中国半導体の台頭により新たな好機が生まれる

世界の半導体産業は成長を維持し続けており、中国も例外ではない。世界最大の半導体市場として、中国は「国家IC産業発展推進綱要」の発表以来、積極的に国内のIC製造能力強化体制を構築してきた。さらに、「国家IC産業投資基金」の設立により、国内ICサプライチェーンをきちんと整備するための投資が相次いでいる。

半導体業界アナリストのDawn Guo氏 (画像提供:TrendForce/DRAM eXchange)

TrendForceの半導体業界アナリストであるDawn Guo氏は、「中国のIC業界は、3年間にわたる的を絞った集中的な努力の結果、大きな進歩を遂げた。国内のサプライチェーンの基盤が整い、半導体業界全体の構造が構築され、今後も改善され続けるだろう。さらに、メモリチップ、化合物半導体、およびAI、IoTなどのアプリケーションに取り組むことで、業界クラスタが全国各地に形成され、それにつれて市場環境は明るくなっている」と述べた。

また、「中国の多くのウェハ工場は、2018年に大量生産を始める予定である。特定IC市場に特化した新しく設立された多くの国内ファブレス企業の操業開始と時期を同じくしている。中国のICサプライヤの台頭により、CMOSイメージセンサ、ドライバIC、メモリ、パワー半導体、MEMS、化合物半導体などの市場が開拓されるだろう。中国企業がこれらのアプリケーション市場で進歩を遂げるにつれて、材料供給業者や製造装置供給業者を含むサプライチェーン上流側の企業も利益を得るようになるだろう」とGuo氏は市場の動きを説明した。

有機ELブーム到来のディスプレイ業界

WitsViewバイスプレジデントのEric Chiou氏 (画像提供:TrendForce/DRAM eXchange)

大型パネル市場は、2016年第3四半期から2017年第2四半期にかけて売り手市場だった。しかし、2017年第3四半期から供給が需要を上回り、価格が下落する傾向にある。

TrendForceのディスプレイ調査部門であるWitsViewのバイスプレジデントを務めるEric Chiou氏は「最近のディスプレイ技術の流れとして、ソニーなどの主要テレビブランドがハイエンド製品で有機EL(OLED)を採用したことから、今年はテレビ市場での有機ELの成長が大きい」と述べる。同氏の見立てでは、有機ELテレビはハイエンド市場で圧倒的な地位を占めるとされており、WitsViewとしても有機ELテレビの世界出荷台数は2017年の150万台から2018年には240万台に増加するとしている。

また、スマートフォン市場における有機ELの普及率については2017年の28%から2018年には33%へと増加するとしているほか、18:9のアスペクト比がスマートフォン市場で広く普及する時期に入るとも予想している。Chiou氏の予測によると、18:9のスクリーンを搭載した機種は、2017年のスマートフォン出荷数の9.6%程度のシェアであるが、2018年には急速に普及が進み、そのシェアは全世界出荷台数の約36.2%に達するとしている。こうした背景として、「スクリーン対ボディ比率の増加は、ハイエンドおよびミッドレンジの市場セグメントだけでなく、エントリレベルのデバイスの市場セグメントにおいても大きなトレンドになるだろう」と同氏は予測の背景にある市場の動きを説明している。

AppleはマイクロLEDを有機ELのライバルとして推進

有機ELディスプレイはプレミアム・スマートフォンに必須となっている。しかし、現在、その生産能力は限られており、Samsungが市場のほとんどを独占しているため、Appleは、代替品ならびにSamsungの競争相手として別のディスプレイ技術を開発することを余儀なくされている。こうした背景から、TrendForceのLED研究部門であるLEDInsideの調査ディレクターであるRoger Chu氏は、「AppleはマイクロLEDを次世代ディスプレイ技術として開発中である」と述べている。ただし、「Appleの参入により、投資と買収を通じてマイクロLED市場に参入する国際的な大企業が増えている。しかし、マイクロLEDディスプレイの量産は技術的障壁が高い。 LED、パネル、半導体の3つの主要分野の各企業は、製造上の課題を克服するために協力しあう必要があろう」とも指摘している。

次回は11月16日に掲載です