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鉄道ニュース週報

88 モニターツアー23時間で完売 - 大きく育て! 北海道の観光列車

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「北海道にも周遊観光列車を」という構想の下、日本旅行がモニターツアーを企画した。北海道新聞の報道によると、9月15日15時に発売したところ、札幌発の根室線経由釧路、釧網線経由網走、石北線経由で帰着という2泊3日コース(旅行代金3万9,800円)は20分で完売、旭川発で稚内まで、列車とバスで往復する1泊2日コース(旅行代金1万4,900円)は翌日14時までに完売となったという。

日本旅行が実施するモニターツアーでは、JR北海道の「クリスタルエクスプレス」「ノースレインボーエクスプレス」車両も使用予定とされている

このツアーは本誌も9月16日夜に報じているけれども、掲載したときはすでに完売だったわけだ。モニターツアーのため低価格という要素もあるとはいえ、このスピードは北海道の鉄道旅行人気を裏づけた。

北海道の観光列車構想は、JR九州の「ななつ星 in 九州」の成功や、その後に発表されたJR西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、JR東日本「TRAIN SUITE 四季島」に刺激されたといっていい。北海道には本州以南にはない景色があり、沿岸は海の幸、内陸も広大な農地の恵みがある。食事付きクルーズトレインを走らせる環境は十分備えている。北海道新幹線も新函館北斗駅まで開業し、北海道観光の関心もさらなる高みを見せている中で、観光列車の好機ともいえる。

ただし、経営改善に取り組むJR北海道は、北海道新幹線と在来線の安全確保が先決。路線や駅の廃止を検討している状態で、鉄道の活性化は自治体頼み。とても観光列車まで手が回らない。そこで北海道庁は行政として取り組む姿勢を示し、2016年4月に観光列車運行可能性調査事業委託先を公募し、同年8月から検討会議を設置。道、国、経済団体、旅行会社、有識者などを招いて研鑽していた。

その集大成として、今年3月に札幌市で170人を集めた公開フォーラムを実施している。全国各地の事例報告と、観光列車を運行するための現実的な方法が議論されている。今年4月にはモニターツアーの開催を決定。公募により催行事業者が日本旅行に決まった。それが今回のモニターツアーだ。

立案当初の「豪華観光列車」とは異なり、既存の観光車両とバスを使ったツアーになっている。昨年の報道から期待していた人から見ればトーンダウンだ。しかし、大事を成すためには小さなことから始めなくてはいけない。いきなり豪華な観光車両を作って運行しても成功できない。観光列車は運輸業ではなくレジャー産業だ。お金をかければ成功するという単純なビジネスではない。

JR九州の「ななつ星 in 九州」の登場は衝撃的だった。しかし、そこに至るまでの実績の積み重ねがある。九州新幹線が暫定開業し、新幹線集客のために「目的地」が必要だった。JR九州が自分で用意できる「目的地」として、特急「指宿のたまて箱」「A列車で行こう」などのD&S列車が生まれた。その結果、「乗ることが目的となる列車」が成立すると知る。その実績に裏打ちされて「ななつ星 in 九州」がある。

JR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」は、「ななつ星 in 九州」の成功に刺激されて作られたと思われているけれど、これは間違い。以前、企画担当者に聞いたところ、発端は東日本大震災だったという。JR東日本にとって、鉄道観光の目的地の大半は東北地方だ。首都圏にたくさん人が住んでいても、鉄道の旅が「東海道新幹線で関西へ」では、JR東日本としては儲からない。東北の観光を盛り上げる必要と、「リゾートしらかみ」で培った地域ぐるみの観光提携の経験が「TRAIN SUITE 四季島」の文化を作った。

JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」については直接話を聞いたわけではないけれど、JR東日本と似た事情だろう。札幌行の寝台特急「トワイライトエクスプレス」に手応えを感じており、次の列車を作りたかった。しかし、自社線内をしっかり走らないと利益は出ない。近畿圏の人口は多いとはいえ、日本最大クラスの人気観光地である京都と奈良は近郊区間内だ。それなら、近畿圏の人々を自社線内の最も遠いところへ、山陰・山陽経由で下関まで連れて行こう。

豪華観光列車の先行3社には、その成立を支える経験と文化がある。しかしJR北海道には乏しかった。だからまず、観光列車の運行実績と文化の醸成が必要だ。その第一歩が今回のモニターツアーである。このツアーが成功すれば、次の段階は常設の観光列車。そこでしっかり経験を積めば、3年後くらいには豪華観光列車の方向性も見えると思われる。問題は、その頃までに肝心の線路が残っているかどうかだろう。

筆者が知る限り、日本で車窓から地平線が見える場所は北海道だけ。車窓から流氷が見える場所も北海道だけ。かつて札幌発の夜行急行列車が見せてくれたように、都会を夜に出発し、目覚めれば車窓に別世界が広がる。その感動は列車ならではの経験だ。

今回の取組みは、世界に誇れる豪華観光列車の芽となる。それが24時間以内で完売とは心強い。モニターツアーは低料金の代わりにアンケートなどで企画協力が求められる。「お客様」ではなく「実証実験の参加者」ともいえる。参加者の皆さん、未来の北海道をおもしろくするために、ぜひ楽しんで、そして意見してください。

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インデックス

連載目次
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第91回 2017年度グッドデザイン賞、鉄道ファン目線でピックアップ
第90回 JR四国2600系の空気バネ方式「断念」残念な結果ではない
第89回 「SLばんえつ物語」新潟駅乗入れ終了!? 在来線ホーム高架化で
第88回 モニターツアー23時間で完売 - 大きく育て! 北海道の観光列車
第87回 地方鉄道に朗報か - 新車購入を国が支援、2018年度予算で計上へ
第86回 阪急電鉄の伊丹空港連絡線構想は「勝算あり」実現性は高い?
第85回 中国高速鉄道、9月から350km/h運転再開へ - 安全策はどうなったか
第84回 JR四国が鉄道ネットワーク存続へ議論、路線維持で一致するも…
第83回 SL「大樹」も直面しうる「乗車したら機関車が見えない問題」とは?
第82回 黒字鉄道会社の被災路線復旧に光 - 国の補助へ法改正
第81回 引退間近のJR東日本107系は「サンドイッチ列車」…誰が言った?
第80回 秋田県の貨物線に旅客列車運行許可…ただし「乗船客」専用
第79回 伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」がJR横浜駅発着になった事情
第78回 JR八戸線に在来型気動車、新潟・秋田地区は電気式気動車 - その違いは?
第77回 小田急ロマンスカー「HiSE」相模大野に - 保存車の廃車解体の噂、真相は
第76回 ビール列車が今夏も盛況 - 注目は伊豆急行「レモンサワートレイン」
第75回 「瑞風」運行開始で"御三家"そろう - 鉄道旅行文化の成熟を示す
第74回 「SLやまぐち号」乗りに行くならこのルート - 東京から日帰りも可能
第73回 大阪市営地下鉄が民営化へ、中央線の夢洲延伸構想も前進?
第72回 別府市「湯~園地」実現へ、ラクテンチ"温泉ケーブルカー"本当にやるの!?
第71回 北陸新幹線と九州新幹線西九州ルートに動き、影響を与えたのは…
第70回 大井川鐵道、電気機関車E31形の塗色をアンケート - 妄想がはかどる!?
第69回 SL「大樹」加わり北関東のSL列車は4社に - 共存か差別化か
第68回 「旭川空港連絡鉄道」構想、北海道の鉄路活かす良案か
第67回 鉄道愛好団体が作った蒸気機関車、営業路線で最高速度160km/h達成
第66回 南阿蘇鉄道は復旧可能と国交省が発表 - 国と地域の宝として価値を示そう
第65回 神岡鉄道「おくひだ1号」復活運転 - 廃線の町に新しい祭りができた
第64回 旧国鉄用地の売却完了へ - あの土地も鉄道用地だった
第63回 2階建て新幹線、終焉へ - E4系に引退報道
第62回 JR豊肥本線と南阿蘇鉄道、復旧に向けた取組みが始まる
第61回 電車初の重要文化財指定へ - ともに日本の電車時代幕開けの象徴だった
第60回 2017年3月ダイヤ改正、市販の時刻表に最も影響を与えた路線は?
第59回 観光列車の新段階「トワイライトエクスプレス瑞風」「HIGH RAIL 1375」
第58回 さようなら583系、鉄道旅行全盛期の象徴だった
第57回 葛飾区が南北鉄道路線の調査費を計上 - 東京の新路線構想に動き
第56回 減少続く車内販売、廃止発表より事業者公募を望みたい
第55回 神岡鉄道「おくひだ1号」復活 - 廃線を観光に活用する組織設立へ
第54回 「リバティ」「SL大樹」運行、その先の観光列車も乗り継ぎたい
第53回 紀州鉄道「キハ603」廃車予定を地元商店街が救うか
第52回 阿佐海岸鉄道、DMV路線へ転換なるか - 甲浦駅も大改造
第51回 "初夢"に終わらせたくない「第2青函トンネル構想」
第50回 JR只見線災害不通区間、上下分離方式で鉄道復旧へ
第49回 2017年3月4日ダイヤ改正 - 全国紙・地方紙はどう報じたか
第48回 三井造船の鉄道ヤード用自動化コンテナクレーン、日本導入あるか
第47回 留萌本線留萌~増毛間廃止で「JR最短の本線」記録が更新された
第46回 ひたちなか海浜鉄道の気動車を御神体に!? 鉄道車両保存の新提案
第45回 北陸新幹線、大阪延伸どのルートに? 東北方面へ定期運行の可能性も
第44回 東京メトロ銀座線一部区間運休、鉄道ファンの関心は方向幕だった
第43回 JR九州上場、鉄道ファンの関心は株主優待制度とローカル線の行方
第42回 JRの赤字ローカル線に相次ぐ廃止報道 - 鉄道路線を看取る時代が来た
第41回 復活か解体か…命運分かれる蒸気機関車
第40回 京急線・京成線・都営浅草線…ダイヤ改正はなぜ秋に?
第39回 神戸電鉄粟生線、存続に黄信号 - 年間10億円の赤字
第38回 「鉄旅オブザイヤー」に一般部門創設、鉄旅プランを作って賞金5万円!
第37回 北海道鉄道網の危機 - 道も国も塩対応、交通政策の矛盾
第36回 福井鉄道「ヒゲ線」を環状線に…福井県が調査費を予算化
第35回 JR西日本、三江線廃止を表明 - 「地域に必要」だけでは生き残れない
第34回 リニア中央新幹線の開業繰上げへ - ブルトレ世代も新大阪開業に間に合う?
第33回 「鉄道」という言葉の名付け親に新説 - 日本最古の文献見つかる
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第30回 『ポケモンGO』鉄道事業者にとって悩みか好機か
第29回 夏休みに向けて大型鉄道イベントが続々登場
第28回 JR可部線可部~あき亀山間1.6km、踏切問題を乗り越え復活
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第20回 私鉄各社の鉄道事業計画に垣間見える、鉄道趣味的な車両情報
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第16回 熊本地震で被災、JR九州は「JR会社法」から離脱したばかり
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第12回 西武鉄道と京王電鉄、それぞれの新型車両が示す世相
第11回 常磐線の全線開通は2020年3月に - 幻の特急計画はどうなる?
第10回 養老鉄道、青い森鉄道、日高本線 - 赤字路線の存続へ向けた動き
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