当連載の第30回「原宿駅宮廷ホームから発車した157系『お召し列車』」で使用した写真を探す最中、偶然にも、貴重なお召し列車の写真を発見しました。中央本線を走った「ロクヨンお召し」(EF64牽引のお召し列車)です。

いまから33年前の1978(昭和53)年10月、長野県で開催された「やまびこ国体」に天皇陛下がご臨席された際、中央線にお召し列車が走りました。

通常、ご公務で地方へ行幸される際、運転されるお召し列車は、「新1号編成」と呼ばれる客車列車を使用します。5両からなる「新1号編成」の中央に連結された特別車両「御料車」に天皇陛下がご乗車されました。

通常、この編成の牽引機として、鉄道ファンから「ロイヤルエンジン」と賞賛された電気機関車EF58 61(直流電化区間のみ)がその任にあたります。しかし高尾以遠の中央本線は山間部を走り、勾配がきついため、当時活躍していた勾配線区用の電気機関車EF64が牽引。非常に珍しいお召し列車となりました。

1978年開催の「やまびこ国体」で運転されたお召し列車は、なんと4機種(補機も含む)もの機関車が牽引しました。

初日の10月13日、原宿~高崎間を「ロイヤルエンジン」EF58 61、高崎~長野間をEF62 11が牽引。横川~軽井沢間では、補機としてEF63が連結されました。10月14日の長野~塩尻間と、最終日となる10月16日の塩尻~原宿間では、EF64 58が客車を牽引しました。それにしても、お召し列車がかなりの長距離を走行していたことに、いまさらながら驚かされます。

お召し列車が運転された当日、場所取りを兼ねて早めにスタンバイしていました。そのときにシャッターを切った懐かしの列車も紹介します。特急「あずさ」をはじめ、さまざまな列車が行き交っていた中央線。懐かしいです。

特急「あずさ」といえば、思い出すのは当時のヒット曲、狩人の「あずさ2号」。この曲が世に出た1977年、「あずさ2号」は新宿駅を朝8時に出発していました。かつて国鉄の特急列車の号数は、下り・上りそれぞれに1号から付けており、下り列車の「2号」が存在したのです。

しかし、1978年10月のダイヤ改正で、下り列車は奇数、上り列車は偶数というように特急列車の号数が変更となったため、「あずさ2号」は上り列車に。

このダイヤ改正以降、新宿発の下り「あずさ2号」は、定期列車としては歌詞の中だけの存在になってしまいました……。

今回紹介した「鉄道懐古写真」

撮影時期 写真の説明
写真1 1978年10月16日 塩尻~原宿間で運転されたEF64 58牽引のお召し列車。
客車の3両目は天皇陛下がご乗車になった「御料車」
写真2 1978年10月16日 原宿駅の「宮廷ホーム」に到着。EF64牽引の珍しい
お召し列車に、職員までもがカメラを向けていた
写真3 1978年10月16日 夕闇が迫る中、品川へ回送される新1号編成。
写真中央が「御料車」
写真4 1978年10月16日 新宿~松本間を結んだ189系特急「あずさ」。
狩人のヒット曲「あずさ2号」で全国的に知名度がアップ
写真5 1978年10月16日 101系東京行。前から2両目は、低屋根の800番台
写真6 1978年10月16日 103系の中央線特快高尾行。原型ライトが懐かしい
写真7 1978年10月16日 ロクヨン(EF64)牽引の貨物列車。新宿まで運転していた
写真8 1978年10月16日 EF15が牽引する、たった2両の貨物列車
※写真は当時の許可を取って撮影されたものです
松尾かずと
1962年東京都生まれ。
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現在の目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う"撮り鉄"に。とくに73形が大好きで、南武線や鶴見線の撮影に足しげく通った