以前、ロンドンの世界遺産を紹介した。ロンドンは、楽しい街である。世界中から人や物が集まる都市だけあって、欲しい物は何でも揃うし、見たい物はたいてい見れる。だが、いかんせん物価が高い。ミネラルウォーター1本買っても300円ぐらい、ロンドンの地下鉄は一区間800円ぐらいする。僕はヘビースモーカーであるが、20本入りのタバコ一箱が約1,200円と、タバコもおちおち吸えない。ホテルだって日本のビジネスホテルみたいな所ですら、1万円以上かかる。だから、旅行に行くのも躊躇してしまう。

ロンドンといえば、ビックベン。でも、たったこれだけを見に行くにも、地下鉄は一区間で800円以上。市街地を一日乗り放題のトラベルパスも1,400円ぐらいするので、いまいちお得感がない

ピカデリーサーカスから続くリージェントストリート。高級店が建ち並ぶこの通りは、目が飛び出るほどの値札が付いている。貧乏性の僕には、ここで買い物するぐらいなら、タイかベトナムにでも行ったほうが航空券代を払っても安い、なんて考えてしまう

それでも、ロンドンから郊外へ行くと多少物価は安くなる。しかも、イギリスは鉄道や飛行機が発達しているので、外国人が旅するにもあまり苦労はない。さらに、日本と同じく車は左側通行で、ハンドルは右ハンドルなので、日本で運転できる人ならレンタカーを借りても、わりと違和感なく運転できる。

イギリスで初めて車を運転して、戸惑うのがこのランダバウトだ。郊外の交差点には、ほとんど信号がないので、ランダバウトをくるくる回る。これ、時計回りにのみ回り、中で回っている車が優先というのが決まりごと。最初はなかなか、輪の中に入るタイミングが掴めないが、慣れると信号がない分、快適にドライブできる

今回、僕はイギリスの南部に向かった。物価の高いロンドンに嫌気が差した、というわけでもないのだが、実は、イギリス南西部にあるウェールズの首都、カーディフに所用があったのだ。そこで、せっかくなので、イギリス南部の世界遺産の1つ、ストーンヘンジを見に行くことにした。ま、地図を見ていただければわかるが、決して、ついでに行くようなところではない。かなり遠回りではあるのだが、そこはそれ、行ってみればなんとかなるだろう。

というわけで、ロンドンでレンタカーを借りて、ストーンヘンジに向けて南へと車を走らせる。イギリスの高速道路は「M3」とか「A14」とか、「アルファベット+数字」で名前が付けられている。どうやらMは日本でいう高速道路、Aはバイパスとか自動車専用道路(専用でない所もあるが)という感じで、最高速度もMが一番速い。もっとも、どれも無料なので、とりあえず地図と看板を見ながら走っていけばなんとかなる(本当か?)。

イギリスは都市部を離れると、こんな感じで何にもない田園風景が広がる。どこを走っていても、あまり代わり映えのない雰囲気

そもそもイギリスにはあまり高い山はない。さらに高緯度地域なので、夏でもそう気温が上がらない。だから高い木が育ちにくいようで、いまいち殺風景な景観だ

ストーンヘンジへは、列車で行くこともできる。海外で運転はちょっとという人も多いだろうから、列車のほうが行きやすいだろう。列車の場合、ロンドンのウォータールー駅から、ソールズベリーまで約1時間ちょっと、ソールズベリーからはストーンヘンジ行きのバスなどを利用すればいい。

さて、途中でどうやら道を間違えて、全然知らない街をうろうろしたりしたのだが、なんとかストーンヘンジに近づいたらしい。さすがに世界遺産に指定されている観光地だけあって、途中からは道のそこかしこにストーンヘンジを標す道標が設置されている。というわけで、無事ストーンヘンジに到着した。

誰が何の目的で作ったのか、謎の多いストーンヘンジ。田園風景の中に忽然と姿を表す、ものすごーく不思議な石群

もうちょっと近づいてみると、こんな感じ。ちなみに、これ以上近づくことはできない

回りに何もないので、写真だと大きさがわかりにくいが、人が前に立つと大きさがわかる。高さ約7メートル、重さは30トン以上というからすごく巨大だ

ストーンヘンジの回りをぐるっと一周できる。といっても、どんなにゆっくり歩いても20分もあれば充分。早足なら5分で一周できる

このストーンヘンジ、非常に謎が多い。誰が作ったか、何の目的で作ったのか、これだけの巨大な石をどうやって持ってきたのか、その多くは謎である。どうやら、紀元前3000年ごろ、このあたりに巨石文化があり、その祭事に利用されたのではという説が有力らしいが、真相は謎である。この近くには同様の遺跡がたくさん残っているという。最近では、ロイター通信が「ストーンヘンジ、病人の巡礼地だった可能性」という記事を掲載していた。ストーンヘンジ周辺に埋葬されている遺体に外傷や奇形の兆候が見られたからだという。なお、ストーンヘンジの入り口では、ハンディタイプのオーディオガイドが用意されている。日本語版も用意されているので、忘れずに借りておこう。

誰がどうやって作ったのか、まったく想像もつかない。このあたりはミステリーサークルも多いらしい。果たしてこれが地球人のなせる技なのか。『The X-Files』ファンの僕としては、思考はモルダーと同じ方向に向かってしまう

僕、実は出発前からストーンヘンジには、まったく期待していなかった。ただの石だろ、ぐらいにしか思っていなかったのである。しか~し、5000年もの歴史を持つという神秘的な巨大石群を間近で見て、不覚にも(?)圧倒されてしまった。思いの外、感動したのである。逆に、ものすごーくストーンヘンジに期待していた同行者は(実は彼の希望でここまでやってきた)、「え、石が並んでいるだけ?」と実物を目の当たりにして、少々拍子抜けしたらしい。ストーンヘンジはどうやら、あまり期待しないで行ったほうが、感動は大きいようである。

ストーンヘンジについてはここまで。次回はカーディフへ行く途中に偶然出会った、ローマ浴場で有名な世界遺産の町、バースについてお伝えしよう。