日本の銭湯には、かつて「三助」と呼ばれた職業があった。ここでは詳しい解説は避けるが、浴室内で客の"垢かき"を行うなどの「流し」をしていた。昔は珍しくはない仕事だったが、そんな時代も今は昔……とはいえ「三助」という職業が消えたのは、実は2013年末。最後の三助さんになった橘秀雪さんは、今回紹介する荒川区日暮里の「日暮里 斉藤湯」で働いていた。JR山手線「日暮里」駅東口から徒歩4~5分の銭湯である。

「日暮里 斉藤湯」へはJR山手線「日暮里」駅東口から徒歩4~5分

2015年春にリニューアルオープン

橘さんの引退から間もなくして、斉藤湯は全面リニューアル工事に入った。営業を再開したのは2015年春。あれからもう1年半。都内屈指の人気銭湯として、多くのメディアでも紹介されている。

スロープ付きの入口には、かわいらしい筆文字で書かれた屋号の暖簾が下がる。よく見れば、銭湯の開店閉店を示す「わ板」もぶら下がっていた。自動ドアから入って両側が下足箱。右手側にフロントカウンター。左手に券売機。正面には腰掛け、その向こうに脱衣所の入口がある。

ロビーには、有名人のサイン色紙がずらっと並ぶ。何人かのお客は腰を下ろして生ビールを楽しんでいた。この銭湯のウリのひとつだが、さらにこちらフロントでは、お米の販売まで。「宮内庁献上米」に選ばれたこともあるおいしいお米なんだとか。男湯は左、女湯は右に進む。

脱衣所のロッカーは100円玉返却式。中央には腰掛けとテーブル。境目は鏡と自販機。浴室側に鏡台のドライヤー。L字に組まれた小さいソファが壁側に設置されている。はかりはHOKUTOW製で、「わ板」しかり、昔のもので使えるものはそのまま残しているといった具合だろうか。平日の16時過ぎの訪問で、相客は7~8人くらいだった。

白空間に小さな富士山

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室内は白で統一。それが、間接照明で所々照らされており、明るすぎず暗すぎず、絶妙なリラックス空間に。イスと洗面器は各々のカランにセット済み。ボディソープとリンスインシャンプーも備え付けがある。立ちシャワーは大口径で、頭の真上から降り注ぐレインシャワータイプ。

ペンキ絵はないが、カランの壁裏に、富士山の小さいモザイクタイル画がある。湯は、各種ジェットバスや炭酸泉、細かい気泡のシルキーバスの露天風呂、さらに水風呂と少し熱めの深風呂と豊富なラインナップ。湯は42~43度くらいだろうか、ぬるめで入りやすい。

炭酸泉やシルキーバスでじっくりと

炭酸泉やシルキーバスは他よりやや水温が低く、長湯でじっくり楽しめる。ジェットバスは他の銭湯に比べると微弱。大人には物足りないかもしれないが、湯の温度も含めて子どもにもぴったり。はじめての子連れ銭湯にも安心の、清潔感あふれる銭湯だ。

ちなみに荒川区の銭湯では12月18日まで、オリジナル缶バッジがもらえるスタンプラリーを実施している。個性的で味わい深い荒川銭湯を、この機会に訪れてみてはどうだろう。

※記事中の情報は2016年11月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。