「鉄旅オブザイヤー」実行委員会が2016年度の応募要項を発表した。旅行会社部門の締切は10月14日、一般部門「ベストアマチュア賞」の締切は10月19日。受賞作品の表彰式は2017年1月25日に決まった。

「鉄旅オブザイヤー2015」の受賞者記念写真。表彰式は埼玉県の鉄道博物館「てっぱくホール」で開催される

ベストアマチュア賞は今年度から新設された。鉄道ファン、旅行ファンなど誰でも応募できる。最優秀作品には賞金5万円と、JR協賛による記念品が進呈されるという。賞金も魅力的だけど、JRからの記念品が気になる。きっとJRらしさ、鉄道の旅を象徴するような、素晴らしい品物に違いない……なんて、担当者さんのハードルを上げるようなことを書いてみたりして。詳しくは授賞式までのお楽しみだ。

「鉄旅オブザイヤー」は、旅行会社が企画し、実際に催行した「鉄道要素の強いパックツアー」を品評し、優秀作品を表彰する催しだ。その趣旨は「鉄道旅行ならではの魅力を発信することで、旅行業界の活性化、鉄道旅行及び国内旅行のプロモーションに資することを目的とする」とある。後援にJR旅客会社各社や日本民営鉄道協会の名前があり、日本の鉄道会社のほとんどが関わっている。運営委員には日本旅行業協会、鉄道旅客協会の名もある。毎年1月の授賞式の様子が鉄道ニュースメディアなどで報じられる。

昨年までは応募資格が旅行会社に限られた。運営が旅行業界、後援が鉄道業界のせいか、堅いイメージもあった。そのせいか、知名度がいまひとつの感があった。旅行企画そのものは旅行者を対象としており、受賞作品を振り返れば、旅のプロはこんなにも面白いツアーを作るのかと興味深い。ただし、残念ながら応募作品は催行済みだから、興味を持っていただいても参加できない。受賞した旅行会社や担当者の名前を覚えておけば、次のツアーを探す参考にはなる。

「旅行業界の活性化」には貢献したかもしれないけれど、「鉄道旅行及び国内旅行のプロモーションに資する」というには、もうひとつ工夫がほしいと思っていた。そこに「ベストアマチュア賞」の創設だ。2016年度から誰でも参加できる一般部門が創設され、鉄道ファンや旅行ファンも応募できる。これはいい。旅行業界ではない人も盛り上がれる。

ところで、ベストアマチュア賞には遵守すべき規定がある。未発表作品に限る。他のコンテストなどの入賞作品や出版した作品は応募できない。出版した作品がダメ、ということは、誰かが本に書いたり、ブログに綴った旅をそのまま企画にしたりするのはダメということだ。そして2017年度デスティネーションキャンペーン開催地を対象とすること。

ディスティネーションキャンペーンは国鉄時代から始まり、JRグループに継承された大型旅行キャンペーンだ。時期と地域が指定され、自治体や観光業者が一丸となって取り組む。JRグループはテレビ広告やポスター、チラシなどを展開するほか、魅力的な臨時列車を運行する。自治体と観光事業者もさまざまな特別イベントを用意する。

2017年の指定時期と地域を表にまとめた。キャンペーン開催地が対象だから、時期も合わせる必要がある。毎年、第1シーズンから第3シーズンまでは各地で持回りなっている。第4シーズンは2000年度から「京の冬の旅キャンペーン」に固定されているようだ。

時期 対象地域 テーマ(キャッチフレーズ)
4月1日~6月30日 四国 しあわせぐるり、しこくるり
7月1日~9月30日 長野 世界級リゾートへ、ようこそ。山の信州
10月1日~12月31日 山口県 維新の風が誘(いざな)う。 おもしろき国 山口
1月1日~3月20日 京都市 京の冬の旅キャンペーン

この時期と地域で鉄道に関するトピックを探してみると、JR四国は4月30日から新たな観光列車「四国まんなか千年ものがたり」を運行開始。長野は特急「スーパーあずさ」の車両E351系の代替となるE353系が2015年7月から試運転中であり、そろそろ営業列車でデビューしてもいい頃だ。最近では「信州カシオペアクルーズ」の走行実績もある。

山口県はJR西日本が「みすゞ潮彩」に替わる観光列車を運行すると発表しているし、「SLやまぐち号」の新型客車が9月にデビューする予定だ。京都は京都鉄道博物館の開館から1年未満、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の運行開始直前の時期。鉄道の話題は時期が合わないけれど、それだけに企画者の力量が試されそうだ。

鉄道ファン向けのコンテストといえば、鉄道模型の作品や鉄道写真が多かった。公的に開催される「乗り鉄」向けコンテストは珍しい。かつて「JTB時刻表」(交通公社の時刻表)は、ダイヤ大改正のたびに「鉄道を使って最短時間ですべての都道府県庁所在地駅を巡るプラン」のコンテストを実施していた。筆者の記憶では、企業が表彰する「乗り鉄」向けコンテストはこれだけではなかろうか。他に「乗り鉄」が競うといえば「最長片道切符のルート探し」「大都市近郊区間大回り乗車ルート」などだろう。

「鉄旅オブザイヤー」のベストアマチュア賞は、「乗り鉄」を趣味とする鉄道ファンにとって大事件、ビッグイベントになりそうだ。これは「乗り鉄」ならぜひチャレンジしたい。筆者も参加したいけれど、残念ながら選考委員の立場だ。皆さんからの力作プランを楽しく拝見したい。