マンションの駐車場、戸建ての駐車場、コインパーキング、商店や企業の駐車場……。

そこら中にある駐車場だが、注意して見てみると、その表情も実にさまざまだ。"個性"など気にする人の少ない駐車場なだけに、そこに個性を発見するとうれしくなる。

幅はなくとも駐車場は死なず

「P」の字に矜持を感じる(撮影場所: 愛知県岡崎市)

某カーディーラーの駐車場で撮影。

この駐車場スペースがトマソンの類ではなくまだ現役の駐車スペースであると判明したのは、自分の車がここに停めるよう誘導された時だ。

「オーライ、オーライ」と言う声の待つ場所がコレで驚愕。「全然オーライじゃない! 」と誘導員の指示を無視して他のスペースへ緊急着陸した次第である。

隣に迫り来る洗車スペースのエリア拡張により、このような姿になったそうだ。

例え車幅以下になろうとも、「Pの文字が消えない以上は死なない! 」という駐車場の生きざまを見た。

駐車型アトラクション

スリリングな配置(撮影場所: 愛知県高浜市)

停めにくい駐車場を見るとうれしくなる。

この角度と長さ。普通車同士が停めようとしたとき、果たして大丈夫なのかと心配になる。

この駐車場はまだ程度が軽い方で、街には「たくさん停められるようにしたい」というオーナーの意向が強く反映されたのであろう、スペースの限界ギリギリまで使う"攻めた"駐車場が時々確認される。

あれは街に仕掛けられたちょっとしたアトラクションである。見かけたらトライすべきだ。ただ、常識ある大人として、自分の車を駐車しても問題ないかは慎重に確認していただきたい。

完全なる長方形であればレイアウトも簡単だろうが、作る側に与えられる土地はそればかりではない。

いびつな土地、障害物のある土地など、いろいろなハードルを乗り越え、知恵を絞ってレイアウトを決める様子を想像するのも、駐車場観察のひとつの楽しみ方だ。

三角関係の車止め

よりそう7番と8番(撮影場所: 愛知県岡崎市)

こちらは車止めに見る三角関係。駐車スペースには、向かって左から7番、8番、10番と番号が振ってある。

7番と8番の車止めの親密さに対し、10番の寂しそうな姿はどうだ。諸事情で姿を消したと思われる9番の事も忘れてはならないが、僕は10番のような人生を送ってきたので、できれば10番にガンガン停めてあげたい。

それにしても、なぜこうなったのか。

業者が10番、8番、7番の順番で車止めの施工を始めてみたが、7番にきたところで「あ、階段がある」と気付き、ここだけ車止めの位置が変わったのではないか。そうでないと10番がかわいそうだ。

駐車場に限らず、ある風景が持つ違和感に対し、それが生まれるに至ったストーリーを想像する。それは街歩きのひとつの楽しみ方であるように思う。

<著者プロフィール>
zukkini
1982年佐賀県生まれ。進学のため上京するも友達が全く出来ないことに絶望し、ネット上で日記を書き始めて15年。
現在は残飯系情報サイト「ハイエナズクラブ」を主催し、「オモコロ」のライターとしても活動中。
趣味は録画した「警察24時」を繰り返し観ること。