1月28日、JR北海道が報道機関向けに北海道新幹線の試乗会を開催した。前日には「グランクラス」でのサービスも発表された。前週の24日には、アクセス列車「はこだてライナー」の一般公開も行われ、いよいよ開業ムードが高まってきた。

北海道新幹線H5系。報道試乗会で新函館北斗~木古内間を往復した

ところで、このまま北海道新幹線の話を進める前に、「週」についてのトリビアを紹介したい。「週報」としてコラムを書く以上、週の範囲を定義しておく必要がある。当連載では週の範囲を「ISO8601」に準拠している。

冒頭に「前週の24日」と書いたけど、カレンダーを見ると週の始まりは日曜日。だから「24日も今回の対象の週では?」と思うかもしれない。筆者も「はこだてライナー」一般公開と「グランクラス」発表会と北海道新幹線試乗会が同じ週に開催されたと書きたい。そのほうが盛り上がった印象になるからだ。

しかし、1週間の始まりと終わりは国際規格の「ISO8601」で「月曜から日曜日」と定められている。「ISO8601」によると、月曜日の曜日番号は1、日曜日の曜日番号は7。ソフトウェアなどの設計にはこのルールが適用されるようだ。そして「ISO8601」は週の番号も「その年の最初の木曜日を含む週を第1週とする」と定義している。この定義は「1月4日がある週」とか「12月と1月が混在する週は、日付が多いほうの週を所属年とする」という解釈もできる。

2016年の最初の木曜日は1月7日。だから1月4日月曜日から始まる週が「2016年第1週」となる。と、いうわけで、前回は冒頭に「2016年1月第3週(1月18~24日)」と表記した。

閑話休題。本誌を含めた各社の試乗会の報道を見ながら、東京在住の筆者の想像以上に北海道の人々は新幹線に期待し、盛り上がっていると思った。本誌では車窓風景を「ニュース」「レポート」で2回にわたり紹介している。トンネルや防音壁が多いとしながらも、車両基地の向こうに連なる山並み、雪の田園風景や函館山を望め、天気が良ければ津軽海峡も……と臨場感たっぷり。乗りたい気持ちが高まる。

試乗会は新函館北斗~木古内間(往復)で実施されたため、残りの青函トンネル出口から木古内駅までの区間や青森県内の景色は想像するしかない。しかし、どちらもほとんどトンネルだから、試乗会区間が北海道新幹線の景色を楽しめる区間といえそうだ。

他の報道も挙げてみよう。北海道新聞は「北海道乗り入れ実感 知事、新幹線に初試乗」と題し、北海道知事の高橋はるみ氏のコメントを紹介。新幹線を実感すると同時に、新函館北斗駅付近のおもてなしスペースや2次交通の整備に意欲を示した。産経ニュースは新函館北斗駅・木古内駅の歓迎ムードを伝えている。朝日新聞は動画で車窓をレポート。記事では一般向け試乗会の応募が定員の9倍を超えたと報じている。

雪で減速……ダイヤは守れるか?

試乗会のハレの場で、所要時間や運賃料金の話は野暮というもの。東京からの所要時間は航空機にかなわないし、運賃料金は懸念材料だけど、その批判は発表された段階で出尽くして誰もが知っている。いまさら蒸し返すまでもない。東京~新函館北斗間では運賃料金ともに不満があるかもしれないけれど、首都圏北部と新函館北斗駅との間を試算してみると、所要時間も割引運賃も航空機に対して互角に戦えそうだ。

ただし、試乗会記事を見て、ちょっと心配なところもあった。ほぼすべての記事で、「本来は最高速度260kmで走る区間を、積雪のため実際には210kmで走った」という記述がある。北海道で冬期の積雪は日常茶飯事のはず。たびたび速度制限がかかるようではダイヤが乱れ、東北新幹線に影響するかもしれない。

東北新幹線の東京~大宮間は過密ダイヤだ。東北新幹線のダイヤが乱れると、上越新幹線・北陸新幹線にも影響する。北陸新幹線から接続する大阪・名古屋方面の特急列車にも波及しそうだ。津軽海峡の向こうの雪で、大阪駅発着の列車が遅れるかもしれない。試乗会当日の函館地方の積雪は13cm。この状態での最高速度制限は規則通りか、あるいは報道向け試乗会だから念のため、普段より安全を重視した結果か。

心配になったので、JR北海道の広報に問い合わせてみた。回答は「210km制限は安全のため。付近の観測データにもとづく規則による」だった。ただし、「試乗会で走行した区間は距離も所要時間も短く、最高速度を出せる区間はさらに短い。ダイヤに大きな影響はない。また、速度制限の結果で遅れたとしても1~2分程度で、回復運転で定時に復帰できるよう、ダイヤにゆとりを持たせている」とのことだった。安心した。

そういえば本誌レポートでも、「最高時速210kmでの運転となったが、ほぼ定刻通りに木古内駅に到着した」という内容があるし、他社の記事も所要時間は13分とあった。雪の経験の豊富なJR北海道の線路である。これは余計な心配だったか。

北海道新幹線は、北海道南部から東北・北関東・首都圏北部を貫く動脈となり、経済効果も期待できる。試乗会レポートから感じ取れる「地元の期待」を追い風として、私たちも旅に、ビジネスに活用していきたい。だって、もう走っちゃうんだから。前向きに盛り上げていく態度も鉄道ライターの役割だと思う。