こんにちは。アートユニットのゼロバイゼロです。メンバー全員が会社で働くかたわらで活動していて、光や水、音など自然物をテーマに作品を作っています。

前回は日本で作品づくりをしている僕たちが"ミラノに挑戦"する理由をお話しましたが、今回はそれに参加するにあたってぶち当たった、いわば「ミラノの壁」とも言える事柄について語って行ければと思います。

音に反応するスティック型照明「Kvel」。グラスに立てることで光のゆらめきを楽しむことができるようにしたもので、ミラノで展示した作品のひとつです

サローネサテリテに出展するには

若手デザイナーの登竜門「サローネ・サテリテ」(以下サテリテ)。ここからは、実際に審査~準備期間に経験したことを書いていきます。デザインイベントへの参加の流れとして「へ~」と眺めていただくもよし、これから挑戦するにあたっての参考にしていただくもよし、という感じの内容です。

出展には審査があり、経歴を示すポートフォリオと、出展予定作のスケッチを提出するのですが、これは国内外問わず、デザインコンペに応募するのとほぼ同様の様式です。倍率は公表されていませんが、現地で聞いたところによるとかなり狭き門のようで、今回選ばれたことは大変光栄に思っています。

ただ、ミラノ・サローネ全体の規約として「出展できるのは新規の作品のみ」という規約があるため、すでに販売されている商品や、他の賞を受賞した製品は出すことができません。しかも開催前年の8月末が締め切りなので、それまでに製作可能な作品を考案し、その展示を「ミラノで実現」できるかどうかという点をきちんと考えなくてはいけないのです。

さて、大きくまとめれば、この「ミラノで展示を実現」という部分が、僕たちが今回ぶち当たった大きな「壁」だったんです。

適当すぎるイタリアからの手紙

魚の形をした"コミュニケーション・ライト"「Fish」。複数台を並べると、尾びれの発光を別のFishが感知して、呼応して光ります

と言っても、展示自体の構成が問題だったのではありません。まず最初の「壁」として、サローネ事務局の対応が、これまで日本を中心に活動してきた経験則とは大きく異なっていました。ぶっちゃけると、日本の感覚からしてすごく適当だったんです。

出展申込みはWEBから可能なのですが、エントリー書類のデータに振られた年号が「2014」だったり、8月末〆のエントリーに応募したら「8月はまる1カ月休暇を取っている」という内容の自動返信メールが来たきり一切連絡がなかったりと、そもそも応募できているのかが分からず、かなり不安でした。当選後に書類が送られてくる段にも、予告通りの日付には何も届かず、書類が手元に来た時には、向こうが指定した返信の〆切が過ぎていることもありました……(ただし、〆切の設定自体が厳密なものではなかったので、致命的トラブルにはなりませんでしたが)。

僕たちは過去に参加した先輩や同じく出展する仲間たちとFacebookを通して情報交換することでなんとか乗り切りましたが、SNSが無い時代だったらと思うとぞっとします…。

海外送金

手続きという困難を乗り越えた先にあったのが、「出展費用の支払い」という新たな壁でした。サテリテは世界規模のイベントですが、送金方法は現地の銀行への振込しかありません。イタリアの銀行口座なんてもっていなかったので海外送金サービスを使うことになるのですが、これは時間も手数料もかかります。Paypalやクレジットカードが使えるといいのですが…。

送った荷物、届かないのが「当たり前」

そして、作品を運ぶにも一苦労です。イタリアは郵便が発達しておらず、EMS(国際郵便サービス)で作品を配送すると、なぜかイタリアの港に到着してから1週間近く足止めされたり、ひどい時はそのままロストバゲージ(紛失)することもあります。今回のサテリテでも、準備期間中に荷物が届かず、ブースの設営ができないチームが続出、出展前夜に荷物が届いた人が大半でした…。

確実に作品を運ぶのならば、飛行機で直接持ち込むか、UPSやDHLなど民間のサービス(料金が高い)に依頼することになります。普段当たり前に使っていた、安価で確実に指定日に届く日本の宅配便のありがたみを感じました。

次回は、出展にかかる「お金」の話や、実際に参加して得られたサテリテの雰囲気について書いていきます。