今日は8月5日。「8・5」を逆さまにすると「5・8」。……ということで、今回は電気機関車EF58、通称「ゴハチ」を紹介したいと思います。

EF58は、当時の国鉄の旅客列車牽引の花形機関車。東海道本線東京~大阪間を結んだ特急列車「つばめ」「はと」の先頭に立ち、お召し列車専用牽引機として特別に製造されたカマ(機関車)もあるほどでした。その晩年の姿をご覧いただきましょう。まずは栄光のお召し専用機・61号機から。

お召し専用機EF5861。現役を退いたとはいえ、「ロイヤルエンジン」にふさわしい美しさを保っていた

EF5861は、僚機の正面窓が「Hゴム」化される中、わずかに残った「大型正面窓」機

そして、61号機の予備機だったEF5860です。1960年代後半にお召し指定を解除されましたが、引退までお召し専用機の独特の装いをまとっていました。

横浜駅東海道線上りホームに停車中のEF5860。晩年に美しい大型正面窓がHゴム化改造された

戦後の1946(昭和21)年から1958年までの長きにわたり(途中中断あり)、172両が製造されたEF58。旧型電機ながら高速運転の性能に優れ、1950~1970年代にかけて、東海道・山陽本線や東北本線、高崎・上越線など本州各地の直流電化区間で、ブルートレインから普通列車、荷物列車まで幅広く牽引し、活躍した主力機でした。

しかし、新幹線の開通や客車列車の電車化、新性能電気機関車の登場により、活躍の場が減少。晩年は荷物列車や寝台特急・急行の牽引が中心となり、細々と活躍を続けていました。製造から40年が経過した1986年、一部を除き引退となりました。

EF58の最大の特徴は、F級電気機関車初の半流線型ボディーです。そのスマートな車体全長は、約19m。これは、牽引する客車の暖房用に使用する蒸気発生用ボイラーを搭載するスペースを確保したためで、現在の通勤電車1両分の車体長20mに匹敵します。初期に製造された31両は、昔ながらのデッキ付き角型ボディーで登場しましたが、後に半流線型ボディーに載せ替えられました。

EF58は走行線区の環境に合わせて仕様変更や改造がなされ、バリエーションに富む形態が存在しました。同機関車を、晩年に大多数を占めた「正面窓Hゴム機」で形態別に紹介しましょう。

「一般型」

ここでは、典型的な「正面窓Hゴム機」を「一般型」とします。

荷2634列車を牽引するEF58108。山手貨物線を白昼堂々走行した

東海道を上ってきた荷32列車の先頭に立つEF58166

EF58は、新製時にHゴム窓で登場した数両を除き、「大型正面窓」と「小型正面窓」で製造されました。その後の更新改造で、それぞれに「小型・Hゴム」化、「Hゴム」化が行われ、なんと全172両中約120両が「正面窓Hゴム」機となり、晩年のゴハチを代表するなじみ深い顔(前面)となったのです。

「上越型」

上越線に配属されたEF58は、冬季の豪雪地帯の走行に備え、「つらら切り」「汽笛カバー」「スノープロウ」が装備され、ごついスタイルの「上越型」が誕生しました。

足回りに雪がついたまま留置される「上越型」EF58132。小型スノープロウが特徴だった

上越型EF58133が牽引する12系の臨時急行

上野駅7番線に停車中の「上越型」EF58131

配属当初、大型窓機、小型窓機が存在しましたが、前述のようにHゴム化されたため、最終的に「上越型」の前面は「正面窓Hゴム」となりました。

「P型」

1972年、関西と九州を結ぶブルートレイン増発用に、約40両が改造されました。20系寝台特急を牽引するためにブレーキ管が増設され、前端バリのエアホースが計3本となりました。旅客を表す「Passenger」の頭文字をとって、通称「P型」と呼ばれました。

「P型」EF5885が牽引する荷2634列車

恵比寿~渋谷間を走行する「P型」EF58117。写真9と同じ荷2634列車を牽引

これら「一般型」「上越型」「P型」という3タイプは大雑把な分類で、EF58を細かく見ていくとさらに形態が増えるほど、個性に富んだ外観が特徴的な機関車でした。それでは最後に、「異端機」と「懐かしの重連荷物」の2枚を……。

臨客を牽くEF5888。東京機関区配置でおもに東海道本線を走行していながら、関ヶ原の積雪や上越線走行に備えてつらら切りとスノープロウを装備していた

EF58重連で有名だった東海道線の荷35列車。アングルが悪いが、重連運用がなくなると聞いて撮影した1枚

「鉄道懐古写真」撮影時期と撮影場所

  撮影時期 撮影場所
写真1 2010年8月28日 東京総合車両センター一般公開にて
写真2 2008年8月23日
写真3 1975年3月 横浜駅
写真4 1981年1月31日 恵比寿駅
写真5 1980年12月19日 川崎新町駅
写真6 1975年2月 東大宮操車場
写真7 1979年8月18日 上越線水上駅付近
写真8 1976年9月 上野駅
写真9 1980年12月18日 山手貨物線恵比寿駅
写真10 1980年11月12日 恵比寿~渋谷間
写真11 1980年11月10日 浜松町駅
写真12 1976年2月 大井町~大森間
※写真は当時の許可を取って撮影されたものです
松尾かずと
1962年東京都生まれ。
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現在の目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う"撮り鉄"に。とくに73形が大好きで、南武線や鶴見線の撮影に足しげく通った