1974年9月、1駅間だけの臨時電車「相模湖臨」の撮影で中央線高尾駅へ赴きました。当時の高尾駅は101系800番台(詳しくは第25回参照)のほか、客車普通列車や「山スカ」など、さまざまな列車が行き交っていました。

新宿行の客車列車。最後尾オハフ33の所属標記は、甲府客貨車区を表す「西コフ」。中央線高尾駅。1974年9月

高尾駅で撮影した客車は、1974年9月の時刻表によれば、甲府発8時21分、新宿到着10時51分の普通422列車だったようです。この列車を含め、当時の中央線新宿~松本間には、下り3本、上り4本、計7本の普通客車列車(臨時列車を除く)があり、うち上下各1本は新宿~長野間の夜行列車でした。

高尾駅で留置中の70系8連。通称「山スカ」。1974年9月

高尾駅には、3扉セミクロスシートの70系、通称「山スカ」も留置されていました。「山スカ」とは、中央線高尾以西の「山線」を行く「横須賀色(青とクリーム色のツートンカラー)」の列車を略した言葉。中央線向けに製造され、屋根全体を低くしたモハ71が連結されていたのが特徴でした。

モハ71が製造された1952(昭和26)年当時、後の101系800番台(1961年登場)のようにパンタグラフ部分のみ屋根を低くするという技術が確立されていなかったため、屋根全体を低くするしかなかったそうです。

「山スカ」は小断面トンネルが多い高尾以西への乗り入れに活躍し、甲府駅より先、小淵沢駅まで足を延ばす列車もありました。70系はその後、115系に置き換えられて1976年に姿を消しました。現在、高尾駅以西の中央本線では、豊田車両センター所属の115系300番台が活躍中です。

高尾発松本行の115系0番台(基本番台)8連。ライトは原型の大目玉で、非冷房だった

それから35年後の現在、「山スカ」という言葉は、ちょっと意外な人たちの間で使われています。昨今の登山ブームで登場した「山ガール」たちです。

おしゃれなスタイルで登山する女性たちの間で、山歩き用のスカートを「山スカ」と呼ぶのだそうです。たしかに、どちらの「山スカ」も、「山を上り下りする」という共通点がありますよね……。

※写真は当時の許可を取って撮影されたものです
松尾かずと
1962年東京都生まれ。
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現在の目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う"撮り鉄"に。とくに73形が大好きで、南武線や鶴見線の撮影に足しげく通った