先週は整備新幹線2路線に進捗があった。北陸新幹線敦賀~金沢間と九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)武雄温泉~長崎間で、どちらも「フリーゲージトレイン抜きで進む」という共通点を持つ。新線建設の進捗は喜ばしい。ただ、ちょっと残念なところもある。

北陸新幹線開業後の敦賀駅の略図。新幹線ホームの下に在来線ホームを増設する

北陸新幹線は敦賀駅・福井駅の概要が決まった。5月18日に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの検討委員会が決定し、翌日に報道された。北陸新幹線敦賀駅のホームは高架の2面4線で、その真下に在来線特急列車用のホームが併設される。大阪~敦賀間の在来線特急列車と北陸新幹線の乗換えを便利にするためだ。福井駅の新幹線ホームも高架で1面2線。こちらは在来線ホームに隣接する。

北陸新幹線敦賀駅のホームの位置は、在来線ホームの東南側、現在は車両基地となっている敷地の端にある。ここは敦賀駅の現駅舎から約200m、在来線の最も近いホームから100m以上も離れている。また、新幹線の線路が国道8号線敦賀バイパスの高架を超えてくるため、高さは24mもある。

現駅舎から離れている点については、新幹線側の駅舎が新たなまちづくりの拠点になることで相殺できるかもしれない。在来線との乗継ぎに関しては、フリーゲージトレインを導入し、新幹線と在来線を直通すれば問題なしと考えられた。しかしフリーゲージトレイン車両の開発が遅れ、2023年春の開業には間に合わない。

北陸新幹線敦賀延伸開業後は、大阪から福井・金沢・富山方面は敦賀駅で乗換えが必要になる。福井県は福井駅まで特急列車乗入れを要望していたけれども、叶わなかった。そこで北陸3県は、北陸新幹線と在来線特急列車の乗継ぎを改善するように求めていた。

その結果、北陸新幹線敦賀駅は2層構造とし、真下に在来線特急列車専用のホームを設置する計画となった。特急列車用ホームは北陸新幹線と接続する特急「サンダーバード」「しらさぎ」が使用するようだ。これで新幹線と特急列車の乗換えは数分で可能となる。一方、現在の在来線ホームをそのまま使うと、乗換えに必要な時間は10分以上だという。

ただ、敦賀駅の利用者にとっては、現在の駅舎より在来線特急列車用ホームが遠ざかってしまう。そもそも新幹線ホームまでの遠さは解消されない。そこで移動の負担を減らすため、現在の在来線ホームとの連絡通路に動く歩道を設置する計画となった。

北陸新幹線開業後の福井駅の略図。駅舎が拡張される

北陸新幹線福井駅は1面2線のホームとなる。通過タイプと停車タイプを並べて接続させる必要がなく、折返し列車も設定されないと思われる。ただし、北陸新幹線では唯一の島式ホーム1面2線の駅となり、上下の列車が同時に停車した場合の混雑も予想される。そこでホームとコンコースを結ぶ階段部を1カ所増設して3カ所とする。

また、駅舎をホームの真下だけでなく、えちぜん鉄道福井駅の南側に張り出す構造とした。張出し部分に改札や駅事務室などを収め、ホーム真下に広い通路や待合室を整備する。これも混雑解消の施策だ。敦賀駅・福井駅の改善は、当初の計画に対する要望が盛り込まれたため、地元に歓迎されているようだ。

九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)は武雄温泉~長崎間で建設が進む

九州新幹線西九州ルートについては、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から申請された工事実施計画の追加部分が認可された。2012年に用地と土木工事の実施計画が認可されており、今回は開業に向けた計画と予算が申請され、認可された。内容は軌道、電気、信号・通信設備、熊本総合車両所の増強、武雄温泉駅での新幹線と在来線の同一プラットホーム対面乗換えを実施するための施設整備などとなっている。

九州新幹線西九州ルートは、計画としては福岡市と長崎市を結ぶ路線だ。このうち博多~新鳥栖間は現行の九州新幹線(鹿児島ルート)を共用する。新規建設路線のうち、新鳥栖~武雄温泉間は在来線のまま。武雄温泉~長崎間は新幹線規格で建設する。実質的に新幹線と呼べる部分は武雄温泉~長崎間だけだ。

この区間が開業すると、博多~長崎間を最速で移動するために、博多~新鳥栖間で新幹線、新鳥栖~武雄温泉間で在来線、武雄温泉~長崎間で新幹線を利用することになり、2回の乗換えが必要になる。ただし、乗換えを1回で済ませるため、博多~武雄温泉間と武雄温泉~長崎間の列車を乗り継ぐリレー方式で計画が進められている。

北陸新幹線がフリーゲージトレインでの大阪直通を目論んだように、九州新幹線西九州ルートもフリーゲージトレインを採用し、博多~長崎間を乗換えなしで直通する予定だった。しかし、こちらもフリーゲージトレイン車両の開発が遅れていることから、在来線と新幹線の対面プラットホーム乗継ぎに変更された。

新鳥栖~武雄温泉間も新幹線規格とすれば、フリーゲージトレインも対面乗換えも不要になる。しかし佐賀県が地元負担金に合意しなかったため、在来線のままとなった。佐賀県は福岡県・長崎県に隣接しており、どちらへ行くにも近い。新幹線になっても所要時間の短縮効果が小さく、その上で約800億円という負担は見合わないという考え方だ。

九州新幹線西九州ルートのフリーゲージトレインは、佐賀県内の在来線区間直通のために持ち出された。しかし、JR西日本はフリーゲージトレインの山陽新幹線導入に否定的だ。現在のフリーゲージトレインの目標速度は時速270km程度で、山陽新幹線の時速300kmダイヤには組み込みづらい。フリーゲージトレインの車体が重く、線路設備の負荷が大きいという事情もある。そのため、九州新幹線西九州ルートはフリーゲージトレインの導入で合意した後も、全区間の新幹線規格を望む声がくすぶっている。

新幹線と在来線の対面ホーム乗継ぎは、九州新幹線(鹿児島ルート)が新八代~鹿児島中央間で部分開業した際に実績がある。しかし、このときは将来の博多~新八代間の新幹線開業が約束されていたから我慢できた。新潟駅でも2018年から上越新幹線と在来線特急列車の対面ホーム乗継ぎが実現する予定だが、こちらは羽越新幹線計画のめどが立っていないこともあり、単純に乗り換えやすさを向上する計画である。不満はなさそうだ。

武雄温泉駅の場合は暫定的で、その暫定がいつまで続くかわからない。敦賀駅は新幹線ホームが2面4線と余裕がありながら、対面ではなく上下乗換えになってしまった。暫定とはいえ、対面にできなかっただろうか。残念だ。

北陸新幹線の敦賀駅。九州新幹線西九州ルートの武雄温泉駅。どちらもフリーゲージトレインをあてにした計画だった。しかしフリーゲージトレインの開発の遅れによって、開業を早めるために仕様変更が必要になってしまった。

敦賀駅も武雄温泉駅と同様、対面乗換えにしてくれたらよかった。武雄温泉駅はフル規格にしてくれたら良かった。便利になるはずの新幹線が、利用者にとっては乗換えを強いられる結果となった。開業時期が早まったことはうれしいけれど、残念でもある。