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鉄道ニュース週報

85 中国高速鉄道、9月から350km/h運転再開へ - 安全策はどうなったか

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8月23日頃から、北京放送や新華社通信など中国メディアが「中国の鉄道が9月21日に全国ダイヤ改正を実施し、京滬高速鉄道で350km/h運転を実施。北京~上海間を約4時間半で結ぶ」と伝え、この情報を受けて日本の新聞社サイトなども一斉に報じている。鉄道の可能性を示し、交通の主役になる。外国のこととはいえ、鉄道ファンとしては誇らしい。

中国では高速鉄道の建設が進み、2011年までに350km/h運転を実施。磁気浮上式などを除き、鉄輪式の列車として世界走行の営業速度を達成していた。しかし、現在は300km/hに抑えられている。鉄輪式列車の営業速度の世界最高記録は320km/hで、日本の東北新幹線、フランスのTGV、ドイツのICE、英仏を結ぶユーロスターが達成している。中国が350km/hを再開すれば、約6年ぶりの世界記録奪還となる。

「和諧号」(CRH2型) (写真 : Flicker 凌智(Suzuki)氏)

しかし、中国の高速鉄道といえば、やはり安全面の不安もある。2011年7月23日夜に起きた追突・脱線事故は、約6年が経ったいまでも記憶から薄れることはない。当時の事故原因の究明と対策が公式に発表されていないため、いや、発表されたかもしれないけれども、伝わってこないため、350km/h運転の再開が「安全を確保できたから」か「ほとぼりがさめたから」か、はっきりしない。

日本ではJR西日本がトップページに2005年の福知山線脱線事故を掲げ、JR北海道もトップページに2011年の石勝線列車脱線火災事故を掲げている。JR東日本もかつては羽越本線脱線事故を掲げていた。しかし、中国鉄路総公司の公式サイトには2011年の温州市鉄道衝突脱線事故の記載は見当たらない。お国柄と言ってしまえばそれまでだし、市民も不安を表明しにくいかもしれない。

でも、きちんと対策をしていたなら、それは告知してほしいし、そのほうが営業戦略的にもプラスになるはずだ。日本の鉄道の技術を学んだなら、こういう日本の鉄道の精神も学んでほしかった。日本の鉄道がいかに安全か、その安全と安心も、数々の不幸な事故とその対策で積み上げられた。

中国の鉄道はあの事故から何を学び、対策してきたか。じつはいくつかの論文で紹介されている。事故の全容については、土木学会が公開している論文「中国高速鉄道事故 : その原因と遠因の分析」が詳しい。先行列車が徐行中に後続列車が追突したという状況から「中国高速鉄道には閉塞やATSがないのか」という疑念もあった。しかし、事故が起きた区間では「CTCS-2」という固定区間の閉塞システムがあった。

このシステムにはATPという車内信号システムが付帯しており、列車の運転士に最適な速度を表示する。ATPに指示を出すシステムがTCCで、地上信号機の役割を持つ。つまり、閉塞区間のTCCの情報をもとにCTCS-2が路線の閉塞状況を管理し、TCCにフィードバックして列車側のATPへ速度指示を出す。日本の新幹線のCTCやATCに似たシステムだ。

事故の原因はTCCのプログラムに欠陥があり、前方の閉塞区間に列車が存在しているにもかかわらず、後続列車のATPに青信号を発信させていた。前方の列車が徐行した理由は、落雷による信号トラブルだった。つまり信号システム全体を疑う必要があり、日本であれば全列車に停止を命じるところだろう。しかし事故当時、列車指令員は信号システムに依存し、トラブル対応の手順を誤った。ATPが正しく作動すると信じ、後続列車に状況を伝えなかったという。

その後の中国の鉄道技術進展については、JRグループの公益財団法人鉄道総合技術研究所の所蔵論文「中国鉄道科学研究院における研究システムおよび発展・展望」、ならびに日本の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のウェブサイト「SciencePortal China」に掲載された論文「中国高速鉄道の技術革新」が参考になる。

まとめると、中国には1950年に設立された鉄道科学研究院(CARS)があり、広大なループ線試験基地、いわばテストコースを持つ。ここで温州市鉄道衝突脱線事故の教訓から、CTCS-2の改良、およびCTCS-3の開発が行われたという。

中国の中長期鉄道網計画によると、高速鉄道網は人口の90%以上をカバーし、人口50万人以上の全都市を結ぶという。また、高速鉄道路線の設計速度は350km/hで、安全管理を徹底することで380km/hも視野に入れている。

2011年の温州市鉄道衝突脱線事故は、ボンバルディア社の技術を用いた列車と川崎重工の技術を用いた列車が、ヨーロッパの技術を用いたCTCSのプログラムミスによって衝突した。この複雑な技術体系を見直すために、中国は独自の高速鉄道システムを作り上げたといえそうだ。

事故を起こした車両は「和諧号」、新たに走る車両は新型の「復興号」だ。ここまで調べると、もう350km/h運転でも安心な気がする。事実、2011年から6年間で重大事故は起きていない。ただ、心情としては、350km/h運転にすぐに飛びつかず、数年間は様子を見たいとも思う。安心するには、中国鉄路総公司によるきちんとした説明がほしい。

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