほどのサイズではないが、座るところが少しとテレビ、ドリンクケースが入って左手側に備えられている。男女の湯は週替りとのことで、この日は男湯が左、女湯が右だった。左は「大黒天の湯」、右は「弁財天の湯」という名が付けられているらしい。

脱衣所には両側に木製のロッカーが。扉には「いろは」や「漢数字」がふられており、レトロな雰囲気が演出されている。中央には畳張りの腰掛け。ほか、体重計や洗面台。自販機にはジュース類やビールが売られていた。天井から吊り下がる六角形の格子に提灯型の灯りが取り付けられていて、やわらかい光を放っている。

赤富士に松に七福神の壁絵も

左「大黒天の湯」のイメージ(S=シャワー)

訪問したのは日曜日、昼の12時頃。ふくの湯は平日も11時から営業しているが、週末になると8時から営業しており、昼時なども特ににぎわうようだった。相客は7~8人ほどだった。

浴室内もカランや壁絵などが部分的にライトアップされるなど、間接照明がふんだんに生かされている。正面には中島絵師による赤富士、さらにその下にはまるで金屏風のような松の木のモザイクタイル画が。境目側にはグラフィティペインティングアーティストのGravityfreeによる七福神の鮮やかな壁絵。まさにレトロとモダンの融合、縁起物のお祭り状態である。

浴槽は奥側にひとつだけだが、湯温は42度くらいで入りやすい。浴槽内に段差がある浅風呂になっているので半身浴も可能だ。カランにはボディソープ、リンスインシャンプーあり。

名前から外観、内装に至るまでこだわり抜かれたこの銭湯。余談だが、筆者は親子3人で訪問した。早い時間からの営業、それに非日常感たっぷりのお風呂は、子連れのお出かけスポットにもピッタリ。妻によると、右側の「弁財天の湯」には壺湯があるとか。また銭湯に行く楽しみが増えた。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。