サーボモーターの原点設定

さて、前回少し触れた「原点設定」という作業について説明しておきたい。

ロボットの関節となるサーボモーターには可動範囲がある。「KHR-3HV」で使用している「KRS-2552HV」の場合、これは270°。つまり±135°の範囲で、出力軸を動かすことができる。

サーボホーンやサーボアームを出力軸に取り付ける際、原点(0°)の場所からズレてしまうと、可動範囲もズレてしまい、モーションが正しく再生できなくなる恐れがある。製品の出荷時、基本的に出力軸は0°の場所にあるはずだが、移動している可能性もあるので、念のため0°に戻しておくのが原点設定の目的である。

原点設定を行う場合、サーボモーターはマイコンボード「RCB-4HV」に接続する。右のケーブルはPCと繋がっている

サーボモーターの出力軸には、目印となる点が打たれている。原点設定をすれば、これがちょうど真上にくるはず

原点設定は、最初にすべてのサーボモーターに対して行ってもいいし、使う都度やっても構わない。具体的な手順については省略するが、マニュアル通りにやれば特に問題はないだろう。

原点設定にはコントロールソフトウェアの「HeartToHeart4」を使用する。従来のHeartToHeart3からは、インタフェースが一新された

設定画面。システム設定の数値は、とりあえずデフォルトのまま使用すること。現状では、早くするとエラーが出る場合があるそうだ

動画
原点設定の流れ。スライダーを動かして、サーボモーターが正しく動作するのを確認してから、原点(数値では7500)に戻す。右の数字をダブルクリックすれば一発で7500に戻る(wmv形式 1.75MB 13秒)

新時代のサーボモーター

サーボモーターの話が出たので、ついでにそのスペックについても触れておきたい。ロボットのスピードやパワーは、このサーボモーターによって決まると言える。KHR-3HVで進化した点の1つは、サーボモーターがKRS-2552HVになったことなのだが、KHR-2HVで使われていたKRS-788HVと仕様を比較すると、以下の表のようになる。

サーボモーター KRS-788HV KRS-2552HV
最大動作角度 180° 270°
最大トルク 10.0kg・cm 14.0kg・cm
最高スピード 0.14秒/60° 0.14秒/60°
制御信号 PWM シリアル
サイズ(mm) 41×21×35 41×21×30.5
重量(g) 47.5 41.5
店頭価格 5,775円 7,350円
サーボモーターの比較

スピードこそ従来と同じだが、トルクは40%向上(トルクとスピードはギア比によって変わるので、トルクはそのままでスピードを上げることも可能だったはずだ。正確に言えば、スピードよりトルクを重視してギア比を設定したということだろう)。このパワーを活かせるように、ギアもすべて金属製になっている(KRS-788HVでは一部が樹脂製だった)。

動作角度が広くなったのも大きい。脚部ではあまり効果はないが、肩など可動範囲が広い関節では、より人間に近い動作ができるようになる。

また制御信号がシリアル(近藤科学独自の通信規格ICS3.0に対応)になったことも特筆すべきだろう。従来、KHR-2HVでは17個すべてのサーボモーターがコントロールボードに1対1で接続されており、配線がゴチャゴチャになっていたが、シリアル通信では各サーボにIDが振られており、デイジーチェーン接続が可能。配線がかなりスッキリした。ただし、KRS-4013HV/4014HVとは異なり、シリアル専用となる点には注意。

KRS-2552HVの前後左右の外観。デイジーチェーン接続用にコネクタは2つ搭載している。このコネクタ形状も従来と異なるので注意

KHR-3HVに付属のKRS-2552HVには、あらかじめIDが設定されている。シリアル通信は2系統用意されているので、同じIDがあっても問題ない

基本スペックが向上しながら、小型化・軽量化を実現しているのも嬉しいところだ。まったくの新型サーボのため、まだ使えるオプションパーツが少ないのは難点であるが、今後充実していくことを期待したい。秋葉原の同社直営ショップ「ROBOSPOT」では、CADデータを持ち込んでのアルミ加工サービスも受け付けているので、いざとなれば自作も可能だ。

KRS-788HV(左)との比較。高さや幅はほぼ同じだが、厚みが薄くなった

ファイナルギアも金属製に。あとアッパーケースにもネジ穴が用意された

組み立ての順序を大幅変更

では前置きが長くなってしまったが、前回の続きから組み立てを進めたい。腰ユニットを作ったので、マニュアルに従うと次は胸ユニットになるのだが、筆者は下から組み上げるのが好きなので、上半身のページはすっ飛ばして、脚部から作っていくことにする。パーツの依存関係がなければ、順番は自由に変えてもいいのだ。

まずはサイ(太腿)ユニットの組み立て

左右対称のパーツが1セットできあがる

次はレッグユニットの組み立て

これはロボットのスネ部分になる

次はソール(足裏)。KHR-2HVでは、標準ソールはアルミ製になっており、オプションで樹脂製のバスタブソールが発売されていたが、KHR-3HVには、より大きな樹脂製ソールが最初から付属している。アルミ製よりも樹脂製の方がスムーズな歩行が可能になるので、こういった配慮は嬉しいところだ。

ソールの比較。左から、KHR-2HVの標準ソール、バスタブソール、KHR-3HVのラージソール。ネジ穴には互換性がある

サーボモーターを固定するためのアルミパーツを取り付ける。ナットは小さいので、ピンセットなどを使えば便利だ

そして、これまでに組み立てたパーツを繋げていく。この段階になると、サーボモーターに貼られているIDは、アルミフレームに隠されて見えない。脚のパーツは左右で向きが異なるので、マニュアルの図と見比べて、左右を間違えないようにしよう。脚部においては、出力軸は前方または内側、コネクタは後方または外側にあると覚えておくと良い。

接続するイメージはこんな感じ

サイユニットとレッグユニットの接続はちょっと難しい

サーボモーターにホーンを取り付ける

上下にサーボブラケットを取り付ける

サーボブラケットにサーボモーターを固定

サーボモーターをソールに固定する

腰ユニットに両足を繋げる

下半身が完成。脚だけでカッコつけてみる