今回も、雄大な富士山をバックに走る御殿場線の写真を紹介します。前編で紹介した写真は、東山北 - 山北間で撮影したもの。しかし、ここより遥かに大きい富士山を撮影できるポイントがあったのです。その大きは……

巨大な富士山をバックに行く小田急3000形SEの特急「あさぎり」。御殿場線足柄 - 御殿場にて。1979(昭和54)年4月22日

富士山をバックに73形4連の沼津行がカーブにさしかかる。電車より高い鯉のぼりが見える。御殿場線足柄 - 御殿場にて。1979(昭和54)年4月22日

初めて間近に見る巨大な富士山。その大きさに圧倒されつつ、シャッターを切ったことを覚えています。

今から32年前(1979年)の撮影当日は、朝から天気に恵まれ雲がない晴天。午後も雲が出てくる気配は無さそうだったので、急遽、御殿場駅付近の富士山が見える撮影ポイントへ移動しました。駅から徒歩で移動中、富士山が目に入った途端、思わず絶句。午前中に撮影したポイントより、遥かにデカイ……。早速、撮影開始。しかし、午後の光線は、列車の前面に影を落としていました。光線の状態が良い午前中に、ここへ来るべきだったと後悔した……。

軽快に勾配を下ってきた73形4連の国府津行。御殿場線足柄 - 御殿場にて。1979(昭和54)年4月22日

国府津行先頭のクハ79425。ファインダーの中に「何か」を感じたのでそのままレンズを振ると……。御殿場線足柄 - 御殿場にて。1979(昭和54)年4月22日

上のモノクロ写真の73形国府津行は、下り勾配を軽快に下っていきました。というのも、御殿場線は標高約460mの御殿場駅を頂点とした逆V字型の勾配。下り列車の場合、国府津から御殿場まで、酒匂川に沿った上り勾配が続き、御殿場から沼津までは一転して富士山の裾野に沿った下り勾配となっています。上下列車とも、御殿場を出ると勾配を下り続けるという面白い路線です。

車内から女子学生が手を振っていたので思わずシャッターを切る。73形特有の3段窓が白と青の横須賀色で際立つ。御殿場線足柄 - 御殿場にて。1979(昭和54)年4月22日

停車中の73形8連沼津行。 最後尾のクモハ73359は全金属改造車ながら窓の上下に帯が付いた異端車。御殿場線国府津にて。1979(昭和54)年4月22日

停車中の73形8連沼津行と進入してきた東海道本線下りの113系。73形は朝の通勤時間帯に国府津で折り返し小田原へ乗り入れる運用もあった。御殿場線国府津にて。1979(昭和54)年4月22日

当時、ツートンカラーの横須賀色でしかも長大8連で73形が走行するのはここ御殿場線のみ。しかしながら、この写真を撮影した半年後の1979(昭和54)年10月のサヨナラ運転をもって全車引退となりました。

当時の許可を得て撮影しています。
松尾かずと
1962年東京都生まれ
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現: 目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う撮り鉄に。特に、73形が大好きで南武線や鶴見線の撮影に足繁く通った。