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鉄道ニュース週報

68 「旭川空港連絡鉄道」構想、北海道の鉄路活かす良案か

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JR北海道の鉄道存廃問題を見聞きするたびに気持ちが沈む。鉄道ファンとしては残してほしい。しかし、基本的には地域の交通モード選択の問題であって、遠方の趣味人はハラハラしながら見守るだけだ。沿線の人々も鉄道を残したい。ただし現実的には、残すための費用負担問題が立ちふさがる。「廃止」か「費用負担」の二択となれば、自治体がJR北海道との協議を渋る理由もわかる。JR北海道と協議する前に、国と道が「鉄道の必要性を考えているか」「地方を大切に扱っているか」と質したい気持ちがあるからだ。

しかし、宗谷本線活性化推進協議会は4月14日にJR北海道との協議に応じた。宗谷本線については、北海道の有識者会議で「残すべきだ」という意見でまとまっており、これを受けて「どのように残すか」を話し合うためだという。この件に関連して、朝日新聞は4月26日に名寄市長、加藤剛士氏のインタビューを掲載した。その中で、富良野線と旭川空港を結ぶ鉄道の構想について触れていた。

富良野線と旭川空港の位置略図(赤線は筆者が予想する連絡線)

「Google Maps」の距離計測機能で調べると、旭川空港は旭川駅から南東方向へ約13km離れた場所にある。道のりでは約17kmだ。インタビュー記事では連絡バスで数十分と記述されているけれど、バスを運行する旭川電気軌道の時刻表では空港行が約40分、旭川駅行が約30分となっている。全国の地方空港と比較しても便利な部類といえる。

空港連絡鉄道を建設すればもっと便利になるだろう。旭川空港の南西に富良野線が通っている。西聖和駅と千代ヶ岡駅の中間地点と空港ターミナルは約1.7km。線路を分岐して旭川空港の南側を迂回すると約3km。旭川駅と旭川空港の鉄道距離は約14kmになる。

現在の富良野線のダイヤでは、旭川~西聖和間の所要時間は約20分だから、空港ターミナルまで延伸するとしても約25分かかるだろう。このままでは時間短縮効果が小さいけれど、快速列車を運転すれば約12~15分程度に短縮できそうだ。バスに比べて所要時間は半分以下になるし、乗降もしやすい。西聖和駅で美瑛・富良野方面行を分割すれば、観光地へ直結できるし、旭川駅でスイッチバックすれば宗谷本線名寄駅まで直通できそうだ。筆者の妄想は膨らむばかりである。

旭川空港の魅力と弱点とは

旭川空港は2,500mの滑走路1本を持つ国際空港だ。国土交通省のデータによると、平成27年度の発着回数は4,055回。乗降客数は約117万人、取扱い貨物量は約5,600万トン。定期便の就航都市は東京(羽田)、大阪(関西・伊丹)、名古屋、ソウル、台北、北京となっている。除雪が行き届き、2016年度の就航率は99.1%だった。旭川空港の就航率の高さは、新千歳空港が雪で閉鎖されるたびに話題になる。

そんな旭川空港の弱点があるとすれば、東京へ行く場合、新千歳空港便の実質運賃が安いこと。これは新千歳便が多く設定され、航空会社の競争が激しく割引率が高いからだろう。旭川~新千歳空港間の鉄道・バスの交通費を差し引いても、新千歳便のほうが安い場合がある。それが原因かはわからないけれども、国際線就航便数と乗降客数も減っており、3月17日の北海道新聞によると、2016年度の国際線は前年比500便減少、乗降客7万7,400人減少となっているという。

旭川市は周辺に富良野や層雲峡など観光地が充実しているだけでなく、企業の誘致も積極的だ。農産物生産地に近いため、食品メーカーが進出する一方、巨大地震発生率の低さからデータセンターやコールセンターも進出しているそうだ。今後の企業誘致を図るためにも、旭川空港の魅力を向上させたい。空港連絡鉄道は魅力的な材料になるはずだ。現在の旭川市長、西川将人氏は日本航空のパイロット出身とのことで、空港活性化には前向きではないかと思われる。

北海道も旭川空港の魅力アップには関心があるだろう。北海道は2016年9月に7つの空港の民営化案を公表している。新千歳、函館、釧路、稚内、女満別、帯広、旭川について、一括で1業者に運営を委託する構想で、2020年度までに実現させたい考えだ。そのためには、空港アクセスを含めて魅力的な空港にする必要がある。

他にもある空港連絡鉄道計画

空港アクセス鉄道は羽田空港へ連絡した東京モノレールが日本初だった。1964年の東京オリンピック輸送を見込んで建設されたけれど、オリンピック終了後から乗客減と経営難に悩み、羽田空港再国際化でようやく息を吹き返した感がある。1978年に成田空港が開業し、京成電鉄が初代「スカイライナー」の運行を開始。1980年、国鉄が千歳空港駅(現・南千歳駅)を開業させた。この頃、鉄道雑誌でも「鉄道と航空の共存時代」という内容の特集が組まれた。長距離鉄道輸送と航空便の歴史の分岐点といえそうだ。

当時の成田空港駅(現・東成田駅)は空港ターミナルまで連絡バスに乗る必要があった。千歳空港駅も空港ターミナルまで約250mの歩道橋を歩く必要があった。空港連絡といっても、現在のようにスマートではなかった。1991年に現在の成田空港駅が開業、1992年に新千歳空港駅が開業し、1993年に福岡市営地下鉄が福岡空港に延伸した頃から、空港連絡鉄道の便利さが認知されるようになった。

現在、日本国内で旅客便が発着する空港は離島を含めて80以上ある。そのうち、空港と駅が隣接する空港は新千歳、仙台、成田、羽田、中部、関西、伊丹、神戸、米子、宮崎、福岡、那覇の12カ所。もともと需要のある空港とはいえ、鉄道がある空港は国内線も多く、国際線の誘致にも成功しているといえる。

空港連絡鉄道の計画は他にもある。函館空港は函館市電延伸計画があったし、広島新空港は市街地から離れているため、山陽本線白市駅から連絡線を分岐する案も話題となった。最近の動きとしては、松山駅の高架化にともない、伊予鉄道松山市内線を松山空港へ延伸する構想がある。北海道に話を戻すと、旭川空港と同じくらい就航率の高い帯広空港や、根室本線に近い釧路空港も空港連絡鉄道があればもっと便利になりそうだ。

旭川空港連絡鉄道の構想は、閉塞的な北海道の鉄道問題に対して、航空便を含めて立体的に活用しようという提案だ。鉄道だけの問題ではなく、航空路線、高速道路を含めて、北海道の交通体系をどうするべきか、広い視野から議論が進むかもしれない。鉄道の役割が再認識され、存続につながることを期待したい。

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