【連載】

鉄道ニュース週報

92 北海道新幹線札幌駅に再び地下ホーム案、いつまで揉めるつもりか

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2031年(2030年度末)に開業予定の北海道新幹線札幌延伸について、いまだに札幌駅のホームの位置が決まらない。議論の末に2案に絞り、「現駅隣接案」「現駅東側案」を検討してみたら、どちらも難ありと判明したからだ。そこで第3の選択肢として、地下駅案が再浮上した。10月10日、鉄道・運輸機構とJR北海道が道庁で記者会見を行い、各紙が報道した。鉄道・運輸機構が札幌駅周辺の工事計画を高架案から地下案に変更したため、そのまま地下駅にしようということらしい。

北海道新幹線の札幌駅として北5条通りの地下案(赤)が浮上(国土地理院地図航空写真を加工)

一体、いつまでグダグダと揉め続けるつもりなんだろう。2031年開業まで、あと13年半もある。いや、13年半しかない。間に合うだろうか。若い人なら楽しみに待てるかもしれないけれども、SLブーム世代やその少し後のブルートレインブーム世代にとっては、寿命との競争になってきた。筆者も「とっとと作ってくれ、乗せてくれ」が本音だ。2027年にはリニア中央新幹線が品川~名古屋間で開業予定。既存の技術で建設する北海道新幹線札幌開業が次世代高速列車の開業より後だ。納得しかねる。

北海道新幹線と札幌駅の経緯をおさらいしてみよう。

北海道新幹線は1972(昭和47)年に青森市~札幌市間が全国新幹線整備法の基本計画路線となった。翌年に整備新幹線に格上げされ、建設に向けて動き出した。また、札幌市から旭川市が基本計画に組み込まれた。札幌延伸の次は旭川延伸。これが既定事項となる。

現在の札幌駅は1988(昭和63)年に高架駅となった。このとき、駅の南側に空き地ができた。北海道新幹線は15年前から建設が決まっていたわけで、1998年には駅とルートの案も公表された。このとき、誰もが札幌駅南側の空き地に新幹線の駅ができるだろうと思ったはず。2年間の環境影響評価が終わり、2000年に工事実施計画の認可申請が行われた。

ところが、時をほぼ同じくして、新幹線予定地になると信じられてきた場所にJRタワー、大丸札幌店など大型ビルが建てられた。新幹線の線路を延ばしても、大丸札幌店に当たってしまう。旭川方面に延伸しようとしてもJRタワーに遮られる。そんな位置関係だ。

これらのビルのおかげで、新幹線札幌駅設置案が亡霊のようにさまよい始める。代案として、北海道新幹線を函館本線に沿って高架線とし、札幌駅1・2番線ホームを新幹線用に改造する計画がまとめられた。この案はJR北海道が示したともいわれている。

ただし、札幌中心部の高架線建設は線路用地の拡幅などが必要で、用地買収に難航するという見方が強まった。そこで、工事認可申請の翌年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」なども参考に、地下駅案が検討された。2014年10月に政府・与党整備新幹線検討委員会が提示している。ただし、この案は工期が長引くと予想された。2015年に札幌延伸区間の開業を2036年春から2031年春に繰り上げる方針が決まった。地下案は却下され、高架線路と1・2番線ホームの改造案に落ち着いた。

この合意をJR北海道がひっくり返した。2015年7月、JR北海道社長は定例会見で「計画通りの現駅案、現駅西側案、現駅東側案、現駅地下案を検討している」と語った。さらに「まだ決定したわけではない」とまで語った。これに札幌市、鉄道・運輸機構などが動揺した。現駅案で都市計画などを進め、建設計画を作ろうとしたところで、事実上の白紙撤回だったからだ。

しかし、JR北海道にも現駅案を回避したい事情があった。現駅の一部を新幹線に転用した場合、在来線の発着に影響する。影響させないためには分岐器や駅の前後に折返し設備を新設するなどの投資が必要になる。これは新幹線の駅ではないため、JR北海道の負担になる。経営難のJR北海道にはお金がない。なんとかして在来線を触らず、新幹線の新駅を作ってもらいたい。

これに対して、現駅案を前提としてきた側は反論する。とくに鉄道・運輸機構は、ダイヤの工夫で解決できると反発した。JR北海道の札幌駅よりもっと運行本数の多い名鉄名古屋駅は線路2本、京急電鉄の品川駅は線路3本でやりくりしている。もっとも、どちらも限界に来ており、それぞれ改良計画がある。それにしても、JR北海道の札幌駅は特急・普通列車の折返し運転による線路の交差、直通列車の停車時間の長さなど無駄も多い。

その後、札幌市も加わって影響力調査などを行い、2案に絞った。現駅案は「1番線と2番線を新幹線のりばとし、さらに北側の11番線にのりばを増設して在来線の影響を低減する」、東側案は「1番のりばを新幹線に転用し、1番線の南に0番線を作る。ただし0番線は現役の東側に建設する」。鉄道・運輸機構案とJR北海道案の対決という格好になった。

ところが、この両案とも実行は難しいとわかってきた。現駅案は在来線の影響を払底できず、東側案は建設用地に既存のJRタワーの一部と駐車場がある。JRタワーは構造的な部分で大規模な改修が必要で、駐車場も建替え費用がかかる。当然、JR北海道にも負担する必要があるけれども、JR北海道に資金の余裕はない。

さらに新たな状況が加わった。鉄道・運輸機構が札幌駅近郊について高架案を地下案に変更した。「北海道および札幌市から沿線地域住民の生活環境に対する影響を小さくするよう配慮すべきとの要望」があったためだ。新小樽(仮称)~札幌間の手稲トンネルの札幌側出口を地下に変更し、札幌駅手前まで地下トンネルにする。高架の札幌駅に到達するために、札幌駅の手前1kmで地上に出す必要がある。

そこまで地下で通すなら、そのまま地下で札幌駅まで進めば良いのではないか。これが地下ホーム案の再浮上につながった。ただし、その予定地は在来線ホームの真下ではなく、南口広場を挟んだ北5条手稲通の地下30mとなる。地下鉄との乗換えには便利だろうけれども、在来線への乗継ぎは不便だ。「ここからは高速バスやレンタカーでもいいや」という状況になりかねない。JR北海道にとっては、在来線への乗継ぎ客の減少も予想される。

「札幌の街に新幹線が顔を出さないとは寂しい」「新幹線の車窓から景色が見えない」といった意見も含めてざわついているけれども、地下案そのものは悪くないと筆者は思う。雪に強い新幹線とはいえ、豪雪のリスクは減らしたい。北海道新幹線が遅延すれば、その影響は最悪の場合、新潟・北陸方面にも及ぶ。東北・上越・北陸新幹線などが行き交う東京~大宮間が過密ダイヤとなっており、列車の遅れが広範囲に波及してしまう。

北海道や札幌市の人々の本音はどうだろうか。「どれでも良いから早く決めてほしい」と思っているかもしれない。「駅の場所ひとつ、まだ決められないのか」と呆れているのではないか。なかなか決まらない工事計画のおかげで、札幌駅周辺の再開発や不動産投資計画にも影響が出そうだ。

誰も決められない状況は不信と不安を助長するだけで、なにも良いことはない。「いつまでも市民を待たせるな、地下だというならそれでやれ!」と、鶴の一声で決められるリーダーがほしい。工事費用と利便性のせめぎ合いの過程だからしかたないとは思うけれど、新幹線札幌駅の当事者たちは優柔不断すぎると思う。札幌駅に関して、最も欠けている要素は資金や工期ではなく「決断力のある強いリーダー」かもしれない。

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