2009年7月18日、近藤科学の2足歩行ロボットキット「KHR-3HV」がついに発売された。2004年に初代の「KHR-1」が登場した同社のKHRシリーズは、2足歩行ロボットの"定番"とも言える製品。最新モデルのKHR-3HVは、3年ぶりのフルモデルチェンジである。

筆者はロボットショップテクノロジアでKHR-3HVを購入。何でも教えてくれる心強いショップだ

製品パッケージ。今回、KHR-3HVはまだ組み上がっていないので、このパッケージ画像で我慢してもらおう

KHR-3HVの特徴

まずは、KHR-3HVの仕様について、ざっと紹介しておきたい。以下の表にまとめてあるが、自由度(関節の数=サーボモーターの数)は17。この数自体は従来のKHR-1/2HVと変わらないが、大きく異なるのは、ダミーサーボの採用により、サーボモーターの追加が簡単になったことだ。

従来は、足や腕の自由度を増やそうと思ったら、オプションパーツを用意してサーボモーターを継ぎ足す必要があったが、KHR-3HVではサーボモーターと同サイズのダミーサーボを交換するだけでいい。腕や足の長さも変化しないので、モーション(ロボットの動き)の修正が最小限で済むというメリットもある。

例えばKHR-2HVで腕の自由度を増やす場合、右のように腕が長くなってしまう

KHR-3HVの場合は、予めダミーサーボが取り付けられているので、これを交換

そのほか、基本スペックが向上している。サーボモーターは、従来の「KRS-788HV」から新型の「KRS-2552HV」に変更。最大動作角度が270°に広がり、最大トルクも14kg・cmに向上した。コントロールボードは、こちらも新型の「RCB-4HV」を採用。センサ入力に使えるアナログ端子が大幅に増えた。

このあたりの詳細に関しては、おいおい見ていきたい。

KHRシリーズの仕様比較
ロボット KHR-1 KHR-2HV KHR-3HV
自由度 17軸 17軸 17軸
サーボモーター KRS-786 KRS-788HV KRS-2552HV
マイコンボード RCB-1×2枚 RCB-3J RCB-4HV
身長 340mm 353mm 401mm
重量 1200g 1270g 1500g
店頭価格 12万6,000円 8万9,985円 11万9,700円
発売時期 2004年 2006年 2009年

ちなみに、KHR-2HV以降の製品名に"HV"が付いているのは、"High Voltage"の意味だ。コントロールボード・サーボモーターの駆動電圧は、KHR-1では6Vだったが、KHR-2HV以降では10.8Vに上げられており、よりパワフルな動作を実現している。

今回、筆者はKHR-3HVを自腹で購入したので、組み立てから設定方法まで、早速レビューしていきたい。完成したあとは、マイコンボードを使った自律化についても紹介してみたいと思っている。

いきなり改造?

最初に言ってしまうが、KHR-3HVの部品はかなり数が多い。しかし、一部の例外を除いてプラスドライバーのみで組み立てられるようになっており、マニュアルの通りに進めていけば、初心者でも完成させることができるはずだ。

KHR-3HVの部品一式。ちょっと気が重くなる種類の多さだ

ネジの種類も多いので、部品入れを使って、整理しておこう

マニュアルは付属CDに入っているが、印刷した方が使いやすい

ドライバーは#0と#1が必要。こういったツールがあれば便利だ

組み立て作業に取りかかる前に、まずはバッテリの充電を行う。あとの工程で必要となるのだが、フル充電には1時間くらいかかるので、最初にやっておくのだ。ちなみに、KHR-2HVのACアダプタでは充電に一晩かかっていたが、KHR-3HVには最初から高速充電器が付属している。事実上、2万円程度するオプションの充電器が必須となっていただけに、これは嬉しいところだ。

KHR-3HVに付属する充電器。放電も行える優れモノ(バッテリのメモリ効果を抑えるには、放電させて空っぽにしてから再充電するのがベスト)

またKHR-3HVでは、最初から大容量バッテリ(800mAh)が付属する。KHR-2HVの標準バッテリ(300mAh)では、すぐにバッテリ切れになってしまっていた

マニュアルに従うと、最初に組み立てる部位は腰になる。この場所には、ダミーサーボを3つ使用。前述のように、これをサーボモーターに交換することで、自由度を追加できる。両端は、足のヨー軸を追加するためのもので、これをサーボモーターにすれば、足をハの字にするような動きが可能となる。中央は腰のヨー軸となるもので、ここを換装すると、上半身をひねることが可能になる。

ところで標準の構成では、腕が3軸×2、足が5軸×2、頭が1軸という配置になっているのだが、よく考えたら、頭が動くよりも、腰が動いてくれた方が役に立つ。マニュアルをざっと眺めたところ、入れ替えても何とかなりそうだったので、筆者は「頭を固定、腰が動く」独自仕様で進めてみたい。何か問題が起きる可能性はあるが、この方法なら、お金をかけずに腰ヨー軸を得ることができる。試すだけの価値はあるだろう。

というわけで、ダミーサーボ×2とサーボモーター×1を使用。サーボモーターは頭で使う予定だった赤の0番を使う

サーボモーターとダミーサーボのそれぞれにアームサポーターを固定する(写真はサーボモーター)

次回説明する原点設定という作業のあと、サーボモーターに小径ホーンを取り付ける。M3-8低頭ホーン止めビスを使用する

サーボモーターから、ケースビスを抜き取る。この状態ではケースが外れやすいので、取り扱いは慎重に

ダミーサーボ×2をこの向きで固定する。ケースビスは締めすぎに注意。手応えが変わったあたりで十分

反対側もビスで固定する。これで、ダミーサーボとサーボモーターがガッチリ固定された

オフセットアーム(写真下)をダミーサーボに、ボディベース(写真上)をサーボモーターの小径ホーンに固定

このように改造することで、腰を自由に動かせるようになるはず。心眼で上半身を見るのだ!