【連載】

鉄道ニュース週報

81 引退間近のJR東日本107系は「サンドイッチ列車」…誰が言った?

81/88

JR東日本の通勤形電車107系が9月に定期運行を終える。報道発表では「『サンドイッチ列車』の愛称でも親しまれた」と紹介され、本誌を含む各メディアもそのまま報じた。しかしネット上では「初耳だ」「誰が言ったの?」との声も見かけた。筆者もそのひとり。

JR東日本高崎支社管内の路線で活躍した通勤形電車107系(100番台)

引退が発表された107系100番台は新前橋電車区に19編成38両が配属され、両毛線・上越線(高崎~水上間)・信越本線(高崎~横川間)・吾妻線で活躍した。ボディカラーはクリーム色を基調に、グリーンの帯2本とピンクの帯1本。なるほど、「サンドイッチ」と言われるとその通りに見える。クリーム色がパンで、ピンクがハム。グリーンはレタス。

コンビニにあるような今風ではなく、国鉄時代から駅弁屋や新幹線車内で売っている庶民的なサンドイッチだ。パンの間にハム1枚だけ。いや待てよ、当時、レタスは入っていなかったはず。ハムだけ、チーズだけのサンドイッチが詰まっていた。しかもマーガリンの味が強かった。レタスが入ったサンドイッチは、コンビニが登場した当時のシンプルなタイプか……。いやいや、そういう話ではない。

問題は「『サンドイッチ列車』の愛称でも親しまれた」ことが本当かどうか。筆者は初耳。Twitterで反応を見ても「知らなかった」の声が多い。ただし、鉄道ファンには浸透していなくても、地元の人々は「サンドイッチ列車」と読んでいたかもしれない。モヤモヤする。はっきりさせよう。JR東日本高崎支社に聞いてみた。

「サンドイッチ列車は、どんな人から呼ばれているのでしょうか」
「いや……とくに……当社が名づけたわけではないということで」
「通学の高校生とか、お子様とか」
「ブログなどではそのように呼ばれていたようです」
「地元紙やミニコミ誌で使われていた愛称とか」
「文献資料はないと思います」
「駅員さんや車掌さんが、お客様の声を聞いたというような」
「そういうことでもないです」

対応してくださった方は元運転士とのこと。彼も乗務中に「サンドイッチ列車」は耳にしていないという。「はい、地元の皆さんは『サンドイッチ列車』と呼んでくださってます!」くらいの答えを期待したけれど、なんだか歯切れが悪い。うむむむ。そうですか。なんだかコレ、野暮なツッコミだったな……。

107系に関するブログを検索しても見当たらず。Twitterで検索すると「ハムサンドって呼んでた」「サンドイッチ車両と呼んでた」、さらに深掘りすると、2011年に「こどもがサンドイッチ列車だと呼んだ、なるほど」というツイートが見つかった。だから「サンドイッチ列車」は実際に呼ばれたことがあるらしい。

しかし、報道資料のように「『サンドイッチ列車』の愛称でも親しまれた」は眉唾のような気がする。鉄道趣味的に「サンドイッチ列車」というと、「A-B-A」という感じで2種類の形式が連結された列車のイメージがある。

なぜ筆者が「サンドイッチ列車」にこだわるかというと、過去の車両愛称の成り立ちに疑問があるからだ。たとえば蒸気機関車。「デゴイチ(D51形)」「シロクニ(C62形)」は型式番号を崩した呼び名として使われたと思う。それでは「貴婦人(C57形)」「高原のポニー(C56形)」は本当にそう呼ばれていただろうか。一部で呼ばれていたかもしれないけれど、SL廃止ブームの頃に新聞記事などで広まり、後付けで定着したような気もする。

鉄道ファンの先輩諸氏は気を悪くするかもしれないけれど、往年の鉄道ファンが名づける車両の愛称は「まっこうくじら(営団地下鉄3000系)」とか「ガイコツ(小田急9000形)」とか、皮肉っぽさが混じる「芸風」があった。「貴婦人」や「ポニー」は愛称として美しすぎる。いまでは鉄道専門誌でも「貴婦人」や「ポニー」と紹介する事例があり、もはや実際には一般的ではなかったかもしれない愛称が既成事実になった感もある。

今回の「サンドイッチ列車」も、本誌を含めてほとんどの新聞やメディアが報道資料そのままに「サンドイッチ列車と呼ばれ親しまれていた」とする内容を書いている。こうしてまた、「107系はサンドイッチ列車と呼ばれた」という既成事実が作られてしまったのではないか。後世の鉄道車両研究家を悩ませる案件だ。たかが愛称と思われるかもしれないけれど、鉄道趣味的には重いテーマだ。

ただ、確かなことは、利用者の誰かが「サンドイッチ列車」と呼び、それをJR東日本高崎支社が「とても気に入っていた」ということ。107系のボディカラーが当時の鉄道車両としては洗練されていた。細い帯の組み合わせは手間もかかるため、珍しかった。

引退記念ツアーの特典グッズとして作られた107系カラーのランチボックスやオリジナルバッグはかわいらしい。それなら、もっと早くから「サンドイッチ列車」の愛称で盛り上げてほしかった。107系をあしらった箱でサンドイッチを売るとか。地元のお店とコラボして「107系パン」を作るとか。

このままでは「サンドイッチ列車」が定着しそうだ。せめて残りわずかな期間でも、「サンドイッチ列車」カラーのサンドイッチを販売するなどで盛り上げたほうがいいと思う。

81/88

インデックス

連載目次
第88回 モニターツアー23時間で完売 - 大きく育て! 北海道の観光列車
第87回 地方鉄道に朗報か - 新車購入を国が支援、2018年度予算で計上へ
第86回 阪急電鉄の伊丹空港連絡線構想は「勝算あり」実現性は高い?
第85回 中国高速鉄道、9月から350km/h運転再開へ - 安全策はどうなったか
第84回 JR四国が鉄道ネットワーク存続へ議論、路線維持で一致するも…
第83回 SL「大樹」も直面しうる「乗車したら機関車が見えない問題」とは?
第82回 黒字鉄道会社の被災路線復旧に光 - 国の補助へ法改正
第81回 引退間近のJR東日本107系は「サンドイッチ列車」…誰が言った?
第80回 秋田県の貨物線に旅客列車運行許可…ただし「乗船客」専用
第79回 伊豆急行「THE ROYAL EXPRESS」がJR横浜駅発着になった事情
第78回 JR八戸線に在来型気動車、新潟・秋田地区は電気式気動車 - その違いは?
第77回 小田急ロマンスカー「HiSE」相模大野に - 保存車の廃車解体の噂、真相は
第76回 ビール列車が今夏も盛況 - 注目は伊豆急行「レモンサワートレイン」
第75回 「瑞風」運行開始で"御三家"そろう - 鉄道旅行文化の成熟を示す
第74回 「SLやまぐち号」乗りに行くならこのルート - 東京から日帰りも可能
第73回 大阪市営地下鉄が民営化へ、中央線の夢洲延伸構想も前進?
第72回 別府市「湯~園地」実現へ、ラクテンチ"温泉ケーブルカー"本当にやるの!?
第71回 北陸新幹線と九州新幹線西九州ルートに動き、影響を与えたのは…
第70回 大井川鐵道、電気機関車E31形の塗色をアンケート - 妄想がはかどる!?
第69回 SL「大樹」加わり北関東のSL列車は4社に - 共存か差別化か
第68回 「旭川空港連絡鉄道」構想、北海道の鉄路活かす良案か
第67回 鉄道愛好団体が作った蒸気機関車、営業路線で最高速度160km/h達成
第66回 南阿蘇鉄道は復旧可能と国交省が発表 - 国と地域の宝として価値を示そう
第65回 神岡鉄道「おくひだ1号」復活運転 - 廃線の町に新しい祭りができた
第64回 旧国鉄用地の売却完了へ - あの土地も鉄道用地だった
第63回 2階建て新幹線、終焉へ - E4系に引退報道
第62回 JR豊肥本線と南阿蘇鉄道、復旧に向けた取組みが始まる
第61回 電車初の重要文化財指定へ - ともに日本の電車時代幕開けの象徴だった
第60回 2017年3月ダイヤ改正、市販の時刻表に最も影響を与えた路線は?
第59回 観光列車の新段階「トワイライトエクスプレス瑞風」「HIGH RAIL 1375」
第58回 さようなら583系、鉄道旅行全盛期の象徴だった
第57回 葛飾区が南北鉄道路線の調査費を計上 - 東京の新路線構想に動き
第56回 減少続く車内販売、廃止発表より事業者公募を望みたい
第55回 神岡鉄道「おくひだ1号」復活 - 廃線を観光に活用する組織設立へ
第54回 「リバティ」「SL大樹」運行、その先の観光列車も乗り継ぎたい
第53回 紀州鉄道「キハ603」廃車予定を地元商店街が救うか
第52回 阿佐海岸鉄道、DMV路線へ転換なるか - 甲浦駅も大改造
第51回 "初夢"に終わらせたくない「第2青函トンネル構想」
第50回 JR只見線災害不通区間、上下分離方式で鉄道復旧へ
第49回 2017年3月4日ダイヤ改正 - 全国紙・地方紙はどう報じたか
第48回 三井造船の鉄道ヤード用自動化コンテナクレーン、日本導入あるか
第47回 留萌本線留萌~増毛間廃止で「JR最短の本線」記録が更新された
第46回 ひたちなか海浜鉄道の気動車を御神体に!? 鉄道車両保存の新提案
第45回 北陸新幹線、大阪延伸どのルートに? 東北方面へ定期運行の可能性も
第44回 東京メトロ銀座線一部区間運休、鉄道ファンの関心は方向幕だった
第43回 JR九州上場、鉄道ファンの関心は株主優待制度とローカル線の行方
第42回 JRの赤字ローカル線に相次ぐ廃止報道 - 鉄道路線を看取る時代が来た
第41回 復活か解体か…命運分かれる蒸気機関車
第40回 京急線・京成線・都営浅草線…ダイヤ改正はなぜ秋に?
第39回 神戸電鉄粟生線、存続に黄信号 - 年間10億円の赤字
第38回 「鉄旅オブザイヤー」に一般部門創設、鉄旅プランを作って賞金5万円!
第37回 北海道鉄道網の危機 - 道も国も塩対応、交通政策の矛盾
第36回 福井鉄道「ヒゲ線」を環状線に…福井県が調査費を予算化
第35回 JR西日本、三江線廃止を表明 - 「地域に必要」だけでは生き残れない
第34回 リニア中央新幹線の開業繰上げへ - ブルトレ世代も新大阪開業に間に合う?
第33回 「鉄道」という言葉の名付け親に新説 - 日本最古の文献見つかる
第32回 小池都知事が取り組むべき鉄道改良計画はそれじゃない
第31回 JR北海道「鉄道維持困難」を表明 - もっと輸送密度が低い路線はどうなる?
第30回 『ポケモンGO』鉄道事業者にとって悩みか好機か
第29回 夏休みに向けて大型鉄道イベントが続々登場
第28回 JR可部線可部~あき亀山間1.6km、踏切問題を乗り越え復活
第27回 南阿蘇鉄道復旧へ前進 - JR九州上場、留萌~増毛間廃止日繰上げ
第26回 東海道・山陽新幹線「N700S」車両個別の形式名はどうなる?
第25回 只見線被災区間、三江線の存続問題に動き - タイムリミット近づく
第24回 大井川鐵道に来た14系客車は「ワイド周遊券」愛好家の常宿だった
第23回 青函トンネルより長い世界最長鉄道トンネル、スイスで開通
第22回 ブルーリボン賞・ローレル賞、候補車両の顔ぶれに疑問
第21回 JR夏の臨時列車、「乗り鉄」おすすめ列車はコレ!
第20回 私鉄各社の鉄道事業計画に垣間見える、鉄道趣味的な車両情報
第19回 南阿蘇鉄道復旧の見通し経たず - 義援金は「焼け石に水」ではない
第18回 留萌本線廃止届、285系気動車廃車、新幹線札幌駅問題…JR北海道の試練
第17回 ひたちなか海浜鉄道の延伸案固まる - 2024年度運行開始目標
第16回 熊本地震で被災、JR九州は「JR会社法」から離脱したばかり
第15回 2030年の東京圏鉄道計画、交通政策審議会が認めた24路線
第14回 手回り品ルール改正 - 列車に持ち込める・持ち込めないものは?
第13回 北海道新幹線開業! 日本縦断、東京・札幌日帰り…鉄道ファンの楽しみ方
第12回 西武鉄道と京王電鉄、それぞれの新型車両が示す世相
第11回 常磐線の全線開通は2020年3月に - 幻の特急計画はどうなる?
第10回 養老鉄道、青い森鉄道、日高本線 - 赤字路線の存続へ向けた動き
第9回 九州新幹線(西九州ルート)に「リレー方式」案、それってどうなの?
第8回 若者よ! お得な「若者限定四国フリーきっぷ」「ガチきっぷ」で旅立とう
第7回 西武安比奈線、正式に廃止へ - 休止路線は都内にもあった
第6回 北海道新幹線に接続するバス路線新設で「乗り鉄」が歓喜する理由
第5回 北海道新幹線、最高速度210km制限でも東北新幹線ダイヤに影響なし?
第4回 JR春の臨時列車、「乗り鉄」おすすめ列車はコレ!
第3回 さようなら熊本電鉄「青ガエル」、東急東横線のエースだった
第2回 北海道新幹線に最も安く乗れるきっぷはどれ?
第1回 140円きっぷで1035.4km「大回り乗車」決行する"猛者"現る

もっと見る

関連キーワード

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事