今回も紹介するのは、この12月にリニューアルオープンした銭湯だ。閉める銭湯あれば生まれ変わる銭湯あり。この連載では、そんな元気のいい銭湯を積極的に取り上げることにしていきたい。

「大蔵湯」へはJR横浜線の「古淵」駅からは徒歩15分ほど

都心からは遠目の散歩

名前は「大蔵湯」。場所は町田市。最寄り駅はJR横浜線の「古淵」駅。駅からは徒歩15~6分はかかったと思う。これが示すように、決して都心からのアクセスは良くないが(都心にある自宅からは往復で3時間くらいかかった)、少し遠目の散歩と割り切って向かってみる価値のある銭湯である。

外観は写真の通り、こげ茶色で木造風のシックな風体。以前紹介した大久保の「万年湯」(東京都新宿区)に似ていると思う人もいるだろう。同じ建築家の方がデザインしたと聞いている。

新装開店でも柱時計は昔のまま

のれん奥の戸には「わ」板が吊り下がる。営業中を示す合図だ。入って左手に板鍵の下足箱。訪問したのはリニューアルから3日後。まだ板鍵も真新しく、削りカスが溝に残っていたのが印象的だ。さらに引き戸を開けて、正面にフロント。右手には5~6人が座れるテレビ付きのロビー。新装開店を祝う蘭が飾られていた。男湯は左、女湯は右に進む。

ロッカーは漢数字が書かれたものが3面分ほど。うち1面は縦長タイプと貸しロッカーになっている。床は畳張り、境目には鏡とドライヤーがある。keihoku製のはかり、身長計、背側に座るところが少しと、小さなテレビが置かれており、こちらから庭を見ることもできる。ほか、お椀型のようになった洗面台、自販機、昔ながらの柱時計など。

格天井は張り直されており、所々に雲形の模様が。さらに、ぼんぼり型の照明がつり下がっている。今回のリニューアルで開店時間が早まり、まだ常連さんに周知されていないのか、15時時点では相客はひとりだった。

静かにのんびりと湯を味わう

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴槽はシンプルに、大きな浅風呂、小さな浅風呂、それにサウナ(別料金)と水風呂だ。正面には黄色の細かいタイルで描かれたモザイク状の富士山。壁や天井は外観と同じく、板張り風になっており、どこか温泉宿のような雰囲気も感じる。

湯道具置きが入口脇すぐのところにあり、荷物でカランの場所取りをしないよう注意書きがある。ボディソープ、リンスインシャンプーあり。ケロリン桶。シャワーは手元ダイヤル式。お湯は軟水。

大蔵湯の一番の特徴は、どこの銭湯でも見かけるようなジェットバスを一切しようしていないこと。このため、とても静かで落ち着いてのんびりとした入浴ができる。お風呂本来の気持ち良さをあらためて実感できる、素晴らしい仕掛けだと思う。

大蔵湯はリニューアル前にも一度訪問したことがあるが、今回のリニューアルで全くの別人のようになった。町田市は広いが、実は銭湯(スーパー銭湯は除く)は2軒しかない。それでもこの銭湯に日々ふらりと通える地元の人がうらやましい。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。