ITコストを抑制しつつより質の高い調達を実現する、サーバを中心とするリユースサービスを紹介する本連載の第1回では、リユースサービスの概要を解説した。第2回の今回は、国内ではユニークなコンピュータ機器のリユース事業を展開するデータライブ代表取締役社長 山田 和人氏に、リユース市場の現状から将来の事業計画に至るまで話を聞いた。

そもそも、事業を始めたきっかけは?

データライブ代表取締役社長
山田 和人氏

「実は私自身、サーバエンジニアでもあるのです」と語る山田氏。同社は2003年12月に創業し(当時の社名はインターブレインコミュニケーションズ)、主にスクラッチ(自社開発)を中心とするシステム開発を手がけてきた。「だから、現在でも当社はシステム面に明るいのが特長です」と山田氏は胸を張る。

では、2006年1月にリユース事業を手がけるきっかけは何だったのだろうか?

「おかげさまで開発案件は多数いただいていたのですが、優秀な人材を十分に確保できず、売上が伸び悩んでいました。2005年の10月に現在地に会社を移転したのを契機に、新規事業への進出を検討し始めたのです」(山田氏)。

現在はサーバやネットワーク機器も取り扱う同社だが、リユース事業を始めた当初はPCのみを取り扱っていた。だが、そこにも問題が潜んでいたという。

「リユースPCの主な仕入先はデータセンター、レンタル会社などのリース完了品なのですが、当時は中古PCを取り扱う多数の事業者が競合し、仕入は順調とはいきませんでした。しかし、あるきっかけからリース完了品のサーバの仕入を打診したところ、意外と好反応だったのです」(山田氏)。

そのきっかけは、山田氏が以前から抱いていた構想に起因する。

「私がサーバエンジニアだったこともあり、リユースサーバの将来性を感じていたのです。日本とは違い、米国では以前から一般的なサービスでもあり市場が確立されていました」(山田氏)というが、リユースサーバではなくリユースPCから事業を始めたのは、「中古に対する抵抗感が根強い日本で、リユースサーバが果たして事業として成立するかどうか疑問に感じたから」(山田氏)だという。

サーバのリユースはPCとは異なり、競合がさほど激しくなかったと山田氏は振り返る。

「データセンター、レンタル会社などはリースが完了したサーバを多数、保有しているのですが、一般のマニアでも扱えるPCと違いサーバは専門的なエンジニアの領域と見られていたため、製品として仕入れようという業者はほとんどありませんでした」(山田氏)。そこに目を付けたユニークな発想が、同社が現在業績を伸ばしている大きな要因といえるだろう。

ユーザの抵抗感をいかに乗り越えるか

サーバなどコンピュータ機器に限らず、日本では新品が歓迎される半面、中古は敬遠される風潮が根強い。そのため、同社が最近始めた「1カ月初期不良保証サービス」と「機器・パーツ1年間保証」は、リユース品に対するユーザの抵抗感を払拭する意図があるようだ。

「中古品やリユース品にはシステム構築・導入の現場では抵抗感が薄いのですが、保証が無いことが調達する立場から見た不安要素であり、決裁に通せない大きな理由です。パーツ保証は、それに対する当社の回答といえます」(山田氏)。

品質の確保にもノウハウ

中古品やリユース品で気になるのが、その品質だ。同社では取扱製品の品質確保に、独自のノウハウを持っている。 「まずは仕入れた製品の目視検査を実施します。例えばコンデンサが異常に膨らんでいるなど目視で異常の予兆を検知できる場合がありますが、これはツール類による検査では検知できないのです」(山田氏)。

ツールを利用した検査も実施するが、単にツールを走らせるだけではないと、山田氏は語る。 「メーカー提供のツールなどを含め、実に多彩なツール類を駆使しています」(山田氏)。

さらに、CD-ROMやDATの取り出しなど、物理的な検査も実施しているという。このように各種のテストを組み合わせることで、リユース品ながら高い品質を確保しているのだ。

仕入れたサーバは入念な検査が実施される

短い納期の秘訣は仕入ネットワークにあり

同社のリユース品は、納期の短さも自慢の1つだ。その秘訣は、豊富な在庫を持っていることが挙げられる。

「当社では『在庫イコール保守部材』との考え方も持っていて、在庫は多く保持しています」と、山田氏は在庫の重要性を強調した。

故障の場合すぐに交換できるように、豊富なパーツ在庫が確保されている

さらに、独特の仕入ネットワークも強みだ。 「当社では全世界に仕入ネットワークを持っています。ASCDI(Association of Service and Computer Dealers International)という中古サーバ等を取り扱う事業者500社ほどが加盟する国際的な業界団体に、当社も加盟しています。同団体は信頼性や技術力が高い企業しか加盟できず、当社の特性をご理解いただけるかと存じます」(山田氏)。

このネットワークを活かして、通常は困難な調達にも成功したと、山田氏は胸を張る。

「ある大手のSIerさんではSUNのサーバ10台以上を必要としていましたが、自社で探しても調達できず、当社に白羽の矢が立ちました。そこで当社が仕入ネットワークを駆使してカナダの企業が保有していることを発見し、無事納入したのです」(山田氏)。

取扱製品の品質の高さと価格の安さからミッションクリティカルな用途、例えばデータセンタでも同社のリユース品を導入するケースがあるという。

「あるレンタルサーバ会社ではデータセンタに自社のエンジニアを常駐させているのですが、日ごろの保守・運用を担っているだけあって、ある意味メーカのエンジニアより詳しい面もあります。メーカと保守契約を結んでいてもすぐに直してもらえるとは限らないため、自分たちでの対応を余儀なくされるからです。トラブルが発生すると、エンジニアたちはその原因を切り分けます。原因がディスクであればディスクを、サーバであればサーバを交換し、システムの停止時間を極力短くするよう努めます。その交換用のディスクやサーバに当社のリユース品を使用すれば、保守コストを節減できるのです。そのため、企業の方が私どもを探し出してやってくるのです」と、山田氏は一例を挙げた。

旧型製品の調達で「システム延命」をサポート

不況の影響によるIT予算の縮減を受けて、SIerやユーザ企業では現在「システム延命」が1つのキーワードになっているという。このシステム延命にも同社のサービスが貢献していると、山田氏は語る。

「例えばメーカ保証が切れてしまったが、ハードやOSを更新すると既存のシステムやアプリの改修が必要になってしまい、継続使用を求めるユーザがSIerに相談します。SIerとしても旧型製品の調達は困難なため、当社をご利用になるケースが多いですね」(山田氏)。

同社ではリユース品のサーバやネットワーク機器、PC、パーツなどはWebでも受注しており、ユーザ企業のシステム部門が同社サイトを見て、SIerに調達を指示するケースも増えているという。

データライブでは「リユースサーバ.net」というサイトで、Web販売も行っている

バックアップ体制の強化で事業拡大を

今後の事業展開について山田氏は、「ストレージ製品やブレードサーバの充実を図っていきたいと考えています。国産サーバへの取り組みも、もっと強化していきたいですね」と語る。

さらなる事業拡大には、「まず『SIerが安心できるバックアップ体制をいかに構築できるか』がカギになるでしょう」と、山田氏は語る。

秋葉原の本社前にて

「SIerは予算の厳しい制約の中での調達に腐心しており、リユース品にも関心を示してはいるのですが、『いつ壊れるかわからない』『壊れたら保守対応をしなければならない』といった不安も抱えています。当社としては新品になるべく近い品質や保証内容を提供するとともに、安心して使っていただける体制作りを進めたいと考えています」(山田氏)。さらに、将来的にはオンサイト保守も検討していくという。

「ゆくゆくは中古車市場と同じように、リユース市場も確立したいですね」と山田氏が描く夢も、高い技術力や調達力を背景に『安心』『高品質』『高信頼性』『低価格』をキーワードとする同社のリユース事業によって、実現する日がそう遠くはなさそうだ。