【連載】

2020年以降の半導体製造装置業界はどうなる? - SEAJが探る勝ち残り戦略とは

4 従量課金モデルの発展形としての「総合提案型モデル」

 

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先端成熟市場には従量課金を発展させた総合提案型を提案

SEAJの「2020年プロジェクト」は、先端成熟市場における従量課金モデルの発展形として、半導体製造ラインで生じる諸作業も半導体製造装置メーカーが一括で請け負うことで顧客の「ノウハウ」の問題を解決する「総合提案型モデル」も提案している。

通常、半導体工場の操業は半導体メーカーが雇用した従業員によって行われる。それに代わり、装置操作や製造プロセス管理、品質管理に習熟した人員を提供し、生産管理までを半導体製造装置メーカーが受託することができれば、ノウハウに乏しい顧客、例えば新興国の半導体事業の立ち上げを促進することができるだろう。これらを顧慮しつつ日本国内を見渡すと、日本の半導体メーカーおよび半導体製造装置メーカーには、成熟先端世代の製造プロセスに対し高いスキルを持った技術者が多くいる。また、日本には前工程から後工程までほぼすべての製造装置を提供可能なだけの企業群が揃っている。つまり日本には、成熟先端市場で伸びていこうとする顧客のニーズに対し、総合的なソリューションを提供しうるストックが備わっているのである。それを活かした「総合提案型」のサービスを提供できれば、提供するノウハウへの課金も可能になる。「2020年プロジェクト」チームは、前述した稼動率70%時の従量課金モデルを下敷きに、サービスをノウハウ込みで一括提供することによる割増課金を組み入れた包括的なモデルを試算している(図7、図8)。

図7 「総合提案モデル」の課金内容 (運用コストが毎年28となる根拠)(出所:SEAJ)

図8 「従量課金制」+ 「総合提案型」複合モデル (出所:SEAJ)

この「従量課金」と「総合提案」の複合モデルでは、顧客の最大支出は5年間で260となる。「装置売切り型」時の半導体メーカーの最大支出は215でありそれとは乖離があるものの、初期投資負担を軽減し、さらに装置ノウハウ込みでの支払いであることを謳うことで十分魅力的な提案になりうる。また半導体メーカーとは逆に、半導体製造装置メーカーの初年度収入は「装置売切り型」と比較して大きく減少するが、上手くいけば「装置売切り型」比でより大きな増収余地を確保できる可能性が広がるモデルといえる。

顧客から見れば「従量課金型」は「装置売切り型」よりも支払総額が多くなる可能性があるものの、稼働率見合いでの支払いとなるため、その負担は顧客の事業の実勢に沿ったより妥当なものに近づく。これは新興国では半導体産業に参入する際の障壁を下げることにつながり、既存の中規模半導体メーカーのニーズにも適合するものであろう。また、生産管理・メンテナンス・歩留管理まで受託することで、半導体製造装置メーカーは収益をより高めることができる可能性がある。その反面、半導体製造装置メーカーにとって、「従量課金モデル」には顧客装置の低稼働長期化による収益下振れリスクが存在するが、「装置売切りモデル」にも顧客の新規設備投資動向への業績依存度が高くなるリスクがある。どちらが良いかは、顧客の状況に照らしてリスクとリターンを見積もり、判断されるべきであると「2020年プロジェクト」は判断を顧客にゆだねている。

リース会社の活用や特別目的会社の設立を提案

「従量課金型」ビジネスモデルを実行するには、円滑に運営するための方法論も重要である。半導体製造の現場を考えると、稼働安定化・歩留まり向上の早期実現につながるソリューションを提供するほど半導体メーカーは魅力を感じるであろう。その意味において、1社ずつ従量課金型のサービスを提供するよりも、より多くの装置を一括提供し、かつより包括的なサービスを提供するような構図を、半導体製造装置メーカーは追求するべきであると「2020年プロジェクト」は指摘している。その実現策として有望なのは、クラスタリースという形をとった半導体製造装置メーカー同士の連携である。既存リース企業をハブとし、資産管理と従量に応じた課金実務などをリース企業が、技術的なサポートは装置メーカーが直接行うイメージである(図9 上段のケース1参照)。

また、もっと大がかりな事業展開を前提に、特別目的会社(SPC)を組成することも有効だろう。その場合は、まず複数の半導体製造装置メーカーが出資を通じてSPCを立ち上げ、この合弁会社が事業の主体となって活動する。このとき、SPCの資本増強や事業の機動性強化、あるいは半導体製造装置メーカーのSPC参加の敷居を低くするため、制度金融や機関投資家の投融資を募ることも選択肢としてあろう。実務運用としては、半導体製造装置メーカーはSPCに装置を販売し、SPCは半導体メーカーへの装置リースと従量に応じた課金、負債がある場合はその返済、出資者への配当還元、プロジェクトの精算など、スキーム管理全体を担うことになる。また、前述した「総合提案型」サービスを前提にSPCを顧客サービスの受け皿とすることで、装置の定期メンテナンスやアップグレード提案などのサービス収益機会をすべて取り込んでいくこともより容易になるだろう(図9 下段のケース2参照)。

「従量課金」や「総合提案」モデルをより産業クラスタに近い形で提供することで能動的に半導体市場を活性化し、ひいては電子機器産業の隆盛にも資する好機が到来しつつあると{2020年プロジェクト}は考えている。

図9 半導体製造装置クラスタ組成でより魅力あるビジネスプランへ (出所:SEAJ)

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インデックス

連載目次
第6回 日本の半導体製造装置産業に輝かしい未来は到来するのか?
第5回 IoTの活用で人の介在を抑えて装置維持管理コストを低減
第4回 従量課金モデルの発展形としての「総合提案型モデル」
第3回 半導体製造装置も売り切りから従量課金の時代へ
第2回 半導体製造装置メーカーのためのコンソーシアム設立を提言
第1回 SEAJが考えた日本の半導体製造装置産業の生き残り策

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