東武鉄道は1月18日、今春のダイヤ改正と新型特急「リバティ」の運行開始を発表した。同日、東武鬼怒川線のSL列車「大樹」の運行開始日も発表された。ダイヤ改正は大型連休を目前にした4月21日。従来の「スペーシア」の経路に加え、東武アーバンパークライン(野田線)にも特急列車が乗り入れる。一方、SL列車「大樹」の運行開始はお盆休み前の8月10日から。先行する新型特急「リバティ」との接続も考慮するという。

この夏には鬼怒川線の新駅・東武ワールドスクウェア駅も開業する。「リバティ」「SL大樹」と合わせて、東武鉄道にとっては日光・鬼怒川地域観光の大本命だ。東武グループの進撃はまだ続く。昨年8月には、日光金谷ホテルと中禅寺金谷ホテルが東武グループに加わった。2020年にはマリオット・インターナショナルと提携したホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」も開業予定。中禅寺湖の遊覧船もこの夏から新型が加わる。

浅草~会津若松(喜多方)間の観光列車の運行系統と乗入れ路線の略図

「リバティ」「SL大樹」の役割は日光・鬼怒川観光にとどまらない。まだまだ先がある。「リバティ」「SL大樹」から野岩鉄道・会津鉄道に乗り継ぐと会津若松駅に至る。そこからはJR東日本の観光列車群が待っている。「リバティ」「SL大樹」は南東北観光の入口としても大いに期待できる存在だ。

「AIZUマウントエクスプレス」は会津鉄道の観光車両だ。北側はJR東日本、南側は野岩鉄道・東武鉄道と直通している。運行区間は会津若松~鬼怒川温泉間が2往復。うち1往復は土日に喜多方駅発着となる。他に会津若松~東武日光間が1往復ある。「リバティ」で日光や鬼怒川温泉に泊まり、「SL大樹」の旅を楽しんで会津若松方面へ抜けられる。会津鉄道には「お座トロ展望列車」があり、会津田島~会津若松間を結んでいる。

会津若松駅からはJR東日本の観光列車に乗り継げる。「SL大樹」に乗ったSLファンなら、会津若松~新潟間の「SLばんえつ物語」がおすすめ。現在は専用展望室付きグリーン車とフリースペース付き展望車が連結されている。

新潟駅からは2方面を選べる。南へ向かうなら近代芸術を車内で楽しむ「GENBI SHINKANSEN(現美新幹線)」で越後湯沢駅へ。カフェ車両もある。越後湯沢駅からは上越新幹線に乗り継いで東京へ。北へ向かうなら「きらきらうえつ」。白新線・羽越本線を走り、日本海の景色を楽しむ観光列車だ。編成の前後に展望スペースがあり、2号車は売店とラウンジ。駅弁や地酒、お菓子などを楽しめる。

会津若松駅から東へは、甘党におすすめの列車「フルーティアふくしま」がある。福島県産のフルーツを使ったスイーツを楽しむ列車だ。春~秋は磐越西線、冬は東北本線郡山~仙台間で運行される。仙台駅まで到達した後も観光列車はまだ続く。仙台~新庄間には陸羽東線経由の列車「リゾートみのり」がある。前後に展望室があり、窓も大きい。紅葉の季節が良さそうだ。新庄駅からは足湯付きの「とれいゆ つばさ」で福島駅へ戻れる。

「リバティ」「SL大樹」の先に広がる観光列車群略図

それぞれの列車にスムーズに乗り継げるダイヤではなさそうだから、各地を巡って2泊3日・3泊4日の旅になる。東武鉄道としては、日光・鬼怒川エリアを中心に「リバティ」で往復してほしいだろう。JR東日本も、東北地方の各地へは新幹線で往復してほしいと思われる。しかし、組み合わせたらおもしろい。まるで観光列車の大回廊だ。いっそ各鉄道会社で相談して、モデルコースになるようなダイヤを設定してほしい。

さらに欲を言えば、この観光列車大回廊の周辺には未開発の路線がある。ひとつは只見線。紅葉の景色で知られ、不通区間の復旧方針も定まった。臨時でSL列車などが走っているけれど、復旧の機会に週末の観光列車を設定してほしい。もうひとつは陸羽西線だ。新庄~余目間に観光列車があると、「きらきらうえつ」「リゾートみのり」「とれいゆ つばさ」とつながって、東西の観光列車大回廊がひとつになる。

「リバティ」で日光へ、「リバティ」で新潟へ、さらに仙台へ、山形へ……。いままでも「スペーシア」で巡れたルートだけど、「リバティ」をきっかけにいろいろなルートを旅してみたい。観光列車が増えたため、乗り継ぐとかなり長距離の旅もできる。今年も列車の旅がおもしろくなりそうだ。