【連載】

鉄道ニュース週報

67 鉄道愛好団体が作った蒸気機関車、営業路線で最高速度160km/h達成

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先週は東武鉄道のダイヤ改正があり、新型特急車両「リバティ」のデビューが話題となった。また、大型連休を前にイベント情報が目立った。これらは本誌ですでに報じているので、他に興味深い話題を探したら、英国で蒸気機関車が幹線を走行し、時速100マイル(160km)を達成したという。4月17日にロシアのネットメディア「スプートニク」の日本語版、18日に技術情報サイト「ビジネスニュースライン」の日本語版が伝えた。

英国で新造された蒸気機関車「LNER Class A1 4-6-2 No60163 'Tornado'」(撮影 : Alan Wilson)

世界のほとんどの国で、蒸気機関車の実用は終わった。おもに観光列車として活躍中だ。これは日本も同じ。そういえば「リバティ」が向かう日光・鬼怒川方面でも、8月にSL「大樹」がデビュー予定となっている。これら観光用の蒸気機関車は、古き良き汽車旅がテーマ。製造から長期間経過しているため、無理せず壊さず、ゆっくり走る。

しかし、英国の蒸気機関車は時速160kmで走った。路線は英国の東側を走るイースト・コースト本線(East Coast Main Line)で、走行区間はドンカスターからニューキャッスルまでの約180km。この路線は時速200kmクラスの特急列車がたくさん走っている。日立製作所が列車運行会社ヴァージン・トレインズ・イースト・コーストに納入した特急列車用車両「クラス800」も「Virgin Azuma」の愛称で走っている。

日本の鉄道で例えるなら、上越新幹線東京~越後湯沢間を蒸気機関車C62形が時速160kmで走るような感じだろうか。たしかに驚きだけど、それだけなら「状態の良い保存車両があっていいね」という話でもある。しかしこの蒸気機関車は保存車両ではない。なんと新造車両だ。しかも鉄道愛好家の団体が製作したという。本線を高速走行する蒸気機関車を鉄道愛好家団体が自作する。なんということだ。鉄道発祥の国は鉄道趣味も大きく深い。

蒸気機関車を製作した団体は「A1 Steam Locomotive Trust」という。1990年にA1形蒸気機関車を新造するために作られた団体だ。彼らは月額ビール1杯分の会費でサポーターを募り、何千人もの支援者を集めた。また、企業スポンサーとして英国最大の鉄鋼会社ウィリアム・クック、コーラス、航空機エンジンなどを製造する工業会社ロールス・ロイス、航空宇宙関連企業BAEシステムズの協賛を獲得している。こうして機関車の新規製造に必要な300万ポンド(約4億2,000万円)を調達した。

A1形蒸気機関車は1948~1949年にかけて49両が製造された。ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道(LNER)の最大級の旅客用機関車で、ロンドンからエジンバラ、アバディーンを結ぶイースト・コースト本線で活躍した。平坦地で最高速度110km/hの性能がある。しかし、ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道にはもうひとつのA1形機関車があった。合併した旧グレートノーザン鉄道(GNR)のA1形で、最高速度160km/hを達成した機関車だ。ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道はGNRのA1形を使い、伝統ある急行「フライング・スコッツマン」を運行した。

GNRのA1形4472号機にも「フライング・スコッツマン」の称号が与えられた。一方、性能が劣るLNERのA1形は1両も保存されることなく廃車となってしまった。しかし設計図面は国立鉄道博物館に残っていた。この図面を元として、LNERのA1形の50号機を新造するプロジェクトが結成された。それが「A1 Steam Locomotive Trust」だ。

新造にあたり、かつて走行していたイースト・コースト本線の営業運転を目標とした。そのため、保存された設計図面通りには作られていない。現役時代に指摘された不具合や、現代の保安基準に満たない工法は最新技術によって解決された。たとえばリベット止めを溶接にするなどであった。最新式の電子式安全装置も搭載している。機関車登録番号は49号機が持っていた60162に続く60163が与えられ、「トルネード」と名づけられた。

「トルネード」は2007年9月27日にデビューする目標だった。この日は世界で初めて蒸気機関車による営業を始めたストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の開業175周年だった。しかし実際には、製造開始から14年後の2008年に完成した。お披露目運転はイースト・コースト本線で、ダーリントン駅からロンドン・キングスクロス駅へ向けて行われた。この運行から英国で貨物列車を運行する「DB Cargo UK」がパートナーとなった。

「A1 Steam Locomotive Trust」は引き続きイースト・コースト本線の営業運転を望んだ。ただし、定期運行には条件があった。時速90マイル(約144km)。「トルネード」は安全面を考慮し、貨物線や支線を使って時速75マイル(約120km)で運行していた。それでも現役時代の性能を上回っている。しかし現在のイースト・コースト本線は、前述のように「Virgin Azuma」など時速200kmの特急列車が頻繁に走っている。これらの高速列車の運行を邪魔しないように、「トルネード」にはさらなる高速運転が求められた。

今年4月に「トルネード」が達成した時速100マイルは、時速90マイルの定期運行へ大きな前進となった。「A1 Steam Locomotive Trust」は年内にも残る課題と諸条件を解決する考えだ。現在は団体列車扱いで「UK Railtours」が体験乗車ツアーを実施している。機関車の改良、維持、列車の運行資金などはいまも寄付でまかなっている。政府登録団体となってからは、10ポンドの寄付を受けるたびに国から2.5ポンドの補助金が提供されるという。

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インデックス

連載目次
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第67回 鉄道愛好団体が作った蒸気機関車、営業路線で最高速度160km/h達成
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第65回 神岡鉄道「おくひだ1号」復活運転 - 廃線の町に新しい祭りができた
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第63回 2階建て新幹線、終焉へ - E4系に引退報道
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第52回 阿佐海岸鉄道、DMV路線へ転換なるか - 甲浦駅も大改造
第51回 "初夢"に終わらせたくない「第2青函トンネル構想」
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