【連載】

2020年以降の半導体製造装置業界はどうなる? - SEAJが探る勝ち残り戦略とは

5 IoTの活用で人の介在を抑えて装置維持管理コストを低減

 

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成熟市場での戦略は? - ファブとIoTやAIとの融合を提案

ここ数年でIoTによって電子機器・半導体産業は飛躍的に成長する可能性がある。過去数年を振り返ってみても、インターネットに接続されるデバイスの数は増加の一途をたどっている。2006年当時、インターネットに接続されたデバイスの数は約20億台であったが、2015年時点で約150億台、2020年にはその3倍強の500億台を超えるデバイスがインターネットに接続されると予測されている。これに伴って、IoT向け半導体市場も2015年の1.4兆円に対し、2020年には約3.5倍の5兆円規模に成長すると予測される。IoTを支えるのはマイクロコントローラ、センサ、ワイヤレス通信といったいわゆる最先端の技術を駆使して製造されるデバイスではない。これらのほとんどは、200mm以下のウェハで成熟したプロセスで製造されている。デバイスノードごとの半導体製造装置への投資比率をみると、2015年を境に90nm以上の投資比率が増加傾向にある。また、ウェハ径でみても、200mm以下の半導体製造装置の投資比率と200mmファブ数は増加すると市場調査会社は予測している。

SEAJ「2020年プロジェクト」は、以上のような動向分析結果から、IoTが成熟世代の半導体製造装置への投資を牽引していくであろうと判断している。そして、成熟世代の半導体製造における半導体メーカーの現状と課題、そしてビジネス機会について以下のように考察している。

成熟世代を製造する半導体メーカーは、最先端のプロセス技術を必要としないため、いわゆるレガシー装置を活用して半導体の製造を行っている。これらの装置のほとんどが減価償却を終えた装置であるために、稼動上問題がない限り新規装置への置き換え需要は存在しない。また、生産能力を拡大する場合も、最先端の技術が必要ではないため、まずは市場に流通している安価な中古機を優先して購入する傾向にある。したがって、現状ではIoTの牽引により成熟世代への半導体製造装置投資は行われるが、新規装置を販売するというビジネスモデルを展開している半導体製造装置メーカーにとって大きなビジネス機会があるとはいえない。

しかしながら、レガシー装置は、最新のプロセス技術や省エネ・省薬液・省消耗品のコンセプトが導入されておらず、生産性(スループット)が低い、ランニングコストが高い、パーツ供給や仕様変更対応に不安がある、レガシー装置をメンテナンスできるエンジニアがいないなど、さまざまな問題を抱えている。こういった状況を考慮すると、ランニングコストが低く、高生産性で装置維持管理コストを抑え、投資に見合う効果が得られる提案ができれば、新規装置需要を喚起できる可能性は高いと「2020プロジェクト」は考えている。

半導体工場では、個々の装置の安定稼動から全体の最適化までそれぞれのプロセスにおいて多くの人が関わっている。各プロセスにおいて半導体製造装置メーカーと半導体工場との間で人が介在した業務が行われている(図10)。例えば装置の搬入・立ち上げ後に行うプロセスチューニングでは、半導体製造装置メーカーのエンジニアが装置から必要なデータを取得し、半導体工場のエンジニアと共有する。そして、これまでの知見を活用したり、新しい試みをしたりしながら最適化する。装置の故障時には、半導体工場のエンジニアから半導体製造装置メーカーに連絡が入る。両社で情報共有のもと、過去の故障事例などを参考にしながら問題解決にあたる。

図10 装置導入から製造最適化までのプロセス (出所:SEAJ)

「2020年プロジェクト」では、もしも最先端の技術を駆使して人の介在を抑えて装置維持管理コストを抑えることができれば、成熟市場での新規装置需要を後押しできるのではないかと考え検討した。検討を進めるにあたり、現在半導体工場で行われている装置維持管理業務を、プロセスチューニング、メンテナンス 、全体最適化の3つに分類し、それぞれの業務について、何が実現可能か、どこまで人が介在しない状態が可能か考察した。

  1. プロセスチューニング:半導体製造装置にセンサや測定機能を搭載し、ハードウェアやプロセスの状態を装置自身にフィードバックさせ、搭載されたAI機能で自ら判断し自動でチューニング作業を行う。必要に応じ、前後のプロセス装置や測定器などと連携しチューニングに必要な情報を入手する
  2. メンテナンス(消耗品交換、故障対応、定期メンテ):装置自身が自己診断機能をもち、装置の状態に問題が発生したら自らメンテナンスを行う。また、交換が必要な部品は自動で手配・交換される。故障や定期メンテナンス情報はクラウドに送られ、製造ラインの効率化に活用される
  3. 全体の最適化:製造ラインの最適化に必要な情報(歩留まり、品質、装置での処理結果など)がクラウドに送られる。そのビッグデータを半導体メーカーや半導体製造装置メーカーの経験知が反映されたAI機能で分析し、製造条件の最適化が行われる。

これらの結果を統合し、人工知能(AI機能)が搭載された自律型装置とIoTの融合、ビッグデータの分析により人の介在を極限まで抑えた半導体工場は、半導体工場の将来像といえるものであり、ファブとIoT、AIの融合ということで「2020年プロジェクト」では「FabIA(ファビア)」と命名している。

図11 半導体製造工場の将来像「FabIA」 (出所:SEAJ)

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インデックス

連載目次
第6回 日本の半導体製造装置産業に輝かしい未来は到来するのか?
第5回 IoTの活用で人の介在を抑えて装置維持管理コストを低減
第4回 従量課金モデルの発展形としての「総合提案型モデル」
第3回 半導体製造装置も売り切りから従量課金の時代へ
第2回 半導体製造装置メーカーのためのコンソーシアム設立を提言
第1回 SEAJが考えた日本の半導体製造装置産業の生き残り策

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