2016年のNHK大河ドラマは真田一族に着目した『真田丸』。その真田一族の"聖地"を巡る企画の第2回では、長野県上田市にある「真田郷」を紹介しよう。真田郷は真田一族発祥の地。上田駅から車やバスで30分ほどかかるため、交通の便がいいとは言えないが、聖地巡礼という点ではこのルーツの地は外せないだろう。

真田郷には全国的にも珍しいアーチ状の石門が。春にはしだれ桜が咲き誇る

幸村の伯父・信綱の「血染めの陣羽織」も

真田郷は幸村(※)の父・昌幸が上田に移転するまで拠点とした地なので、昌幸やその父・真田幸隆(幸村の祖父)に関連する史跡が多い。その昌幸と幸隆が眠るのが「長谷寺(ちょうこくじ)」という古刹である。石造りのアーチ状の山門をくぐり境内の裏手へ進むと、昌幸・幸隆・幸隆夫人の3基の墓がひっそりとたたずんでいる。幸隆や昌幸の存在がなければ、幸村の活躍もあり得なかった。一族の歴史に思いをはせて手を合わせたい。

右から真田昌幸・真田幸隆・幸隆夫人の墓

長谷寺と合わせて訪れたいのが「信綱寺(しんこうじ)」だ。信綱寺は、昌幸の兄弟で幸村にとっては伯父にあたる真田信綱が眠っている。信綱は武田家が織田信長に大敗した長篠の戦いで戦死した人物で、家臣の手で持ち帰られたその首が埋められ、寺名も"信綱"寺に改められた。

信綱寺の本堂。屋根に六文銭を掲げる

この寺には、長篠の戦いで信綱が着ていたとされる「血染めの陣羽織」も伝わっている。寺の前には「歴史の丘」と呼ばれる公園になっており、六文銭の巨大なモニュメントや真田一族の花押のオブジェなどが配されている。真田ファンなら一度は訪れたい。

右から真田昌輝・真田信綱・信綱夫人の墓。昌輝は信綱の弟で、兄とともに長篠の戦いで戦死した

かつて武田信玄も苦しめた山城

真田郷には真田にゆかりの山城も多い。その中でも、真田本城はその名の通り、上田城に移るまで真田家の居城だった。この城からの眺望は素晴らしく、真田郷を一望することができる。

真田本城からの見事な眺望。昌幸や幸村もここから城下を眺めていたのだろう

また、真田郷の西南にある砥石城は、かつて武田信玄らも苦しめた堅城。第1次上田合戦では別働隊を率いた信幸が拠点とするなど、真田家との関わりも深い。こうした山城は初心者には見どころが分かりにくく、ハイキングが困難なケースもあるので、必ず城好きな人と一緒に行くようにしよう。

一族の歴史を学ぶことができる真田氏歴史館

真田郷のほぼ中央に位置する「真田氏歴史館」と「真田氏館跡」もオススメ。真田氏歴史館は真田の歴史が時系列順に解説されており、簡潔に学ぶことができる。武具や古文書など展示品も豊富だ。その脇にある真田氏館跡は平常時の居館跡と考えられている場所。建物などはなく周囲に土塁を残すのみの公園だが、中世豪族の居館として貴重な遺構である。この地から乱世へと討って出ていった真田一族の息づかいを感じたい。

そして次回は、家康に敵した真田昌幸・幸村の父子が幽閉された九度山の地(和歌山県九度山町)、そして、幸村運命の地・大阪の聖地を紹介しよう。

※ドラマでは真田"信繁"の名前が用いられるが、今回は一般に知られている"幸村"を使用

(文・写真/かみゆ歴史編集部 滝沢弘康)

筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部

「歴史はエンタテインメント! 」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで、歴史関連の編集制作を行う編集部。ジャンルは戦国、幕末を中心に古今東西を問わず、アート、カルチャー、宗教・神話、観光ガイドなど幅広く手がける。おもな編集制作物に『真田一族巡礼の旅ガイド』(KKベストセラーズ)、『日本の仏像巡礼名鑑』(廣済堂出版)、『日本の山城100名城』『春秋戦国500年の興亡』(どちらも洋泉社)、『戦国武将イラスト名鑑』(学研パブリッシング)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス出版)など
「かみゆ」